同志社大学は2026年7月1日、大学サイトにて未就学児・小学生の「騒音下での聞き取り能力」の発達標準値を日本で初めて確立したと発表した。あわせて、約15分で実施できる簡便な評価ツールを開発。騒がしい教室などで話を聞き取ることに困難を抱える子供を早期に見つけ、必要な支援につなげることが期待される。 学校や保育の現場では、騒がしい環境下で教師や保育者、友人の話を聞き取る力が学習や生活を送るうえで不可欠となる。この「選択的聴取能力」は16歳になっても成人と比べて劣ることが先行研究で報告されている。静かな場所では聞こえていても、騒音がある環境では聞き取りが難しくなる子供もおり、近年、日本においても「聞こえているのに聞き取れない」聞き取り困難症(LiD)や聴覚情報処理障害(APD)への関心が高まっている。 研究は、同志社大学赤ちゃん学研究センターおよび研究開発推進機構特定任用研究員(准教授、研究当時)の加藤正晴氏と、北陸先端科学技術大学院大学人間情報学研究領域特任准教授の木谷俊介氏によるもの。国内の認定こども園・幼稚園・保育所・小学校に在籍する年長児(5歳児)から小学6年生までの714人を対象に、大規模横断研究を実施した。 使用した課題は2種類。1つは、ターゲット音声と妨害音(多数話者の混合会話)が同時に提示される中でターゲットを聞き取る「聴覚的図と地課題」で、騒がしい教室での聞き取りに対応する情報マスキング耐性を評価するもの。もう1つは、異なる単語を左右の耳に同時提示し、両方を聞き取る「競合語課題(両耳分離聴課題)」で、複数情報源への分割注意能力と言語処理における右耳優位性を評価する。 分析の結果、両課題とも学年が上がるにつれて正答率が向上し、成績のばらつき、つまり個人差が収束することが統計的に確認された。競合語課題では、低学年(年長~小学3年生)で右耳の正答率が有意に高い「右耳優位性」が観察されたが、小学4年生以降は統計的有意差がなくなった。この発達的変化は、先行研究の知見と一致するという。 また、2課題間の正答率には中程度の正の相関があり、両課題が選択的聴取の異なる認知プロセスを測定していることが示唆された。研究では、学年・提示耳別の平均正答率や標準偏差を算出し、パーセンタイル基準値として活用可能な標準データを確立した。 本標準値を用いることで、同学年の平均より著しく低い成績を示す子供を早期に特定し、座席配置の工夫、視覚情報の併用、音響環境の改善などの教育的配慮につなげることが可能になるという。両課題はあわせて15分程度で実施可能で、教育・保育現場で聞き取りに困難を抱える子供を見つける基準としての活用が期待される。 研究成果は、日本音響学会誌82巻7号(2026年7月1日刊行)に掲載された。論文タイトルは「日本における未就学児・児童の選択的聴取の発達と標準化」。