1947年3月1日から1954年9月21日までの7年7か月にわたり、国家権力によって韓国・済州島の島民が“赤狩り”と称して弾圧され、推定2万5千人から3万人が命を落としたとされる「済州4・3」事件。この事件を題材に描いた映画『済州島四・三事件 ハラン』が本年4月に公開されるや連日満席となり話題を呼んだことも記憶に新しい。
日本でも知られるようになったこの惨劇は、韓国の軍事政権下で長い間語られることなく隠蔽され、50年近い年月を経た2000年にようやく真相究明と犠牲者の名誉回復がなされることとなった。
しかし、犠牲者の2割を占めた女性たちが受けた性暴力被害は積極的に語られることはなく、その証言が可視化されるようになったのは2019年になってから。本ドキュメンタリーは、献身的な4・3研究者の聞き取り作業に同行し、生き延びた4人の女性たちの証言を軸に、国家権力と家父長制という二重の暴力にさらされた女性たちの被害とその後の苦難の道のり、そしてそこから浮かび上がる恐るべき2つの事件に迫る。
企画・プロデュースを務めたのは、韓国のテレビ局で40年以上にわたりドキュメンタリー番組制作に携わってきた、韓国を代表するドキュメンタリー作家キム・オギョン。20年以上前の取材で出会った4・3生存者の女性の言葉が心に残っていたというキム・オギョン監督は、公式資料に記録されている女性被害者たちが「男性の妻」「娘」などとしか記載されていない事実に衝撃を受け、女性たちの物語を記録しようと企画した。
キム・オギョン監督は、2026年全州国際映画祭企画部門の審査員も務めたベテランのドキュメンタリー監督、チ・ヘウォンが手掛ける2024年・第25回全州国際映画祭で特別部門ドキュメンタリー賞を受賞したほか、EBS国際ドキュメンタリー映画祭では審査員特別賞と観客賞を受賞するなど高い評価を受けた。今回解禁となった予告では、済州島の美しい海辺のシーンから一転し、「当時、“赤狩り”という名目で、2万5,000人から3万ほどの済州島民が虐殺された」という言葉の後、夥しい数の遺骨や遺体が映し出される。
大虐殺「済州4・3」の聞き取り調査を続ける研究者は、その犠牲者について「男性の数がはるかに多いが、女性はさらにひどいことをされた」と説明する。
続いて奇跡的に生き延びた4人の女性たちが登場し、事件当時に身体の7か所も刺されたこと、家族の居場所を言わないと撃つと脅されたことなど各々が壮絶な体験を語る。そして「当時、女性たちが受けた性暴力被害は、公式な記録も存在していない」というテロップに続き、震える女性の姿が映し出され、「心がね どうにか持ちこたえている状態なの」という声が重なっていく。
併せて解禁となったポスターは、女性の背中を映し出す写真に「言葉にすることはできなかった」というコピーが添えられ、物静かでありながらも言葉にならない思いがあふれだす女性の背中が印象的なビジュアル。そして、恐ろしい惨劇に見舞われた4人の女性たちと献身的な研究者の写真が並ぶ。そこには顔を持ち、固有の名前を持つ人々が生きていた。それは過去の物語ではなく、現在に至るまで世界各地で起こっている惨劇とも共通する事実であることを浮かび上がらせている。
『済州島 声たち』は11月7日(土)よりポレポレ東中野ほか全国にて順次公開。











