
親が75歳を過ぎて後期高齢者になったとき、子ども世代にできることはあるのでしょうか。元気そうに見えても、ある日突然、介護や入院、認知症といった問題に直面する懸念があります。
いざというときに慌てないためには、親の健康状態や暮らしぶり、財産状況、終末期の希望などを、少しずつ知っておくことが大切です。とはいえ、デリケートな話題だけにいざというときには切り出しにくいもの。できれば元気なうちに備えておきましょう。
本記事では『親が75歳を過ぎたら知りたいことが全部のってる本』から、親が「要介護未満」のうちに準備しておきたいことを紹介します。
※本記事は書籍『親が75歳を過ぎたら知りたいことが全部のってる本』(主婦の友社)から一部抜粋・編集したものです
※監修:黒田尚子(1級FP技能士・一般社団法人患者家計サポート協会顧問)
親が「要介護未満」のうちに学んでおくこと、準備すること
大事なことは予兆に気づき、モノ・カネ・ココロの準備をすること
「後期高齢者」という呼称に賛否はありますが、実際に75歳くらいから、要介護状態になる人は徐々に増えていきます。
「親が倒れた⁉」と大あわてするのではなく、早い段階でその予兆に気づき、介護や入院に備えるモノ・カネ・ココロの準備をしておきましょう。たとえば後述の5箇条です。直接聞きにくいこともあるかもしれませんが、日常の会話から少しずつ聞き出していくことはできると思います。
それと並行して、子どもがしておきたいことがあります。1つ目は、きょうだい間で将来の介護の方向性について話し合っておくこと。親の介護について、それぞれの考えを知っておきましょう。
2つ目は、介護について学び始めることです。特に知ってほしいのは認知症についてです。要介護になる原因の第1位は認知症ですから、誰にでも可能性はあります。MCI(軽度認知障害)の段階で気づけば状態を改善することができます。
また、介護保険制度の利用法、親の住む地域のサポート制度などを知っておくことも大切。「○○市・高齢者のしおり」など、親が住む街のハンドブックを役所でもらっておくと便利です。
認知症の正しい知識をもとう
今は認知症に関する書籍がたくさん出ています。病気の基礎知識に関する本だけでなく、読みやすい体験マンガやエッセイも多数。ネットで調べるなら公益社団法人「認知症の人と家族の会」が参考になります。
親の介護に備える心得5箇条
心得1:親の健康状態と通院状況を把握する
親が通っている病院、かかりつけ医の名前や連絡先、持病の有無、健康保険証・診察券・お薬手帳の置き場所などを確認しておく。できれば一度、かかりつけ医に会っておきたい。
心得2:生活の様子・家の中などを観察する
室内が散らかっていないか、冷蔵庫の中に消費・賞味期限切れ食品があふれていないかなどをチェック。認知症になると不要なものを買いすぎてしまう傾向がある。
心得3:お金と財産の話を少しずつ始める
介護や医療にかかる費用は、親のお金を使うことが大原則。年金額や財産を聞いておかないと、どんな介護が受けられるか、どんな施設に入れるかのめどが立ちにくい。
心得4:「終活」に備えて親の希望を聞いておく
たとえば延命治療をするかしないか、体が動かなくなったり認知症になったりしたときに施設に入所しようと思っているのかなど、将来の話を少しずつしておきたい。
心得5:緊急時の連絡・支援体制を整える
親が緊急入院したときに真っ先に駆けつけるのは誰かなど、具体的なケースを考えながら相談しておこう。きょうだいだけでなく、近状に住む親戚などとも助け合いたい。
▶「聞きにくいこと」を聞くコツは?
「聞きにくい」ことは元気なうちに聞く
親の意思を確認しておかないと判断できずに迷うことに
親が高齢になると、将来に関する重要な意思決定を親自身ができなくなる事態が発生します。たとえばステージ4のがんが見つかってからでは「延命治療をする?」とは聞きにくいもの。認知症が進んでからだと、今後どうするかを聞いても本人が要領を得なくなってしまいます。
自宅をバリアフリー化して長く暮らしたいのか、要介護になったら自宅は処分して介護施設に入所してもよいのかなど、早めに聞いておくと、いざというときの対応がスムーズです。
親が「死ぬまでこの家で暮らしたい」といった場合でも、「介護が必要になったらどうする?」と、もう少し深く聞いておきましょう。親の希望をかなえるため子どもが無理をしてまで在宅介護をすることなどは親は望んでいないはずです。
おすすめは、日常会話に後述のような話を加えることです。「友達の親が倒れたんだけど、キャッシュカードの暗証番号がわからなくて苦労したんだって」「同僚がお母さんの介護をするって、会社辞めちゃったの」など、遠いところから攻めていくのがポイント。くれぐれも詰問したり、子どもの考えを押しつけたりするのは避けましょう。
押しつけない・命令しない・小分けで聞く
健康状態の話
「最近、同じ病院行ってるの?薬は何飲んでる?」「この前テレビで○○の病気が出てて、心配になってさ」……テレビ番組などで健康の話題が出たときなどに話の流れで聞いてみて。
お金や財産の話
「今のうちに保険とか年金を整理しておいたほうが、お母さんも楽だよね?」「もし急に何かあったら困るからさ」……「お母さんにとっても楽だし、安心だよね」という、共感の姿勢で話す。
緊急支援の話
「もし倒れたりしても私はすぐ駆けつけられないかも。誰か頼れる人いる?」……「私が不安だから」と、自分を主語にして聞いてみること。
将来の住まいの話
「この家に住み続けたい?それとも便利なマンションに引っ越す?」「足が悪くなったら、この家の階段は大変だよねぇ」……「今」ではなく「将来」の話だという前提で、あくまで希望を聞くスタンス。
終活の話
「友達のお父さんが亡くなったとき、エンディングノートがあって助かったって」……友人の話や一般論として話すことで「こうすればいい」と気づいてもらう作戦。
ここまでの記事では、「要介護未満」のうちに準備しておきたいことについて紹介しました。つづく関連記事では、「介護費用の考え方」をお届けします。
つづき>>親の介護費用、子どもが払うべき?金額の目安は?知っておきたい「親のお金」の話
■黒田尚子(くろだ・なおこ)
ファイナンシャルプランナー。CFP®認定者、1級FP技能士。一般社団法人患者家計サポート協会顧問、消費生活専門相談員失格、CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター、城西国際大学・千葉商科大学非常勤講師。がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費問題にも注力。著書・監修書に『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』『マンガでわかる お金に人生を振り回されたくないから 超ビギナーが今すぐやること教えてください』(ともに主婦の友社)など多数。




