新年を迎え、初詣で「幸せになれますように」とお願いした方も多いのでは? でも「幸せ」って、どうすればなれるものでしょう?
医学博士であり、メンタルコーチでもあるフリーデマン・シャウブ博士によれば、カギは「潜在意識」にあるそうです。潜在意識とは普段私たちが意識していない感覚や意識のことですが……そんな無自覚のもの、自分でなんとかできるの!?
潜在意識を自分でコントロールし、人生を好転させるにはどうすればよいのか、博士の著書『潜在意識を使えば、人生が変わる』(徳間書店)から抜粋・編集してお届けします。
感情のコントロールが利かなくなるのは「潜在意識のせい」。でも日常的な生命活動は「潜在意識のおかげ」
私たちの感情を司っているのは潜在意識だということを知っていますか? 人の感情というのは非合理的で、ときに厄介でコントロールが利かないと感じるのはそのためなのです。
また、潜在意識は私たちの記憶を呼び起こしたり、保持したりもしています。顕在意識のデータ処理能力には限界があるので、潜在意識が記憶のほとんどをしっかりと保持しているのです。
さらに、私たちの身体の何兆個もの細胞が調和して働くのも潜在意識の働きによるものです。心臓の鼓動、呼吸、食べ物の消化など、私たちの生理機能の大部分は意識的にコントロールすることはできません。たとえば、座ってコーヒーを飲むのは意識的に行うことですが、それを実行するために身体の筋肉を動かしているのは潜在意識です。
日常的な行動を潜在意識が自動操縦してくれるおかげで、私たちは特に意識をせずとも車を運転したり、ひげを剃ったり、フォークとナイフを使って食事をしたりすることができるのです。
潜在意識の「思い込み」を変えれば、「幸福感」を手に入れられる
本来の自分を取り戻す旅をするうえで最も重要なのは、潜在意識には私たちが常にさらされている膨大な量の情報をフィルタリングし、要約する働きがあるのを知っておくことです。潜在意識は私たちが過負荷になるのを防ぐために、必要不可欠な最低限の情報だけを顕在意識に伝えています。
でも実は、常に周りの状況をチェックし、あらゆる情報を記憶しているのです。予感や直感、第一印象、胸騒ぎなどはこの潜在意識の記憶から生まれます。潜在意識のフィルターの中でも最も強力なのは、現実の認識を歪めてしまう固定観念、つまり思い込みです。
潜在意識の歪んだフィルターや条件反射的な自己防衛反応を意識して変えることで、自動操縦的な生き方から抜け出すことはできるのでしょうか? 潜在意識はとにかく無難に生きることだけを目的にしているようにも思えますが、実はもうひとつ重要な役割を持っています。それは幸福感を得ることです。
子どもの頃の刷り込みや思い込みによって、潜在意識は幸福感よりも安心感を求めるようになります。でもひとたび安心感が得られると、次は自然と幸福感や満足感を得ることに重きを置くようになるのです。
では、その潜在意識のギアを意図的にシフトチェンジすることができたらどうでしょうか? 意識して潜在意識に働きかける、つまり顕在意識と潜在意識のコラボレーションこそ、本書の大きなテーマのひとつです。顕在意識と潜在意識のコラボレーションがなぜ効果的なのか、その仕組みについて簡単に説明します。
自分の「潜在意識」を上手に使って幸せになるために、知っておきたいこととは?
●潜在意識を変えるためには顕在意識のガイドが必要
潜在意識が持つ力を最大限に引き出すには、ひとつだけ必要なことがあります。それは、潜在意識のプログラムを意識的にアップデートすることです。意識的に新しい視点や戦略を教えない限り、私たちの潜在意識は古いバージョンのままなのです。
心の奥の漠然とした部分に働きかけるなんて、難しく感じるかもしれません。でも、潜在意識をガイドするのはあなたが思っているほど難しいことではありません。
●潜在意識とのコミュニケーションは難しくない
私たちが小説や映画を楽しめるのは、潜在意識のおかげだということを知っていますか? 本のページや映画のスクリーンは、潜在意識が働くことで別世界への入り口になります。想像力を働かせて架空の現実に入り込むことで、私たちは小説や映画のエキサイティングな物語の参加者になるのです。
潜在意識に働きかけるためには、理性的な思考から感情的で感覚的な意識、つまり頭で考えることから心で思い描くことへのシフトが必要です。たとえば、子どもの頃のある出来事を思い出したいとします。それにはまず、その出来事がいつ、どこで起きたのか、そして誰が関わっていたのかを考えます。そして、その記憶をあなたの心のスクリーンで再生してみます。
潜在意識の言語は、夢の中と同じでイメージや感覚、感情で構成されています。そのとき見たり、聞いたり、感じたり、嗅いだり、そして味わったりしたものをだんだんと思い出してくると、潜在意識とコミュニケーションをとっていることを実感できます。
潜在意識になにかを伝えるためには、感情や感覚を駆使してイメージを思い浮かべることが重要なのです。
●感情によって潜在意識の記憶がつくられる
潜在意識は記憶のほとんどを感情と紐づけして保持しているので、どうしても正確さは失われてしまいます。大抵の場合、私たちは強い感情を伴う出来事(ポジティブなことにしてもネガティブなことにしても)をより鮮明に覚えているものです。
強い感情も潜在意識のフィルターになり、実際に起きた事実を歪めたり、一部を消してしまったりします。つまり、強い感情を抱いた出来事ほど、それを思い出すのは容易になりますが、詳細の正確さは低くなるのです。
■BOOK:『潜在意識を使えば、人生が変わる』
■著者略歴:フリーデマン・シャウブ
医学博士(Friedemann Schaub, M.D., Ph.D.)
ドイツのミュンヘン大学で医学博士号を、アメリカのワシントン大学で分子生物学博士号を取得。研修医としてミュンヘン大学病院の循環器内科に勤務したのち、ワシントン大学で研究員となる。博士の医学研究は『ネイチャー・メディシン』誌や『サーキュレーション』誌など、権威ある医学・科学雑誌に掲載され注目を集めた。著書『The Fearand Anxiety Solution』(未訳)は2012年インディペンデント・パブリッシャー・アワード金賞、USAベストブックアワード新刊自己啓発書部門最優秀賞を受賞。潜在意識の根本原因を探ることで、これまでに世界各国の数千人のクライアントが不安や怖れを克服するのをサポートしてきた。現在は妻のダニエルと共に南フランスに在住。多くの動物たちと暮らしている。
■訳者略歴:岡 昌広(おかまさひろ)
1976年東京生まれ。美容専門学校卒業後、美容師として都内のヘアサロンに勤務。金属アレルギーの発症により転職を考えていた折に、ある占い師の予見を受け翻訳者となる。『魔術の教科書』『魔女の指南書』『リモート・ビューイング』などの訳書がある。