2025年1月18日、19日の2日間にわたって大学入試共通テストが実施された。国語は今回から資料読解を中心とする新傾向問題が追加されたが、どのような内容だったか。東大生が実際に解いてみた感想とともに総覧していく。 結論から言えば、全体的な難易度としてはやや簡単になったといえる。確かに大問1の評論は高校生になじみない観光学分野であったり、小説が読みやすい中でヒントが少ない箇所があったりと難しさを感じさせるポイントはあったが、その代わりに選択肢の数が少なく、「答えを選ぶ」点においては簡単である印象があった。 第一問に関しては、観光について「見る」観光と「する」観光を行き来するようす、一方では「見る」動作主でありながら、他方では「見られる」対象でもある複合性などについて述べる内容が、普通の高校生には難しかったかもしれない。ただ、十分時間をかければ回答は可能であったし、なにより選択肢に紛らわしいものが少なく、思っているよりも点数が出やすいのではないだろうか。 実際に解いた東大生たちは「文章については、内容に一貫性があったため、個人的にそこまで難しさを感じなかった。問題に関しても、一貫するテーマを念頭に置けば回答可能で、答えに窮する問題が見当たらなかったように思う」「文章は二項対立のように見えるが、そうではない。引用が多く、最終的な主張が見えにくかったこともあり、個人的には苦戦しつつ読んだ。ただ、選択肢の数が4つと少なかったので、答えを選ぶのは簡単に言った。文章理解がそこまででも、解答は可能である点において、やや易もしくは標準レベルといえる」などのコメントを残した。東大生が感じた違和感 第二問に関しては、主人公である小さな女の子と働かず、何かを突き詰めることもせず、ただ毎日を無為に過ごす「おじさん」との奇妙な交流が描かれた。中学受験などでは頻出の、「子供の成長・心情変化」をテーマにした文章であり、そういった面では読みやすかっただろう。選択肢はいくつか紛らわしいものがありつつも、全体的には絞りやすかったと思われる。 実際に解いた東大生たちは「子供が成長する話は中学受験でよくあるテーマであり、既視感を抱きながら読み進められたので、解きやすかった。選択肢自体は候補が少なく、選びやすかっただろう。語句の意味を選ぶ問題がなくなったことが、個人的には疑問点であり、良い問題なのになぜ失くしたのかが気になっている」や「最初から読解問題になっていることに面食らった。語句の表現に関する問題で終わりのイメージが強く、問題配置が自分の現役時と変わっているところに違和感があった。内容としてはわかりやすい文章だったが、問題が難しく感じた」などのコメントを残した。 第三問は新傾向の問題。資料とそれに関する文章が提示され、それらに関する正誤を問う。情報が全体的に整理されておらず、乱雑な情報群の中から必要なものを都度突き合わせて判定する必要があるので、時間をかければ簡単な反面、駆け抜けるには厄介だろう。だが、配点はそこまで多くないので、ここをどこまで早く処理できたかによって、大きく運命が変わる。筆者も解いてみたが、個人的には従来の共通テスト、センター試験で問われてきた情報整理能力としての「国語力」とはまったく別物の、間違い探しのような能力を問われているように感じた。おそらくテクニック的に判別できる部分が多いと思われるが、これによってより一層共通テスト対策に時間を割く余裕がある上位受験生群と、それ以下との差を開きそうな問題であるように思う。 実際に解いた東大生たちは「配点的にもそこまで時間をかけてはいけない問題であるように感じたが、時間をかけない前提で見ると難しいかもしれない。『外来語の言い換えを肯定的に捉える人の割合が多い』と選択肢にありながら、実際に提示されたのは『外来語の言い換えを否定的に捉える人の割合』のグラフで、おそらく意図的に情報が整理されておらず、ややこしさを感じた。おそらく出題意図は『社会で通用する能力』の判定を念頭に置いたものだろうが、そもそもグラフも選択肢も、提示される情報が整理されていなかった。だが、実際に社会で問われる能力としては、ある程度整理された情報から真偽を判定するものであり、出題意図と形式が矛盾しているように感じた。個人的には、意味があるのかわからなかった大問」などのコメントを残した。古文・漢文は簡単だったが教訓的な内容 古文は文章1と文章2に分かれており、片方は源氏物語が出題された。それらの共通点を問う問題もありつつ、内容を深く理解していないと解けない問題は少なく、答えを選ぶだけならば、比較的容易だったのではないだろうか。 実際に解いた東大生たちは「難易度や形式は去年と変わっていなかった印象がある。人物関係図を書いてくれていて、読みやすかった。注釈をちゃんと読んでいるかが理解度の差として現れるだろう」「古典は問題数が大きく減っていた。内容説明の問題がなく、分量としては減っているが大問が5つに増え、実質的に回答に使える時間が減ったことを考えると、昨年並みの難易度だっただろう」などのコメントを残した。 漢文は孔子の『論語』の注釈書と、その著者の弟子がしたためたコメントが出題された。漢字だらけで一見とっつきにくく見えるが、内容としては平易である点において例年と変わらず、冷静に読み進められた受験生ならば、満点も十分狙えるものだったと思われる。 実際に解いた東大生たちは「速読を求める共通テストにおいて『多読ではなく、1つを極めよう』とする文章を出題したことが面白かった。内容としては白文に返り点をつける問題など一部難しい問題はあったが、全体としては簡単だった」「漢文もまた現代文の応用で、文意をおおざっぱにつかめれば、ある程度解けてしまうが、今回の文章は非常に文意をつかみやすかったため、簡単に感じた。ただ、出題文から察する作問者の求めるところは、むしろ真逆の精読スタイルであり、そういった意味では、非常に教訓的な内容であったように思う」などのコメントを残した。 受験生が心配していたであろう第3問だが、そこまでの難易度ではないように思えた。一方で、時間制限的には厳しいことは変わらず、より一層時間配分、管理能力が問われるだろう。参考までに、今回解いた東大生たちは「もう少し時間が欲しい」と口を揃えた。速読能力の養成が必須となるかもしれない。