
もしも親を介護することになったら、「お金は足りるのだろうか」と不安になったことはありませんか?施設に入ると高額になるイメージがありますし、親が認知症になったら預金が引き出せなくなるという恐れも。しかし、自分で親を介護する費用を出すのもなかなか難しいもの。
本記事では、『親が75歳を過ぎたら知りたいことが全部のってる本』から、介護費用の考え方や、認知症に備えるためのポイントを紹介します。
※本記事は書籍『親が75歳を過ぎたら知りたいことが全部のってる本』(主婦の友社)から一部抜粋・編集したものです
※監修:黒田尚子(1級FP技能士・一般社団法人患者家計サポート協会顧問)
親の「介護に使えるお金」を試算する
親の資産で介護するには、平均余命の見積もりが大事です
親の年金額と資産額がわかったら、使える介護費用についても検討しましょう。ここで大事なのは、寿命を見積もることです。インターネットで検索すると、簡易生命表から現在の年齢ごとの平均嫁うがわかります。後述の計算式をもとに説明しましょう。
80歳の女性の場合、平均余命は約12年。手持ちの金融資産2000万円を12年で使うケースで資産すると、1カ月に使える額は約22万円です。ここから生活費や社会保険料を引いた残りが、介護にかけられる費用ということです。
施設に入る場合も同じですが、入所一時金が必要なら、「手持ちの金融資産」からその費用を引いて計算しましょう。たとえば後述の80歳女性の場合、入所一時金が1000万円の施設に入ると、月額利用料の上限は約14万円になります。
もしも「親は元気だし、もう少し長生きしそう」と思うのなら、平均余命プラス10年で計算したいものです。想定より長生きをして資金不足に陥り、転居せざるを得なくなるケースは少なくないのです。
【用語】平均寿命と平均余命
2023年の平均寿命は男性81歳・女性87歳ですが、80歳の男性の平均余命があと1年というわけではありません。平均寿命とは0歳時点の平均余命。現在80歳の人は、男性で約9年、女性で約12年の平均余命があります。
親が1カ月に使える額を算出
施設の利用料は必ず値上がりする!身の丈に合った施設選びを
親の施設を選ぶとき、「少しでもいいところに」と思うのは自然なこと。自分でめんどうを見ない罪悪感もあります。だからこそ「月々数万円の援助ならしよう」と考えがちですが、それはやめておきましょう。
施設の費用は物価上昇に合わせて値上がりします。最初は1万~2万円のつもりが、3万円、4万円と上がっていくことが多いもの。子どもだって自分の老後資金を貯める時期。せっかく慣れた施設を「お金が払えない」と退去させないためにも、身の丈に合う施設を選びたいものです。
▶貯蓄が多いと補足給付が受けられない⁉施設入所の現実
「施設入所はお金がかかる」とは限らない
全国的に高齢者施設が増え、価格帯はさまざまです
「施設に入所するとお金がかかる」というイメージを持っている人は多いかもしれませんが、この10年ほどで有料老人ホームやサービスつき高齢者向け住宅が増え、価格帯もさまざまになりました。地方であれば年金の範囲内で入所できる有料老人ホームも増えています。
「施設に入れるお金がない!」という場合、特養(特別養護老人ホーム)が第1選択肢になるかもしれません。特養などの介護保険施設は、所得が少ない人に手厚い補助があります。
年金額や資産の額によって食費や部屋代への「補足給付」があり、本来1日1450円ほどの食費が300円に、1日2100円の部屋代が880円に減額されるケースも(※)。ただし、特養は原則として要介護3以上でないと申し込めないので、それまでどうするかが問題です。
※年金などの収入が一定額以下で、資産額650万円以下(単身者の場合)の人がユニット型個室に入った場合。
「特養は申し込んでも入れない。数百人待ちだ」といわれていましたが、現在はそうとも限りません。補足給付の資産基準が見直しになったことで、負担があまり軽減されなくなった世帯も多いからです。
施設の選択肢が増えている今、親が元気なうちに情報を集め、施設の見学などを始めておくことをおすすめします。
