
年をとるごとに疲れが取れにくくなったなと感じませんか? てっきり筋力が落ちたせいかなと思い込んでいましたが、実はストレスを原因とする副腎皮質疲労なのかも……? そして、疲労回復によい「ミトコンドリア活性」とは?
統合医療の臨床実践第一人者である仙台市の朴澤耳鼻咽喉科・統合メディカルケアセンター Tree of Life 院長 朴澤孝治(ほうざわ こうじ)先生に詳しく伺いました。
同じ病気に同じ治療を行っても治らない人がいる。「治癒を妨げる要因」とは何なのか?

こんにちは、私は仙台市で耳鼻科領域から統合医療も含めて診療を行っています。長く西洋医学の世界で研究を続け、さまざまな疾病を治そうと努めてきました。新しい治療方法も開発してきました。しかし、中にはどうしても治らない患者さんもいます。
誰しも治療すれば同じように治るはずの病が、なぜ人によっては治らないのか。そこに存在するであろう何かしらの「治癒を妨げる要因」を追求するうちに、さまざまな因子があることに気づきました。
たとえば、自律神経バランスや女性ホルモン、男性ホルモンの乱れ。ストレスホルモンの過不足。栄養の偏りによるバランスの崩れ。有害物質のため込み。免疫のアレルギー反応や自己免疫反応。免疫が弱く風邪をひきやすい状態。腸内環境の悪化。老化。本当にさまざまな因子があるのです。
現在は老化も病気だと考えられています。老化現象の進行が早い人、遅い人が存在することもわかっています。老化も含めたこれらの病気の「治癒を妨げる要因」は個人にさまざまな状態で存在し、西洋医学では歯が立ちません。
ですから現在のところ、これらホルモンバランスや自律神経を整えるには、補完医療を組み合わせた治療が必要になります。私は研究を続け、適切なサプリメント療法や生活の改善を行うことで、つまり現状の西洋医学の枠の外に出ることで、いままで治らなかった患者さんを治癒に導いてあげることができるようなりました。
最近増えている働く女性の代表的なトラブルとは?「副腎疲労」について知っておきたい
昨今増えている訴えのひとつにアレルギーがありますが、何よりもストレス社会を原因とする副腎疲労が増えています。
人体はストレスに対抗し心身を守るため、交感神経を緊張させ、副腎からコルチゾールというホルモンを出しています。しかし、ずっとストレスが続くと交感神経がすり切れてしまったり、コルチゾールが十分な量分泌できなくなり破綻が起きます。結果、自律神経失調になったり、あるいは副腎疲労の状態に陥ります。
人は朝、目覚めたときに太陽の光を浴びることでコルチゾールが分泌され、元気になるのですが、これが分泌されないと朝から元気が出ずぐったりしてしまいます。通常の西洋医学ならば抑うつと呼ばれる状態ですから、抗うつ剤が処方されます。いっぽうで、唾液中や血液中のコルチゾールを測定することで副腎疲労と診断がつけば、それに応じたサプリメンテーションで4カ月ほどで体調が改善することが多いのです。
子どものアレルギーでの受診も増えています。子どもはどうしても食べ物に好き嫌いがありますから栄養のバランスが乱れやすく、あるいは遅延型の食物アレルギーという現象で体調が悪くなります。この遅延型の食物アレルギーはじつにさまざまな症状が出現します。たとえば、小学校に入学して以降もおねしょが続いく子どもに遅延型アレルギーが見つかり、原因となっている食べ物をやめたところ治ったというケースもあります。
30代の女性は人生の中でいちばんお元気で、出産に育児に仕事に頑張っておられますよね。しかし、多忙なあまり副腎疲労を発症し、体が上手く動かない、疲れがとれない、だるいという状態にも陥りやすい時期です。
40代に入ると、前更年期を迎えます。月経はあるものの排卵が止まる人がいます。黄体ホルモンが出なくなり、だんだん体がむくんできたり、また下腹部や大腿部が太ってきてしまいます。なかなか眠れなくなってイライラするのもこの前更年期です。
50歳をすぎると女性ホルモンのうちエストロゲンの分泌も止まり、月経も止まって本格的な更年期に入ります。ホットフラッシュが出てくるころです。かつて織田信長が「人間五十年」と『敦盛』を舞ったと言われますが、現代の50代はバリバリと仕事もこなします。責任があり、それに応じたストレスがあり、また高齢出産した人ならばまだ育児中、人によっては介護も重なります。更年期のホルモン補充療法を受けているのに元気にならない場合、副腎疲労が合併している場合が多いのです。
このように、女性は年代によってホルモンバランスが変わるため、症状も変わって出現します。女性ホルモンだけにフォーカスすると他の原因が見逃されかねないのです。
まだまだ耳慣れない成分「5‐ALA」。そもそもミトコンドリアはなぜ大切なの?
