
最近、「疲れやすくなった」「以前より歩く速度が遅くなった」と感じることはありませんか?年齢のせいだと思いがちですが、その背景には筋力の低下が隠れているかもしれません。
実は筋肉は使わない期間が続くと急速に衰え、体力や回復力にも大きな影響を及ぼします。一方で、同じ年代でも元気に活動できる人には、ある共通点があるのだとか。
本記事では、整形外科専門医・フィットネストレーナーの吉原潔氏の著書から、体力の土台となる「筋肉」の重要性や、体力がある人とない人を分けるポイントについて解説します。
※本記事は書籍『疲れない、回復できる、速く・長く歩ける 体力低下を食い止める30秒習慣』(吉原潔:著/アスコム)から一部抜粋・編集したものです
20歳をピークに筋肉は減少する
「若い頃に1か月間入院したんですけど、退院してズボンをはいたらブカブカでした。寝ているだけで、やせるのですね」そう言うのは、今は40代後半の女性。
残念ながら……寝ているだけでやせたには違いありませんが、筋肉も減ってしまい、やせ衰えてしまったのです。
× 寝ているだけで、きれいにやせた
〇 寝ているだけだから、筋肉が短期間で一気に減り、やせ衰えた
実際は、こういうことです。寝たきりになると、真っ先に減るのは、手足の筋肉(脂肪も減ります)。絶対安静(寝たきり)の状態になると、筋力は1週間で10~15%、3~5週間でなんと50%も失われてしまうのです。
例えば、10Kgの荷物を軽々と持ち上げることができる筋力を持っていた人が病気になって3週間程度、ほぼベッドの上で生活したとします。
すると、回復後には5Kgの荷物を持ち上げるのがやっと、という状態になってしまうということです。
なぜ、こんなに急速に筋肉が落ちてしまうと思いますか?
犯人は「脳」です。脳はとても出来のいい臓器で、それぞれの臓器に優先順位をつけ、生きるために絶対に必要な臓器はなんとしてでも守ろうとします。
実は、筋肉は優先順位が低いのです。筋肉は人体で最大の熱産生臓器で、筋肉を維持するには、常にエネルギーを必要とします(医学的には、筋肉は臓器として位置づけられています)。
病気などで、栄養からエネルギーがとれないときは、まず脂肪がエネルギーとして使われます。それと同時に、体のエネルギー消費は「省エネモード」に切り替えられます。
筋肉は、たくさんのエネルギーが必要な“燃費の悪い”臓器ですから、筋肉もエネルギー源として使ってしまい、脳がわざと筋肉量を減らすのです。
では、寝たきりでなければ筋肉量が維持できるのか? というとそれは“NO”です。悲しいことに、何もしなければ筋肉は1つ年をとるごとに、1%ずつ減っていくと言われています。
筋肉量のピークは20歳頃で、そこから加齢とともに徐々に減少していきます。
特に衰えやすい下半身の筋肉で見ると、個人差はありますが、50代から減少のスピードが加速し、年間0.5〜1%ずつ減っていくことも珍しくありません。
このペースで何もしないまま放置すれば、80代を迎える頃には、筋肉の量や質がピーク時の6割から7割程度にまで低下してしまうリスクがあります。
ここまで残念な話しかしてきませんでしたが、絶望する必要はありません。筋肉は何歳であっても、鍛えて復活させられるという側面があるからです。
特に骨格筋は、年齢にかかわらず、筋トレで刺激を与えると、やがて筋肉量が増え始め、筋力も高まっていきます。これは朗報ですね。
体力を線香にたとえると、努力しだいでは、燃え尽きそうな線香でも、長さを継ぎ足せるということです。
体力がある人と、ない人の決定的な違い
何もしなければ、筋力をメインとした体力は年齢とともに減少しますが、70歳でも若い人と遜色がないほどの体力がある人もたくさんいます。
そういう人は、アクティブに生活をしているだけではなく、ケガや病気になりにくいし、仮になってしまったときでも回復が早いという特徴があります。
70歳でも体力がある人と、ない人の決定的な違いはどこにあるのか、それは、「筋肉量の違い」しかありません。
ですから、早期回復、再発の防止のために私のクリニックで行っているリハビリでは、筋肉をつけてもらうことを主目的とした運動療法に重きを置いています。
しかし、ご高齢の患者さんのなかには自分で運動するのはおっくうで、マッサージなどの心地のよい施術のみを受けたがる方がいます。
マッサージは血行をよくしたり、筋肉の緊張をゆるめたりするので、一時的には症状が楽になることも多いです。
しかし、マッサージで筋肉が増えることも、筋力がつくこともありません。心地のよい施術だけでは体力をつけることはできないことを心にとめておいてください。
筋肉はほかの臓器とは異なり、筋トレなどの運動をすれば、いくつになっても成長するという特性があります。つまり、あなたの意思で、老化に抗うことができるのです。
ここまでの記事では主に、筋肉が衰える原因について紹介しました。つづく関連記事では、「筋肉」と「体力」の関係性についてお届けします。
つづき>>寝たきり3週間で筋力は50%も減る⁉ 整形外科医が教える「体力がある人」と「ない人」の決定的な違い
■著者:吉原 潔(よしはら・きよし)
整形外科専門医・フィットネストレーナー。医学博士。アレックス脊椎クリニック名誉院長。日本医科大学卒業後、同大学整形外科入局。帝京大学医学部附属溝口病院整形外科講師、三軒茶屋第一病院整形外科部長、アレックス脊椎クリニック院長を経て、2024年より現職。日本整形外科学会専門医、日整会内視鏡下手術・技術認定医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会(NESTA)公認パーソナルフィットネストレーナー、食生活アドバイザー。運動療法や筋力トレーニングにも精通した医師として、多角的な診療に定評がある。トレーナーとしての信条は「ケガをしないトレーニング方法を指導すること」。50歳を過ぎてから筋トレでメタボ体形を脱し、ボディコンテストに出場、受賞歴多数。著書に『ドクターズスクワット 医者が考案した「30秒で運動不足を解消する方法」』(アスコム)などがある。




