
「どうして菊池学級の成績が伸びたのか」
NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』などで注目を集める、教育者・菊池省三先生は、かつて北九州市の教員だった頃、市の教育センター長からこう聞かれたそうです。実際に行っていたのは机に向かって暗記するような勉強スタイルではありません。「それで学力が伸びるの?」とにわかに信じがたいような方法です。新刊『足型をはめられた子どもたち』の中で、その理由について以下のようにお話しています。
「私がとるアプローチはたったひとつと言えます。『教室内のコミュニケーション』学年のスタートには学級目標を決めます。具体的には「一年後に言われたい言葉、言われたくない言葉」などといったテーマで話し合ったり、ホームルームではその日の日直のいいところをクラスメイト一人ひとりがほめたり、とおたがいをわかり合うことにより教室は子どもたち一人ひとりの居場所になっていきます。
子どもたちが教室に溶け込めば、教室全体の学力も伸びます」
コミュニケーションをとることによって、教室は子どもたちにとって安心して勉強に取り組める場に変化し、学習態度が変わっていくのだそうです。
今回は、千葉県・流山市内にある小学校にて、菊池先生の飛び込み授業を見学させていただきインタビューを実施。先が読めない時代に「子どもが学ぶべきこと」について、お話を伺いました。
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▶この先の時代も学歴は意味がある?先が見えない時代、子どもが身につけるべき能力は。教育のゴールはどこに?
ー昔は、暗記としての勉強を頑張って、いい大学に行って、いい会社に就職すれば一生安泰、幸せだというレールがありました。でも今は先が見えない時代の中で、子どもに暗記としての勉強を強いること、「勉強しなさい」ということが本当に将来を生き抜く力になるだろうか、と親として疑問に思うことがあります。
「そうですね。『生きて働く知識・技能』という言葉があるでしょう。学校で学ぶことが『生きて働かない知識・技能』だったら意味がないわけです。豊かなコミュニケーションや価値判断というのは、ある程度の知識・技能も絶対必要です。ですから、『正解・不正解があるような知識』、『正解のない問いを自分の頭で考えること』、どちらも総合的に伸ばしていくことが大事だと思うんです。でも今は、生きて働かない知識・技能を押し付けるしかないような授業スタイルがまだまだ横行しているんじゃないかと思います。例えば、コミュニケーションの授業で、自分の意見を言うには知識・技能も必要だから、勉強しますよ。どちらも補完し合うものだということです」
ー先生はさらに著書の中でこんな風に述べています。藤原和博さんが体系的に整理し、広めた言葉「絶対解と納得解」について「私なりの解釈も加えて」と断りを入れつつ話している箇所です。
「絶対解というのは、もう答えが決まっているということですね。一般的に言えば正解主義です。テストの点数で測れる『学力』です。1+1=2というのが絶対解です。
現在の日本の教育現場の主流でしょう。『できる・できない』で子どもたちを分けるものでもあります。100点満点としてできない問題の点数を引いていく減点法の評価基準とも言えます。
これはじつは、排除の論理へと向かいがちです。できないから、そのできない状態がひどいから『来年度は支援学級に』という構図も、ある意味生まれやすくなってくると思います。
私の立場は、この絶対解的な考え方をすべて否定するということではありません。子どもが社会に出ていくにあたり、暗記すべき項目やルールというものは存在します。それができるか、できないかという厳しさは必要なものです。
しかし、『それがすべてではない』ということです。『絶対解だけだ』というのが、絶対解ではないのです」
そして先生は続けます。
「これに加え、学校教育の現場では「納得解」という観点を持つべきだと思うのです。それは、「みんなでつくっていくこと、考え続けて、見つけ続けようとすること」であると、私は定義したいです。
絶対解だけを重視して、その型からはみ出る子を排除するという発想ではなくて、それぞれの子どもの意欲を重視しつつ、みんなでつくっていくという教育観です。
加点法でもあります。絶対解が「そこに合わなかったらダメ」という減点法なら、納得解は逆に「ここはいいよね」という加点法です。
ダイバーシティ、という言葉が言われて久しいです。多様性の尊重ということです。多様な意見が尊重されていく社会になろうとしているわけですから、そこに学校教育も当然のごとく対応していくべきでしょう」
▶家庭でできることは「多様性を受け入れる」ために家庭でできること。まず「同じものを見ても人は違う」を体験させる
-コミュニケーションの授業の必要性について理解しました。家庭で親自身が子どもとの関わりの中で何かできることはありますか。
本の中でも書いたのですが、テレビのニュースを見てコメントを述べ合うということをぜひしてほしいですね。同じものを見ても、聞いても、一人一人感じ方や意見は違うという経験をまずさせることじゃないかな、と思うんですよね。
その具体的な方法やポイントについては著書でぜひチェックしてみてください。また多様性の時代に、「子どもが自立して生きていくために身につけるべき力」とは?学校や家庭でできることは?先が見えない時代だからこそ、学校での現状を踏まえて親として子どもにできることについても、さらに詳しく紹介しています。
◆ベストセラー1位を獲得。悩める親も先生も必読!不登校にいじめ、学級崩壊、先が見えない時代に「今すべき教育」とは?




