
*TOP画像/だし(山谷花純) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』24話(6月21日放送)より(C)NHK
戦国時代のど真ん中を舞台にした『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の主人公は仲野太賀が演じる豊臣秀長。兄弟の絆で“天下統一”という偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡を描いた大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の第24話が6月21日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。
幽閉された官兵衛、家臣に裏切られた小一郎
先週の放送回では、小寺官兵衛(倉悠貴)が荒木村重(トータス松本)に織田信長(小栗旬)への謝罪を促すため、有岡城を訪れました。官兵衛は城から出たものだとてっきり思っていた筆者でしたが、官兵衛は史実通り幽閉されていました。

官兵衛(倉悠貴) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』24話(6月21日放送)より(C)NHK
地下牢に閉じ込められた官兵衛は伸び放題の髪と髭に顔を覆われ、生命力を失っているようにも見えました。しかし、よく見れば、彼の瞳の奥に微かな希望の揺らめきが宿っているようにも感じられました。
一方、小一郎(仲野太賀)は、村重が10カ月以上にわたって籠城しているものの、兵は士気が高く、衰えていないことを不思議に思っていました。そして、兵糧がどこからか運ばれていると察します。小一郎がその真相を自ら確かめたところ、自分の家臣が村重に米などを銭と引き換えに運んでいることが明らかになりました。小一郎の家臣の行為は主君に対する裏切りです。しかし、小一郎は彼らに命をもって償わせたり、おそろしい方法で懲らしめたりするのではなく、「いくらで雇われた?わしは その倍出す」「そのかわり 二度と このようなまねをいたすな」と交渉を持ちかけました。
小一郎がこのような決断をしたのは、銭を積んでも命は取り戻せないし、仲間との殺し合いを避けたいという思いがあったためです。“一度裏切った者は二度裏切る”という言葉もありますが、自分を裏切った家臣を信じ抜く小一郎は雅量のある男ですね。
狡い村重、夫を愛し抜いただし
●我が身の安全第一の村重
だし(山谷花純)は一族や家臣を助けるためにも、村重に信長に対して謝罪するよう説得を試みました。村重はだしの言葉を受け入れた上で、「もし万が一の時は この命に代えても そなたのことは守る」と約束していました。このときの村重の目は優しく、真剣で、この言葉に嘘はないように感じられました。

だし(山谷花純) 村重(トータス松本) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』24話(6月21日放送)より(C)NHK
けれども、村重は信長の性格を鑑み、許しを得られないことを察し、逃亡を試みたのです。村重が何よりも重んじたのは、自分の命。逃亡前に、金銭的価値がある茶道具を無我夢中にかき集める姿からも、彼のそんな思いが察せます。逃亡生活では茶道具を売り、生活費を得ようと考えたのでしょう。

村重(トータス松本) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』24話(6月21日放送)より(C)NHK
雨の中、村重は必死に逃げ、「わしは 死にとうない」と叫んでいましたが、そこには生への執着、死への恐怖が感じ取れました。
村重は“信用ならぬ”ものの、自分の心に正直です。そんな彼は実に人間味ゆたかな人物だと思います。もちろん、人間と一括りにしてもさまざまなタイプの人がいますが、人間とは自分の身の安全を何より優先するものです。また、どの生きものにも共通することですが、人間も本能的に我が身を守ることを最優先にしますし、危険が迫れば我を忘れて逃げるもの。村重のように謀反を起こした者に容赦ない信長の標的となり、捕らわれれば死は免れぬ状況に置かれれば、彼のように動く者は少なくないでしょう。人間はだれしも危機的状況下で周囲にまで気を配れるほど強くはないのです。
トータス松本は村重のずる賢さや狡猾さを細やかに表現しつつ、その根底に潜む弱さや優しさも体現し、人物に深い奥行きを与えました。村重は卑怯な男だけれども、“悪人”とはみなしがたい人物だと思います。
●運命を毅然とした態度で受け入れただし
一方、だしは自分の利益よりも他者の利益を尊重する人物として描かれていました。小一郎の頼みを受け入れ、村重の説得を試みたのは、夫だけでなく家臣を救うためでもありました。だからこそ、村重が自分を裏切ったことを知った瞬間、だしは大きな衝撃を受け、怒りと絶望の底にたった一人で突き落とされたのです。だしを演じる山谷の迫真の演技に胸を掻き立てられた視聴者は多いはず……。

だし(山谷花純) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』24話(6月21日放送)より(C)NHK
しかし、だしが怒りで殺気立ち、取り乱したのも束の間。家臣を守るためにも、自分の運命を受け入れ、村重の妻としての責任を静かにとりました。斬首を目前に控えただしは哀れさを感じさせず、むしろ儚げなからも凛々しく、力強くさえ見えました。

だし(山谷花純) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』24話(6月21日放送)より(C)NHK
だしは村重が口達者で、不誠実だと気付いていたはずですが、彼が自分に注いでくれた愛情は真であったと信じていました。また、だしは村重の弱さも含めて、愛していたのかもしれません。だからこそ、「殿。それでも…お慕い申し上げておりました」と、天に向かって伝えたのだと思います。
史実では村重とだしは父と娘ほど年齢が離れていますが、本作においても村重を演じるトータス松本は59歳、だしを演じる山谷は29歳(ともに2026年6月時点)と、年の差夫婦。過去の放送回には村重がだしをかわいがり、大切にする場面もありましたが、村重はだしに妻として惚れていただけでなく、娘のようにかわいがっているようにも見えました。そんな二人の関係を知っているからこそ、この結末に心が苦しくなりました。
黒田官兵衛誕生!
本放送回は複数の物語が織り交ぜられた盛りだくさんな内容ですが、タイトルは「軍師官兵衛!」。ついに本作で、軍師官兵衛が誕生した瞬間を迎えました。織田信忠(小関裕太)と豊臣兄弟の間で三木城攻めの方針を巡って意見が対立し、話し合いが難航している最中、官兵衛が「ご無礼つかまつる!」と登場しました。

官兵衛(倉悠貴) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』24話(6月21日放送)より(C)NHK
周囲を圧倒するほどのオーラを放ちながら立つ官兵衛の姿に、“ついに、黒田官兵衛の登場だ!”と胸を高鳴らせた視聴者は多いはずです。
信忠との交渉後、官兵衛は自分と小一郎、藤吉郎の三人になると、地下牢で抱いた絶望と、守り続けてくれている竹中半兵衛(菅田将暉)への想いを明かしました。そして、二人に跪き、「これよりは 小寺ではなく 黒田官兵衛として生まれ変わり お仕えしとうござりまする」と、自らの覚悟を威厳のある態度で伝えました。
半兵衛が生きていた頃の官兵衛には若さゆえの未熟さや青さが感じられ、半兵衛にそっと見守られる弟のように映ることもありました。しかし、己と向き合い、覚悟を決めた今の官兵衛は頼もしく、一皮剥けたように見えます。史実において、黒田官兵衛は豊臣秀吉に最期まで仕えました。高松城攻め、中国大返しなどを大成功させ、秀吉を天下人に導きました。
本記事では、『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の第24で描かれた、荒木村重の逃亡とだしの最期、黒田官兵衛の誕生についてお届けしました。
▶▶戦国時代、なぜ「幽閉」が行われたのか?恐怖の実態と官兵衛以外で幽閉された者とは
では、戦国時代の幽閉についてお届けします。




