中学や高校在学時に留学やホームステイをしたいと考えたとき、学校や、在住の自治体によるプログラムという選択肢の存在をご存じの方も多いだろう。では、国内の大学進学後に、海外で学びたいという意欲をもった学生が留学するにはどのような道があるのだろうか。 東京大学の学生に聞いた留学事情、今回は「留学先で知ったカリキュラム」や勉強の仕方などを語ってもらった。日本と講義のスタイルが似ているのは…--留学先のカリキュラムと日本との違いを教えてください。清野:実は2回に分けて、パリとかいろんな大学に行ったんですが、個人的に思ったのは、カリキュラムが結構緩いということです。大学の例で言うと、もちろん大学によるとは思うんですが、コマ数が日本より少なめですね。小中学校では、水曜日は午後の授業が一切ないみたいです。亀田:僕もそうでした。僕は高校のときに留学したんですが、体育みたいな(運動をする)レクリエーションの時間がありました。清野:日本と全然違いますね。平日の昼間に都市を歩いていたら、小中学生くらいの小さい子がたくさん居るんですよ。「全員学校やめたんじゃないか」って思うくらい(笑)。 あとはカリキュラムというのかわからないですが、テストの形式が結構違って、(日本で)色々な試験を受けているとペーパーテストが多いと思うんですが、僕が行った西カトリック大学ではプレゼンで成績をつけられることが多かったです。結構シビアな解答が返ってくるんですよ。「プレゼンのこの言葉がよくない」「この単語の使い方が間違っている」というような、結構スパルタな評価でした。プレゼンとかレポートだから楽、というわけではないと思います。加藤:僕が中国に行ったときは、午前中2~3コマ中国語の授業を受けて、それは先生も中国語を喋る授業でした。自分自身初めての中国訪問だったし、第二外国語は1学期間しかやっていないから、そんなに喋れない状態で、先生が言っていることが全然わからず、ついていくのに必死という感じでしたね。 ドイツの方は、カリキュラムが1か月にギュッとまとまっている感じで、コマ数も多くて1コマ2時間くらいの授業が1日3コマくらいあるのが平均でした。2週間に1回その期間で習ったことのテストがあって、パソコンで受けるテストだからある程度準備はできるんですが、それでも結構大変でした。そして、授業は先生がずっと喋る講義形式で、わりと日本とスタイルが近かったです。もしかしたら日本はヨーロッパからそういうスタイルを受け継いでいるのかもしれませんね。 とはいえ、日本よりかは明らかに相互交流的だし、学生もバンバン質問している感じでした。亀田:自分は高校のときにオーストラリアに留学に行ったので、高校の授業の話になるんですけど、驚いたのは日本語とかフランス語とか、第三外国語の授業もやっていたことですね。僕ら日本人は日本語の授業のときだけ特別講師みたいになって、一緒に授業をやりました。 僕は基本的には英語を現地の先生から教えてもらったり、現地の数学の授業を、「ここどう?」みたいにバディーと話し合いながら受けたりしていました。僕が頑張って英語に直してアウトプットする感じでしたね。「xを移項して…って『移項する』って英語でなんて言うんだろう」みたいな感じで難しかったです。清野:フランスで、プレゼンだけの授業があったんですよ。日本の学生は、日本にいる間にスライドを全部作って、現地の学校に行ってフランス語で発表するんですけど、現地の学生さんは日本語を第二外国語として学んでいるので、日本語で準備して日本語で発表してくれたんです。言語をスイッチしたプレゼン大会ということですね。企画自体面白かったんですが、もっと面白かったのがその発表の内容で、フランスに来た日本人たちが発症すると言われている「パリ症候群」についての話だったんです。 「パリ症候群」というのは、パリが思っていたよりも汚いということにショックを受けてメンタルに来てしまうという病気で、そういう病気がありますっていう説明を日本語でされたんです。どう反応すれば良いかわかりませんでしたね。海外でプレゼンの授業を受けていると、どこまでがネタでどこからガチなのかわからないというのがあります。専門用語を覚えるためにはどうする?--研究発表のときに使うのであれば、ある程度の英語力が必要ではないですか?亀田:英語で行われる授業が増えてきて、物理を英語で受けるようになるんですよ。そもそも物理のこと自体何を言っているのかよくわからないくらい難しいのに、先生が英語で説明するからさらに意味不明になるんです。説明を聞いてもわからないから、「なんでこうなるんだろう」というのを、式変形を目で見るだけで考えていました。加藤:英語の勉強っていう意味で言うと、専門用語の知識は結構つきましたね。 自分は英語でドイツの法律を勉強したんですが、法律用語の英語はあまり知りませんでした。留学してから、「これってそういう意味なのか」とわかることが多かったです。あとは、向こうの概念を日本語で翻訳しているから、色々考えたり調べたりしたうえで、日本語を読んで初めて、「あ、これの話か」となるみたいな感じですね。 専門用語って推測もできないし、受験でも出てこないので、読んでいる文献に出てきた単語とか先生が言っていた単語を、逐一スプレッドシートなどに書き起こして一覧にして覚えていくようにしてていました。清野:僕がずっとやっていたのは、会話とかで知らない単語が出てきたら、毎回、全部メモしておいて、それを夜寝る前に辞書で調べて、起きたときにそのメモを見返して頭にインストールしていくという方法でした。でも、これをやっていたら、いらない知識も入ってきちゃって、たとえば「丸切りパン」のフランス語とか、そういう単語も覚えていました。--複数言語を習得すると、言語が混ざってしまわないのでしょうか。清野:言語が混ざってしまうのは、どの言語(能力)もしっかり発達していないせい、と言われているんです。混ざらないようにするためには、まず自分が喋れる言語を確実にすることが大事です。 日本語にいきなりカタカナが混ざる人がいるじゃないですが、あれは多分日本語が弱いということなんですよ。要は日本語がめちゃくちゃ発達していたら、英語を勉強しても混ざることはないんですね。