閉経の前後5年を一般に更年期と呼びます。日本人の閉経の平均年齢は一般的には50歳といわれていますが、新しい研究での平均値は52.1歳とされています。となると、47~57歳の世代は更年期に当たる人が多くなります。身体の不調に苦しみ「更年期障害」の状態に至る人もいます。
私ってもう更年期なの? みんなはどうなの?
オトナサローネは同世代の女性100人がいまどのような更年期を迎えているのか、そのあり方を取材しています。(ご本人の年齢や各種の数値は取材時点のものです)
【100人の更年期#117】
◆ミワさん 54歳
長野県在住。家族は54歳の夫、25歳の娘、22歳の息子。民間の学童保育の支援員として働く。
コロナ禍での転職で心身が不調に。婦人科で漢方薬を処方してもらったけれど……
こんにちは。ミワです。何気なく目にした「100人の更年期」を読んで、「つらいのは自分だけじゃない」と励まされました。私の経験が誰かの励みになるならばと思って、私の体験をお話ししますね。
私が心と体に不調を感じ始めたのは2020年、50歳のときでした。世の中が「コロナ禍」に突入して不穏な空気が流れていた頃、転職をしたのです。それまでフリーライターとして15年間、自分のペースで働いていたのですが、50歳を機に「社会に貢献したい」という思いが強くなって、結婚前にしていた「保育士」の仕事に復帰したのです。でも、コロナ禍で職場が戦々恐々としていたことと転職のストレスが重なって、風邪から喘息をこじらせてしまいました。
その後、3カ月間の療養を経て、学童保育を行う現在の職場に再就職できたことで精神的には落ち着きましたが、急性腎盂炎を発症するなど体の不調は依然として続きました。年齢的に「更年期だろうな」と感じていましたが、2回目のワクチン接種後には全身にじんましんが出る副反応なども加わって、つらかったです。
そんなこともあり、3回目のワクチン接種には不安があったのですが、職場の雰囲気が半ば強制的だったこともあり受けざるを得ませんでした。接種後には強い副反応があり、リンパが腫れ上がるほどの症状に見舞われて、死んでしまうのではないかと思いました。
こうした体調不良を何とか改善したくて婦人科を受診し、漢方薬の「加味逍遙散」を処方してもらいました。
「眠れない!」ある日突然、不安と恐怖の闇に突き落とされて
51歳になった頃、仕事の忙しさとストレスがピークに達しました。新規立ち上げの仕事を任され、すべてがゼロからの手探り状態。「主任」という役職もつき、責任の重さを痛感する日々でした。残業も多かったのですが、だからといって家や子どものことをおろそかにはしたくなくて、「きちんとやろう」と頑張る日々でした。
ストレスでいっぱいっぱいだったそんな時期に、可愛がっていた14歳の愛犬を亡くし、実父も他界して……。自分では気づかないうちに、心の奥深くにストレスが積み重なっていたのでしょう。2022年、52歳のときに突然、不安と恐怖の闇に突き落とされたように感じて、全く眠れなくなってしまったのです。
うとうとしてもすぐに目が覚めてしまったり、何度も悪夢にうなされたり……。さらに夜間頻尿がひどくなり、文字通り一睡もできない夜が続きました。その引き金となったのは「子どもの心配事」でしたが、あとから振り返ると「つらい思いを抱えながら、悲しみを忘れるように仕事に没頭していたことがよくなかったのかもしれない」と思います。
「呼吸ができない」心臓バクバク、めまいでフラフラの私。支えてくれたのは職場の同僚でした
不眠に加えて動悸、吐き気、頭痛、食欲不振、頻尿、めまいなどの症状も現れました。突然襲ってくる不安感により、心臓がバクバクして、深呼吸ができないのです。風邪を引いているわけでもないのに吐き気がして、フラフラで、めまいがすることもありました。食欲も減退し、夜も眠れない。そのため、ますます不安感が増していきました。精神不安の症状が出るサイクルは波があって、いつ奈落の底に突き落とされるか、予想がつかない状況でした。
婦人科で処方された自律神経を整える薬や睡眠薬を2カ月ほど服用しましたが、症状の改善は見られませんでした。そこで別の病院へ行き、レディースクリニックでホルモン補充療法(HRT)を開始しました。しかし、不眠にはほとんど効果がなく、診察を担当していた男性医師に相談しても辛さを理解してもらえず、無力感を覚えました。
最終的に心療内科を受診し、そこで処方された睡眠薬を服用しながら治療を続けました。幸いにも心療内科の先生はとても優しく、気持ちが少し安定しました。しかし、それでも一睡もできない夜はありました。
毎日がつらく、途方に暮れていて、仕事を続けることもつらかったのですが、同時に「仕事が支えになっている」とも感じていました。職場には同世代のスタッフがいたため、更年期の辛さを理解してもらえたことが本当にありがたかったです。一睡もできなかった翌日は休ませてもらったり、同僚に仕事を引き受けてもらって残業を減らしたりして、何とか乗り切ることができました。
「眠剤はもう飲みたくない」から2年半で心療内科は卒業。54歳、きっと抜け出せると信じて
不眠症になってから約2年半が経ちました。一番眠れなかったあの時期のことは、つらくて今でも思い出したくないほどです。現在もストレスがかかると眠れなくなることがあり、ぐっすりと朝まで眠れるということは、ほぼありません。
更年期が関係しているのかは分かりませんが、「今までこんなに頑張ってきたのに、報われない」という気持ちが湧き上がることがあります。「もう、一人にさせて」「みんな私を頼らないで」と周囲から解放されたい気持ちが湧くこともありますし、「私はこんなに辛くてギリギリの状態なのに……」と、終わりのない絶望感に苛まれることもあります。
それでも昨年、心療内科を卒業し、睡眠薬をやめました。今でも眠れる日と眠れない日の波はありますが、睡眠薬はもう飲みたくないです。睡眠薬との付き合い方は難しくて、副作用として頭痛が起きることもありました。
睡眠薬の量が少ないと眠れないし、かといって量を増やしていけばいくほど「薬がないと眠れなくなるのでは」と恐怖を覚えました。「睡眠薬は怖い」と感じています。
現在は漢方薬もやめ、ホルモン補充療法のみを継続し、サプリメントなどを試しながら体調管理をしています。今年55歳を迎えますが、この辛い時期からそろそろ抜け出せるのではないかと信じています。50代後半は、元気で朗らかな毎日を過ごせるよう、少しずつ前向きに歩んでいきたいと思います