いまや世界的に活躍をしている「こんまり」こと、片づけコンサルタントの近藤麻理恵さん。その仕掛け人が、プロデューサーで夫の川原卓巳さんです。
自由に生きるためのカギは「捨てる」こと。捨てることで「自由で幸せな人生を実現できた」と語る川原さん。何を、どのように捨てたのでしょうか。
全2回でお送りしているこのシリーズ、【前編】では川原さんご自身の体験を交えながら、お金・人間関係などを「捨てる」ことの意味や「ときめきセンサー」についてのお話をご紹介しました。【後編】の今回は「自分らしさ」「自己肯定感」を得るために必要な「捨て」について、著書『
「ときめき」に満ちた生活で手に入る、究極の「自分らしい」状態とは?
モノを捨てる。人間関係を捨てる。お金の不安を捨てる──。なんのために捨てるのでしょうか。それはあなたの生活があなたのときめくものだけで満たされるためです。余計なものを捨て、心と時間に余白をつくり、そこに自由を吹き込むためです。あなたの本当にやりたいことをやり、あなたらしい充実した人生を送るためです。
「究極の自分らしい状態」をつくるために捨てるべきものをお伝えします。それは「自分」です。自分を捨ててください。まるで禅問答のような答えに思えるでしょう。でもそんな大げさな話ではありません。
自分らしい状態とはなんでしょうか。それは、自分に向かう「気」を捨てられている状態です。もう少しかみ砕いて説明します。「自分ってこういう人間なのかな」「自分って人からどんなふうに見られているんだろう」といった具合に、多くの人は自分のことばかりを考えています。そして自分のことをあれこれ考えている状態は、自分にしか「気」が向いていない状態とも言えます。
その状態は、実は誰のためにもなっていない。自分の無駄遣いをしているとも言えます。その人の本来の良さが発揮されていない。自分の意識や能力、エネルギーが、自分にしか向いていないからです。
逆に、なにかに没頭したり、夢中になったり、誰かのために力を注ぎきっていたりして自分のことをいっさい気にかけない状態は、余計なところに意識が向いていない本来の自分の良さが出せています。仏教でいうところの「無我」の境地です。それがもっとも自分らしい状態なのです。
日本人が「自我」という概念を持つようになったのは、西洋的思考が輸入された明治時代以降の話だそうです。それまでの日本人は毎日生きることに必死で「自分とはなんなのか」なんて考えることもありませんでした。現代人にとっていちばんのノイズは、スマホでも人目でもSNSでもなく、自分自身にほかならないのです。
「人生の満足度」を、他人の判断基準に任せるのは危険!「承認欲求ジャンキー」になっていませんか?
自分を捨てるうえで、もっとも手放していきたいのが「承認欲求」です。社会的地位、知識、能力、技術、お金、容姿、配偶者。自分が持っているものを通じて自分の存在を誰かに認めさせたい。そうした承認欲求は、多かれ少なかれ誰もが持っています。僕にだって、もちろんあります。
この承認欲求そのものを手放すのはなかなか難しい。ですから、承認欲求に振り回され、ストレスをためる人がとても多いのです。
承認欲求にはプラスの効果もあります。「こういう人間になれたら自信が持てる」「こういう人間でありたい」といった自分の理想を描くのに役立ちますし、承認を求めることが日々の生活における活動のエネルギーの源にもなり、張り合いにもなります。
しかし問題は、判断基準が他者からの視線であることです。外部の判断基準に合わせて理想を設定してしまうというのは、他人に自分の人生の満足度をゆだねてしまうことになります。
わかりやすい例としては、外見に対するコンプレックスが挙げられます。人にはそれぞれ生まれ持った容姿がある。本来は、それぞれその良さをいかそうとすればいい。にもかかわらず、アイドルやモデル、ソーシャルメディアに氾濫する加工されたよく見える外見を基準にしてしまうと「もっと目をぱっちりさせないといけない」「もっと痩せないといけない」というように自分にない部分、足りないところばかりを探してしまうようになります。