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『足型をはめられた子どもたち』(1,210円(税込)講談社刊)

【大事に育ててきたわが子がなぜ? どうして子どもが小学校で壊れていくの? 子どもはどうすれば成長するの? その疑問への回答と解決策!】
NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」、日本テレビ系列「世界一受けたい授業」などで、崩壊した教室を立て直す授業が紹介され大反響を呼んだ、菊池省三先生のコミュニケーション教育。子どもの生きる力を伸ばすメソッドへの支持は拡がり、講演や研修会は年間250回に及んでいます。
現役を引退し、教師の指導者として全国の小学校に招かれ、10年のあいだに行った飛び込み授業(示範授業)は3000時間超。各地の教室をもっともよく知る教育者です。
そこで出合ったのが「机の下の足型」に代表される子どもを「型にはめる教育」。
今子どもたちの現状は、不登校が44人に1人、暴力行為やいじめも過去最多。一方の教師も、精神疾患で休職する人数が過去最多を更新し、なり手不足が進んでいます。
子どもの98%が通う公立小学校で、学習意欲を上げさせたり、事態を改善させたりするために対症療法として行ってしまいがちな「型にはめる」教育が、悪いサイクルとなっています。
本書では、公立小学校の現状を知っていただき、その解決策として荒れた子どもたちを変えてきた菊池先生のコミュニケーション教育を紹介。たとえば学習意欲は、型にはめなくても、子どもの内面が成長すれば増すことがよくわかります。
保護者のみなさんにとっても、子育てについての認識が180度変わる「ほめ方」や「叱り方」「語彙の増やし方」「考える力のつけ方」など、子どもを社会に送り出すために、家庭でできる実践法をお伝えします。
第1章 足型をはめられた子どもたち――学校における教育虐待
第2章 なぜ、コミュニケーション教育で子どもは成長するのか
第3章 今風と昔風の学級崩壊――立て直し請負人による飛び込み授業
第4章 コミュニケーション科の学びとは? その効果とは?
第5章 堀之内くんと学級の2年間――集団の中で個を育てる
第6章 家庭でもできる菊池式実践法――子どもを「眺める」から始める
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菊池 省三先生プロフィール

1959年、愛媛県生まれ。山口大学教育学部卒業。2014年度まで北九州市立小学校の教諭を務めた後、教育実践研究家として活動を始める。全国の国公立小学校に招かれ、2026年時点で3000時間以上、飛び込み授業(示範授業)を行っている。教育実践研究サークル「菊池道場」主宰。8つの自治体の教育アドバイザーを務める。講演は年250回に上る。著書に、『新装版 授業がうまい教師のすごいコミュニケーション術』(学陽書房)、『学級崩壊立て直し請負人 大人と子どもで取り組む「言葉」教育革命』(新潮社)など、共著に『菊池先生の「ことばシャワー」の奇跡 生きる力がつく授業』(講談社)などがある。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」や日本テレビ系列「世界一受けたい授業」、ドキュメンタリー映画「挑む」シリーズなど多数出演。




