エムスリーは2025年7月より、医療リアルワールドデータを活用したHPV(子宮頸がん)ワクチン接種状況可視化サイト「ワクチンJAPAN」を運用している。都道府県別・年齢別の接種率や接種者数の推計を月次で更新し、全国の接種状況をわかりやすく可視化する。2025年9月の定期接種(全世代)の接種率は26.1%。 ワクチンJAPANは、医療データベース「JAMDAS」や施設別納入実績データ、厚生労働省の公表値を組み合わせた独自の推計ロジックにより、接種者数と接種率を算出。医療リアルワールドデータを活用した信頼性の高いデータを提供している。サイトでは、定期接種対象である高校1年生相当と全世代、およびキャッチアップ接種の全世代を対象に、全国・都道府県別の「累積の初回接種率」や「単月の初回接種者数」などをグラフ形式で閲覧できる。 2025年度の全国累積初回接種率の推移を見ると、全国の高校1年生相当の女子における初回接種率は9月時点で50.5%。前年同時期を3.2ポイント上回っている。定期接種の全世代では26.1%にとどまっており、地域差も大きい。都道府県別の累積初回接種率(全世代)の9月時点のデータでは、山形県が39.0%ともっとも高く、ついで東京都35.3%、富山県34.4%、秋田県33.4%、岡山県33.2%、青森県33.1%と続いた。一方、もっとも接種率が低いのは沖縄県で、12.7%にとどまっている。 がん情報サービスによると、日本では毎年約1万1,000人の女性が子宮頸がんを発症し、およそ3,000人が亡くなっているという。9価HPVワクチンの接種により、子宮頸がんの原因の80~90%が予防できるとされており、現在小学校6年生~高校1年相当の女子が公費による定期接種の対象となっている。しかし、2013年から約9年間、積極的な接種勧奨が差し控えられた影響で接種率は大きく低下し、2022年4月の勧奨再開後も一部地域では初回接種率が低いまま推移するなど、地域差が残っている。 こうした状況を踏まえ、エムスリーはHPVワクチン定期接種の最新動向と地域ごとの実態を正確に可視化し、一般の人々や医療関係者、自治体担当者が状況を把握できるようにすることを目的として「ワクチンJAPAN」を公開した。ワクチンJAPANのデータは毎月更新され、今後も接種率の動向を継続的に公開していく予定。これまで数年単位でしか把握できなかった接種状況の最新動向を月単位で迅速に把握し、社会の動向をリアルタイムに近い形で捉えることを目指した運用を進めるという。