「他者の価値観」で自分を測り、ネガティブな気持ちに陥っていくわけです。その結果、人によっては整形しないと外に出られなくなったり、過度なダイエットで命を危険にさらしたりするケースも起こりえます。ずっと完全に満たされることはなく、際限なく足りない、足りない、足りない。そんな沼にズブズブとはまっていく。
他人からの承認を求めてばかりいると「もっと必要とされたい」という気持ちが高まっていきます。自分はこういうすばらしいものを持っていて、あなたにとってメリットのある人間です。つねにそうアピールせずにはいられなくなる。もっと付加価値を身につけないと存在を認めてもらえない。そんな恐怖に駆られてしまうのです。
必要とされないと仕事も得られないし、友だちだってできそうにない。ましてや結婚などできるわけがない。そういう思いから、他人の基準でつくられた「求められる自分像」を目指す。そして外側を必死に整えてばかりいる。承認欲求ジャンキーの振る舞いが、僕の目にはそんなふうに映ります。
自己肯定感を高めるために一番効果的なことは、誰でもできる、意外と身近な小さなこと
そうしたネガティブな気持ちを解消する方法としていちばん効果的なのは、まずは「人の役に立つこと」です。いまの自分にあるもので、目のまえの人の役に立ってみること。人の役に立てれば、それだけ感謝されるし、自分も「具体的に役に立てた」といい気持ちになれる。「自分はこの場所に存在してもいいのだ」という思いに満たされます。
なにも仕事をやめて慈善活動をしたり、青年海外協力隊に入ってはどうかと言っているわけではありません。最初のステップは、ごく簡単なことでかまいません。ゴミを拾ったり、ボランティアに参加したりと、社会的な活動をしてみる。あるいは自分が得てきた知識や技術を、人に伝える場へ参加してみる。
小さなことだと、挨拶をすることだって役に立っているとも言えます。自分から挨拶をすることで、相手とコミュニケーションが生まれる。そしてその場に少しあたたかい空気が生まれる。これも十分に役に立っていることだと思います。
そんな些細(ささい)なことだけで、周囲の人から感謝されて、自己肯定感はグッと上がります。「必要とされている」という気持ちが生まれて、心が落ち着いてくるはずです。
★ここまでの記事では、「自分」や「承認欲求」を捨てることで自己肯定感が上がることについてのお話をお届けしました。【前編】では川原さんご自身の体験を交えながら、お金・人間関係などを「捨てる」ことの意味などをご紹介しています。
●BOOK 『
●PROFILE 川原卓巳 (かわはら・たくみ)
1984年広島県生口島生まれ。プロデューサー。大学卒業後、人材系コンサルティング会社に入社し、のべ5000人以上のビジネスパーソンのキャリアコンサルティングや、企業向けのビジネス構築・人材戦略を手がける。2013年に同社を退職し、近藤麻理恵のマネジメントと“こんまりメソッド”の世界展開をプロデュース。近藤の著書『人生がときめく片づけの魔法』シリーズを世界累計1400万部の大ベストセラーに導いた。2016年に活動拠点をアメリカに移し、「KonMari」ブランドの構築をさらに拡大させるとともに、日本発コンテンツの海外展開にも注力。2021年公開のNetflixオリジナルドキュメンタリー「KonMari “もっと”人生がときめく片づけの魔法(Sparking joy with Marie Kondo)」でエグゼクティブプロデューサーを務め、デイタイム・エミー賞を受賞する。2023年、「川原卓巳 プロデュースの学校」を設立し、グローバルに活躍するプロデューサー人材の育成に取り組んでいる。著書に『Be Yourself 自分らしく輝いて人生を変える教科書』(ダイヤモンド社)、『川原卓巳 プロデュースの学校〈上・下〉』(匠書房)。YouTubeチャンネル『川原卓巳のオモテでする裏側の話』を配信中。