こうした不調の治療、そしてアンチエイジング効果を探求し、老化をつかさどる14の因子の中でいろいろ考察をしていく間で、私はミトコンドリアが大切なのではないかと気づきました。
コロナ禍に、同じコロナウイルスに感染した場合も、65歳以上の人は亡くなってしまうのに、若い人は風邪と同様に治癒する、なぜなのかという点が研究されました。しかし理由はよくわかりませんでした。立てられた仮説が「免疫の老化」です。つまり、若い人はウイルスと戦う力が高かったが、65歳以上は負けてしまうのではないか。
免疫にはいろいろな細胞が関与しますが、若い人とシニアでそれら細胞の数そのものは変わりません。抗体も量の面では変わりません。残る要素はエネルギー。つまり、65歳以上はミトコンドリア機能が低下して、エネルギー供給がうまくできず、結果ウイルスに負けてしまったのではないかと考えられるようになりました。我々が活動するエネルギー源はすべてミトコンドリアで作られているため、加齢とともにミトコンドリアの機能が落ちてくると、どうしても免疫も落ちてしまうというわけです。
では、このミトコンドリアを活性化するにはどうすればいいのか。着目したのが、エネルギーを作る5-ALAというアミノ酸です。5-ALAが8つくっついた中に鉄の分子がついたものがヘムで、これがATPというエネルギーを作る根幹なのです。
動物は酸素を吸って二酸化炭素を吐き出していますが、地球上の植物は反対に二酸化炭素を吸って光合成を行い酸素を出します。それで地球の生物がサステナブルに生きることができます。植物が光合成する「葉緑素」は8つの5-ALAの中央に鉄ではなくてマグネシウムがついたものです。動物のヘム、植物の葉緑素、エネルギーを供給する物質は5-ALAというアミノ酸が8つついた物質でできています。つまり5-ALAは生命の根源と言えるのです。
女性は鉄欠乏性貧血になりやすく、鉄剤を飲むことがあると思います。鉄は吸収が悪いためお腹が痛くなりやすいので「ヘム鉄」を推奨されると思いますが、ヘム化されていたほうが吸収よく、副作用が出にくいという側面があります。
つづき>>>更年期の疲れやすさには理由があった…50歳以降、知らぬうちに体内では「代謝の要」が減っている!ズバリ対策方法は

お話/朴澤孝治(ほうざわ こうじ)先生
東北大学大学病院前臨床教授/日本ホリスティック医学協会顧問
米国ハーバード大学留学中の基礎研究成果、東北大学病院助教授、仙台社会保険病院院長補佐など長年にわたる臨床経験をもとに広く耳鼻咽喉科一般の診療を行う。 専門は、滲出性中耳炎、難聴、めまい、嗄声、痙攣性発声障害、嚥下障害、睡眠時無呼吸症候群、アレルギー性鼻炎、味覚・嗅覚障害に対する機能改善。
2011年2月に朴澤耳鼻咽喉科を開院。同時に、耳鳴に対するTRT療法などの新しい治療、漢方、ホメオパシーなどの補完医療も症例に応じて採用する統合医療センターを設立。それぞれの治療法の効果や限界を正しく認識し、患者さんに最適な治療を提供することを目標している。また、いくつかの治療法を提示し利点と欠点を客観的に告知し、可能であれば患者さんが自身が選択できるような診療を目指している。
Marquis Who’s Who Publications Board, Best Doctors in Japanなどに選出される。