貯蓄が多いと補足給付が受けられない⁉
2021年に補足給付の資産基準が見直されてからは、年金額が少なくても預貯金が一定額あれば補足給付がつかなくなりました。そのため、同じものを食べて同じタイプの部屋に住んでも、月額で7万円近く差が生じてしまうことに。
施設の種類による費用の目安
認知症になるとお金が引き出せないことも
認められるのは本人の利益が明らかな場合です
「認知症になると口座が凍結されるって本当ですか?」と聞かれることがありますが、半分は本当です。預貯金の引き出しには口座名義人本人の意思確認が必要。金融機関側が「判断能力が著しく低下し、契約できない」と判断した場合、お金を引き出すことができなくなるからです。
しかし、介護や施設の入所にお金は必要です。そのため、全国銀行協会が「医療や介護費用で支払いが必要な場合に限り、家族がお金を引き出すことを認める」という統一見解を発表。成年後見制度の利用を前提としつつも、医療費や介護費であることが確認できる請求書や領収書の提出で、家族もお金を引き出せます。
親の判断能力がしっかりしているうちなら、代理人キャッシュカードを作っておくのも手です。ただし親と生計を一(いつ)にする親族、または同居の親族という条件があります。
当てはまらない場合には、銀行に「代理人届」「代理人指名」などの手続きをすませておくと、窓口での出入金が可能になります。いずれも、親に判断能力があるうちしか手続きできませんので、早めに対応することが重要です。
「生計を一にする」とは?
多くの場合、同居していれば一つの生計と見なされるが、別居していても生活費や介護費などを定期的に送金していれば「生計を一にしている」と認められるケースが多い。
認知症になるとできなくなること
定期預金の解約/株や投資信託の売買
定期預金の解約、株や投資信託の売買などは、銀行や証券会社の窓口や電話口で本人の意思表示がないとできない。認知症とわかると口座は凍結される。
不動産の売買
親の名義の不動産を売却して施設入所を考えることもあるが、認知症になると売買契約ができなくなるし、賃貸契約を結ぶこともできなくなる。

生命保険の解約・請求
契約者が認知症になってしまった場合、生命保険の解約はできない。受取人が認知症の場合も請求することができないし、新たに生命保険に入ることもできない。
遺言書の作成
遺産相続に関する遺言書はすべて本人による手続きなので、認知症が進むと書くことがむずかしくなる。また、認知症になってからの遺言書は無効になることも。
成年後見制度を利用するなら判断能力があるうちに手続きを
成年後見制度とは判断能力が不十分な人にかわって、後見人が財産管理や契約の締結を行うことです。本人に判断能力があるうちなら、家族などの当事者間で契約して後見人に指名する「任意後見制度」を使うことができますが、判断能力が落ちてからでは家庭裁判所に後見人を選出してもらう「法定後見制度」しか利用できません。その場合、法定後見人に選出されるのは弁護士や司法書士などが多く、月額数万円の報酬も必要になります。
ここまでの記事では、介護費用の考え方や認知症に備えるためのポイントについて紹介しました。つづく関連記事では、「親のデジタル財産の確認方法」をお届けします。
つづき>>サブスク代が、死後も親の「ネット銀行」から引き落とされ続け…相続で困る「デジタル遺産」の落とし穴
■黒田尚子(くろだ・なおこ)
ファイナンシャルプランナー。CFP®認定者、1級FP技能士。一般社団法人患者家計サポート協会顧問、消費生活専門相談員失格、CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター、城西国際大学・千葉商科大学非常勤講師。がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費問題にも注力。著書・監修書に『マンガで解決 親の介護とお金が不安です』『マンガでわかる お金に人生を振り回されたくないから 超ビギナーが今すぐやること教えてください』(ともに主婦の友社)など多数。






