
親の介護が現実味を帯びてきたとき、多くの人が気になるのがお金の問題ではないでしょうか。「介護費用はどれくらい必要?」「もし足りなかったら子どもが負担するの?」と不安になりますよね。
実は、介護は親の年金や財産の範囲でまかなうことが大前提。そのためには、親が元気なうちに資産や収入、支出の状況を把握しておくことが重要です。
とはいえ、お金の話は切り出しにくいもの。本記事では『親が75歳を過ぎたら知りたいことが全部のってる本』から、介護費用の考え方や、親のお金で確認しておきたいポイントを紹介します。
※本記事は書籍『親が75歳を過ぎたら知りたいことが全部のってる本』(主婦の友社)から一部抜粋・編集したものです
※監修:黒田尚子(1級FP技能士・一般社団法人患者家計サポート協会顧問)
親の介護は親自身のお金を使う
介護のお金はいくらかかるかではなく、いくらかけられるか
親の介護にかかる費用が、いくら必要なのかは重大な問題。「十分な介護のために足りないお金は、自分が払うしかないのでは」と不安になるかもしれませんが、介護は親の年金と資金の範囲でまかなうのが大前提です。ですから「介護にいくらかかるのか」ではなく、「いくらまでなら、費用をかけられるのか」と考えて。
とはいえ、世の中の相場は知っておきたいものです。生命保険文化センターの調査によると、介護期間の平均は55カ月(4年半)。毎月の平均介護費用は約9万円。初期費用(一時的な費用)をプラスしたそう介護費用の平均は約540万円になります。
平均介護期間だと、1年間に100万円以上かかる計算です。ただし、これはあくまで平均値。実際には、高額をポンと出せる人と、できるかぎり出金を抑えている人がいます。それでもこれを一つの目安にして、「わが家なら介護費用をどれだけかけられるか」と考えてみてください。
まれに相続分を残すために介護にお金をかけようとしない人(親も子どもも)がいますが、親の遺産が“争族”化の原因になることもあります。
【用語】特別寄与
長期にわたる家族による介護は、故人に対する無償の労務提供であり、特別に寄与したと認められた場合、介護に貢献した人が相続人ではない場合(子の配偶者など)でも、特別寄与料を相続人に対して請求できる。
介護にかかる費用の目安
介護にかかるお金(平均)
1)一時期的な費用 47.2万円
2)毎月の費用 9.0万円
3)介護期間 55カ月
1 2×3で考えると…総額約540万円
場所別介護費用の平均額(月額)
在宅:5.3万円
施設:13.8万円
出典:生命保険文化センター「2024年度生命保険に関する全国実態調査」
施設のほうが高いのは、月額費用の中に居住費(家賃)や食費、光熱費などが含まれるから。在宅介護の場合はこれらを別に払っているので、「施設介護はお金がかかる」とは言い切れない。
要介護度が上がると介護費も上がる
介護にかかる費用は、要介護1が最も少なく、要介護度が上がるにつれて増えていきます。介護保険以外のサービスの利用が増え、紙おむつなどの衛生用品の購入も必要になるからです。
認知症があるとさらに費用が増える傾向があります。認知度が低下しても体が元気な場合は、要介護度が低く設定されがち。そのぶん支給額の上限が低くなり、自己負担分が増えてしまうこともあります。
親の財産は使いやすい形に仕分け
財産の仕分けをしながら相続の話ができればベスト
「介護と相続はワンセット」と前述しましたが、親の財産を聞いておくと、親が亡くなったあとの手続きがスムーズになります。年金や財産の額はもちろん、「どの口座から何のお金が引き落とされているか」確認を。エンディングノートなどに記入するとよいと思います。
親の財産を聞いたら、通帳や保険証券などの原本を確認することも忘れずに。
【銀行口座】
いくつもの口座がある場合、年金受取口座や公共料金引き落とし口座などを1~2つに絞って、あとは解約するのがおすすめ。定期預金を普通預金にかえる手続きも、本人ができるうちにしてしまいます。預金通帳と印鑑の組み合わせを確認することも忘れずに。
【有価証券】
認知症になると売買できませんので、儲けが出るなら売却も検討。
【生命保険】
受取人が故人になっていることもあるので、保険証券をチェック。入院時に代理請求できるよう家族登録の届出をしましょう。
【所有不動産】
所在地の確認も忘れずに。
【借金など】
負債はトラブルのもと。教えてもらいましょう。
▶「親のお金の確認リスト」をチェック
親のお金リスト作成は家族で
親のお金にかかわることは、可能ならきょうだい全員そろって行うか、情報を共有しておきたい。お金の整理をする過程で、親から「家は○○に渡したい」「預金は△△に」など相続の話が出れば、それもきょうだい全員で共有しておこう。
親のお金で確認しておきたいことリスト
収入
□年金の種類と月額
□年金以外の収入
資産
□銀行の預貯金
□クレジットカードの有無・枚数
□証券会社の有価証券
□生命保険の保険証券
□損害保険の保険証券
□自宅以外の不動産など
□ゴルフ会員権
□貸金庫やトランクルームの有無
負債
□ローンの種類、残高、完済予定など
□その他の負債(知り合いからの借金など)
支出
□住居関係費(家賃など)
□水道・光熱費
□通信費(固定電話、携帯電話、インターネット使用料など)
□税金(国税、地方税、固定資産税など)
□社会保険料(健康保険、介護保険など)
□保険料(生命保険、医療保険、火災保険など)
□新聞、テレビ、定額サービスなどの引き落とし
□その他(スポーツクラブ・習い事、定額購入品など)

ここまでの記事では、「介護費用の考え方」について紹介しました。つづく関連記事では、「要介護未満」のうちに準備しておきたいことをお届けします。
つづき>>「親が倒れてから」困る人が続出…元気なうちに確認しておくべきこととは?親の介護に備える心得5箇条
■黒田尚子(くろだ・なおこ)
ファイナンシャルプランナー。CFP®認定者、1級FP技能士。一般社団法人患者家計サポート協会顧問、消費生活専門相談員失格、CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター、城西国際大学・千葉商科大学非常勤講師。がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費問題にも注力。著書・監修書に『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』『マンガでわかる お金に人生を振り回されたくないから 超ビギナーが今すぐやること教えてください』(ともに主婦の友社)など多数。




