
尖圭コンジローマという病気をご存じでしょうか。性感染症の一つで、200以上あると言われるHPVウイルスのうち、比較的悪性度の低い6、11というタイプに感染することで発症します。日本では7万人以上が感染していますが、あまり実態が知られていない病気でもあります。
私たちとの意外な接点はどこにあるのか? どう予防すればよいのか? プライベートケアクリニック東京院 院長の小堀善友先生に詳しく教えていただきました。
ほとんどの男女が生涯に1回は感染するHPV。引き起こすのは子宮頸がんだけではなく

プライベートケアクリニック東京院 院長 小堀善友先生
主に性交渉で感染するウイルス、HPV。生涯で男性91.3%、女性84.6%が感染するとされます。さまざまな病気を引き起こし、中でも警戒すべきは「子宮頸がん」ですが、今回お話する「尖圭コンジローマ」も軽んじるわけにはいきません。
尖圭コンジローマとは、簡単にいえば性器周辺にいぼができる病気です。自覚症状は少ないものの、大きさや発生部位などにより痛みやかゆみがあらわれることがあります。
「日本では7.76万人がり患していると推定され、男性4.55万人、女性3.21万人と男性が多い傾向です。患者からパートナーへの感染が75%と高いのも特徴ですが、感染してから発症まで数週間~3か月程度と比較的長いうえ、女性器の内側にできた場合は外見から気づきにくいのも原因と考えられています」(小堀先生)
腫瘍として悪性化するリスクは低いのですが、進行するとカリフラワー状に大きくなることもあり、見た目のインパクトがとても強いため心理的に大きな負担を抱えることになります。
図の通り、女性感染者数は減少傾向にありますが、男性は増加傾向にあります。
年代別では、性的活動性が高い20代・30代のり患が高いのですが、男女別でみるといくつかの特徴があります。女性は20代前半をピークにあとは下がりますが、男性は20代のピークのあとも感染者数は一定数のまま推移し、60歳以上でもまだまだ感染します。
「感染症の感染理由をつきとめることはとても難しいのですが、男女のピーク差については梅毒など他の性感染症と同様、男性は風俗サービスを経由して感染する可能性が考えられます。女性は感染に気づきにくいことから、男女の再感染数に差が出ているのかもしれません」(小堀先生)
なんと治療は「凍らせて取る」。尖圭コンジローマはどう予防すればいい?
HPVの200以上に及ぶタイプには、発がん性のある高リスク型と、良性腫瘍を引き起こす低リスク型があります。高リスク型のうち16、18は子宮頸がんを引き起こしやすく、6、11は低リスク型ではあるものの尖圭コンジローマの原因となりやすいことで知られます。
「ただしHPVは持続感染せず自然に排除されることもあり、一時的な感染が9割以上と考えられています。多くの性感染症はコンドームで防げますが、尖圭コンジローマは完全には予防できないのが特徴。性器以外に手指からも感染しますし、出産時に母体から新生児に感染するケースもあります」(小堀先生)
意外なことに、尖圭コンジローマの治療は投薬ではなく外科治療が中心です。主流はなんと、液体窒素で冷たくしたピンセットでいぼをつまんで凍らせる凍結凝固治療。ピンセット法と呼ばれる方法で、凍らせて、温かくしてを5回繰り返すとのこと。
「1週間くらいでいぼがぽろっととれます。しかし、尖圭コンジローマはウイルスが残っていると再発します。44%以上が再発し、2回以上の再発が22%、中には10回再発というケースもあります。また、多くのケースでパートナーにも感染しているため検査も必要、心理的にも通院負担的にも大きなストレスがかかる病気です」(小堀先生)
これらHPVの予防に有効な第一選択はワクチン。HPVワクチンは女性ためのワクチンと思われがちですが、子宮頸がんだけでなく男性の肛門がん、男女の尖圭コンジローマなども予防できます。
現在は小学校6年生~高校1年生相当の女性を対象に公費(無料)で定期接種が行われているほか、東京都では男性に対する接種助成も行われており、新宿区、江東区、杉並区、世田谷区などは小学6年生〜高校1年生相当の男性も無料で接種が可能、その他自治体も補助があります。
「性感染症診断治療ガイドライン2026では、未感染者に対する4価もしくは9価のワクチン接種、コンドームの利用が推奨されています。欧米は定期接種で8割以上の人々が幼少のうちに接種しているほか、性交渉のあとでもワクチンの接種意義はあるとされており、26歳までの接種には予防意義があると考えられています。なるべく早い段階での3回の接種をお勧めします」(小堀先生)
ところで、40代、50代はどうすれば?「可能性があるならば、ワクチンを打つ意義は何歳でもある」

子宮頸がんはすべてのがんの中で唯一、ワクチンで予防が可能ながんですから、性交渉を始める年齢になる前にワクチンを接種し、予防することはいまや必須。接種率もどんどん伸びていますから、女児のお母様がたはぜひ逃さず接種させてください。
しかし、気になるのは私たち、接種の対象とはなっていない世代です。学術的な推奨度合いは「26歳以下に有効」とされているものの、それ以上の世代では接種に意味がないのでしょうか? 自費での接種は1回約3~4万円を3回、合計10万円以上となるため、なかなか覚悟が必要です。しかし、感染症やがんのリスクをほぼガードできるのならば、命に値段はつけられないと考えることも可能です。
「26歳というのは疫学上のコスト的な線引きであり、データ上は45歳までなら打つ意義がある可能性があるとされています。性交渉を行う年齢になる前に打つのがベストですが、すでに感染している人であっても9価ワクチンでガードする9つのウイルス全部に感染している可能性は低いことでしょう。他のタイプへの感染は予防できますから、何歳であっても性的活動の可能性があるならば、ワクチンを打つ意義はあると考えられます」(小堀先生)
何歳になっても、もしかして明日突然恋に落ちるかもしれません。また、安定的なパートナーがもしかして何かの拍子に事故的に感染してしまい、気づかないまま過ごしているかもしれません。何歳になっても「私には関係ないわ」とはせず、「もしかして」のリスク意識を持ち続けたいものです。
■詳しい情報は
国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「尖圭コンジローマ」






