【共通テスト2025】東大生が「数学I・A」を解いてみた「前の問題を利用することが肝心」 | NewsCafe

【共通テスト2025】東大生が「数学I・A」を解いてみた「前の問題を利用することが肝心」

子育て・教育 リセマム/教育・受験/高校生
北海道大学試験場(札幌キャンパス)2025年1月18日 共通テスト1日目のようす(記事の内容とは関係ありません)
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 2025年1月18日・19日にかけて、大学入試共通テストが実施された。センター試験から共通テストへと変更されて5回目の今年。2022年度に学習指導要領が改訂されてから初の新課程での共通テストの実施となった。その中身はどのようなものだったのだろうか。

 今回、東大生10数名が各科目を解き、例年との比較を行った。今回は、18日に実施された「数学I・数学A」に関して、その結果を共有したい。

新課程でどう変わった?
 まず初めに、新課程の「数学I・数学A」について、従来のテストからの変更点をおさらいする。おもな変更点としては、大問数の変化があげられる。

 2024年までの共通テストでは大問の数は全部で5つであり、後半の大問3~大問5の中から2つの大問を選択して回答する方式であった。それに対し、今年は大問の数は4つであり、全大問必答となった。この背景には、改訂後の学習指導要領において「整数の性質」という単元が「数学と人間の活動」という単元に吸収されたことがある。問題を選択することができなくなった点で、前年よりも解き方の幅が狭まった受験生は多かったのではないか。

 また、新課程において数学I・数学Aに新たに加わった内容は、データの分析における「外れ値」と「仮説検定」、場合の数と確率における「期待値」であるが、これら3つの内容すべてが出題された。特に「仮説検定」については、試作問題と同様の形式で出題されており、出題側が改訂後の学習指導要領の内容を強く意識していることが窺えた。

 続いて、問題量と難易度について述べる。前年度の「数学I・数学A」と比較すると、文章量とマーク数がやや増加したが、計算量の少ない問題も多く含まれていたため、全体的な出題分量にあまり大きな変化はなかったと感じた。また、難易度に関しても、第1問の後半部分の図形と計量の問題や、第3問の空間図形の問題など設定を読み取ることが難しいものはいくつか見られたが、全体的に計算量はそこまで多くなく、例年並み、もしくは例年よりやや簡単になったのではないかと感じた。

 ここからは、実際に東大生が解いてみた上で特に面白いと思った問題について、大問ごとに抜粋して紹介していく。

東大生が「面白い」と思った問題
 第1問は、前半と後半に分かれて2つのテーマが扱われていた。前半の方程式の問題は例年とそこまで大きな変化はなかったが、この単元の中での最後の問題(第1問「ケ」:解答群から正しい選択肢を選ぶ問題)では、「必要条件・十分条件」についての理解だけでなく、「方程式が重解を持つ条件」という多くの受験生が間違えがちな部分まで複合的に問われる問題であり、高得点を取れるかを左右する問題だと感じた。必要条件・十分条件の問題は非常に高い頻度で出題されているため、今後受験をする高校生は十分に復習しておくべきであろう。

 後半の「図形と計量」の問題では、2点で交わる2つの円について考察した。2つの外接円の半径を比較する問題は誘導が少なく、書かれている文章を正確に読み取って必要な情報を取捨選択する能力が問われた。共通テストが「前の問題を利用する」傾向にあることを前提として考えることができれば解き切れた問題であろう。

 第2問は、前半で「二次関数」、後半で「データの分析」の問題が出題された。前半の問題はテーマが「公園にある噴水を二次関数と見立てる」という共通テストらしい思考力の問われる問題であったが、計算はとてもシンプルであり、そこまで難易度は高くないと感じられた。後半の「データの分析」では、新課程で学習指導要領に加わった「外れ値」の問題がメインとして出題された。データを見る上で「外れ値」の設定をすることはビジネスにおいても非常に重要であるため、より社会で役に立つような大問、問題設定になっているのではないかと感じた。ただ、最後の新課程「帰無仮説」に関しては、文章の通りに解き進めていけば特に悩むことなく完答できる問題であり、少し無理やりな出題だったと思ってしまった。限られた履修内容の中で、帰無仮説の問題を出題するのは難しかったのだろう。

 第3問は、「図形の性質」から、五面体に補助線を引いて平面や直線どうしの関係や線分の長さについて考察する問題が出題された。序盤では、共通テストでは新鮮に見える、3直線が交わることの証明問題が扱われた。今回の大問4つの中で、一番従来の共通テストらしい「誘導にいかに乗れるか」が問われている問題だと感じた。なお、問題文章に掲載されている五面体の「参考図」は実際の図形とは角度や選文の長さの比が大きく異なるため、いかに問題にある図だけを鵜呑みにせずに、自分で丁寧に必要な情報を図に示して考えられるかが重要になる問題であった。

 第4問は、「確率」において新しく学習指導要領に追加された「期待値」についてをメインに取り扱った問題が出題された。期待値についての共通テスト型の問題は前例があまりないためか、非常にシンプルで分かりやすい問題設定であると感じた。計算は煩雑な部分もあるが、問題文にある「必要に応じて、次に示す表を用いて考えてもよい。」というサポートを使って丁寧に計算をしていけば制限時間内に十分解き切ることができる問題であった。

 全体的には、昨年度の「数学I・数学A」と同様に、丁寧な誘導が付いた問題が多く見られた。また、共通テスト開始後に特徴的となった「1つ目の問題を誘導を用いて解き、その設定を応用して2つ目の問題を誘導なしで解く」形の問題が、中問を含む6題中4題で見られた。共通テストでは、例年「前の問題を利用する」ことが重要だとされていたが、それは新課程でも変わらなかったようだ。来年度以降の共通テストを受験する予定の受験生は、問題全体の流れを見て問題を解く練習をしておくべきであろう。

 今回、共通テスト「数学I・数学A」を解いてみて、基礎力と応用力、さらには迅速な判断力が求められる試験であると改めて実感した。高校生がこの試験を乗り越えるためには、ただ単に公式を覚えるだけでなく、幅広い問題に対応できる「実戦的な思考力」を養うことが鍵となるだろう。
《カルペ・ディエム 永田耕作》

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