
世間ではハラスメントへの意識が年々高まり、「これもハラスメントなの?」「どこまでがセーフ?」と戸惑う管理職やリーダーが増えています。
実際、悪意がなくても相手に不快感やストレスを与えれば問題視されるケースもあり、指導やコミュニケーションに神経を使っている人は少なくありません。特に最近は、明確なハラスメントだけでなく、「グレーゾーンハラスメント」が離職の一因になるともいわれています。
リクルートやLINEでの人事経験を経て、4,500時間以上の実績を持つプロコーチ・寺田貴哉氏によると、リーダーにはハラスメントの知識だけでなく、メンバーとの相互理解を深める姿勢も求められるそうです。
本記事では寺田氏が監修した書籍から、職場で気をつけたいハラスメントの基礎知識と向き合い方を紹介します。
※本記事は書籍『はじめて部下ができたら知りたいことが全部のってる本』(寺田貴哉:監修/主婦の友社)から一部抜粋・編集したものです
※マンガ、イラスト/イケマリコ
不快感やストレスの種になる無自覚なハラスメントに注意
静かな離職につながる「グレーゾーンハラスメント」
言葉や行動で相手を不快にしたり、尊厳を傷つけたりすることを意味する「ハラスメント」。オンライン会議で相手の室内の様子に干渉したりする「リモハラ」、育休を取得する男性社員に対して厳しくあたる「パタハラ」など、社会の変化に伴いハラスメントも多様化しています。
たとえ悪意のないコミュニケーションのつもりだったとしても、リーダーという役職に就くだけで、何気ない言動が何かの強要と認識されるケースも。不用意な発言や誤解を与える態度をとらないようにするのが賢明です。
最近では、ハラスメントとまではいえないものの、不快感やストレスを与える「グレーゾーンハラスメント」が広がっており、それが離職の原因となる可能性も指摘されています。たとえば、妊娠しているメンバーの体調を気遣って早めの帰宅を促す行為も、もし相手が「邪魔者扱いされている」などと感じれば、マタハラになり得ます。
今の社会でどんなことがハラスメントとされているのか理解するのはもちろん、価値観の違いなどで不要な誤解が生じないよう、日頃からメンバーと相互理解を深めておくことが肝心といえるでしょう。
知っておきたい!パワハラにならない指導の仕方
厚生労働省では、パワハラにならない指導方法として、次の4つの基準を設けている。問題となる具体的な行動や内容に焦点を絞る。 感情的にならない。 人格や性格を否定しない。 どのように改善すべきかを伝える。 部下にどのように伝わったか確認する。
ハラスメントの定義
パワハラ(パワーハラスメント)

下のからまでの要素をすべて満たすものが、職場におけるパワーハラスメントと定義されている。客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲の指導はこれにあたらない。
優越的な関係を背景とした言動であって、
業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
労働者の就業環境が害されるもの
〈パワーハラスメントにあたりうる例〉
■身体的な攻撃:殴る蹴るなど暴力をふるったり、相手に物を投げつけたりする行為。
■精神的な攻撃:人格を否定する言動や、必要以上の厳しい叱責や人前での叱責を繰り返すなど。
■人間関係からの切り離し:長時間にわたり別室に隔離したり、集団で無視して職場で孤立させたりするなど。
■過大な要求:業務上明らかに不要なことや、遂行不可能なことを強制するなど。
■過小な要求:能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや、仕事を与えないことなど。
■個の侵食:私的なことに過度に立ち入ること。たとえば、職場外での監視や病歴などの個人情報を当事者の了解を得ずに暴露することなど。
セクハラ(セクシャルハラスメント)

職場において、労働者の意に反する性的な内容の発言や行動によって、当人が不利益を受けたり就業環境が害されたりすること。
マタハラ(マタニティーハラスメント)

職場における、妊娠や出産等に関するハラスメント。たとえば育児休業を妨げたり、休業を取得した労働者の就業環境が害されたりすることなど。
▶多様化する「グレーゾーンハラスメント」一覧
ほかにもこんなに…!職場で起こりやすいハラスメント
職場で起こりやすいハラスメントはさまざま。無意識で行ってしまうものもあるため、注意が必要です。まずはどんなハラスメントがあるか、しっかりと認識していきましょう。
モラハラ(モラルハラスメント)
暴言や嫌みによって、相手の人格を否定する精神的な攻撃や陰湿な嫌がらせのこと。
ジェンハラ(ジェンダーハラスメント)
性別の基準を持ち出し、相手が嫌がる差別的な言葉を浴びせたり、相手を非難したりすること。
レイハラ(レイシャルハラスメント)
「レイシャル=人種」にまつわるハラスメントで、人種や民族、国籍、出身地などを理由とした差別的言動など。
ソーハラ(ソーシャルメディアハラスメント)
SNS上に職場の人間関係を持ち込み、嫌がらせをしたり、ストレスを与えたりすること。
リモハラ(リモートハラスメント)
リモート勤務下で起こる、オンラインツールでの過度な干渉や、私生活への介入などの行為。

ケアハラ(ケアハラスメント)
介護休業の利用により不利益を与えたり、言動で相手を傷つけ仕事に支障を起こしたりすること。
カスハラ(カスタマーハラスメント)
顧客からのクレームや言動のうち、要求内容が社会通念上不相当なものや、労働者の就業環境を害する行為など。
スモハラ(スモークハラスメント)
たばこの煙やにおいによって周囲に迷惑をかけるなど、喫煙に関わるハラスメント。
ノイハラ(ノイズハラスメント)
大声での会話や独り言、キーボードの過剰な操作音など、配慮の無い騒音で周囲に不快感やストレスを与え、集中力を妨げる行為。

スメハラ(スメルハラスメント)
たばこ臭や強烈な香水のにおいなど、強いにおいで他人にストレスや苦痛を与えること。
フキハラ(不機嫌ハラスメント)
不機嫌な態度をとり続けることで、周囲に心理的な圧力や不快感を与えるハラスメント。

ロジハラ(ロジカルハラスメント)
論理を用いた精神的なハラスメントで、反論できない相手を一方的に論理で追い詰めることなど。
ラブハラ(ラブハラスメント)
恋愛や結婚などの状況への言及により、相手を傷つけたり不快な思いをさせたりすること。
ジタハラ(時短ハラスメント)
残業や休日出勤を禁止して、サービス残業を強いたり、仕事量は変わらないのに勤務時間を削ったりすること。
アルハラ(アルコールハラスメント)
酒が飲めない相手への配慮を欠いた言動や、無理に飲酒を強要することなど。
テクハラ(テクノロジーハラスメント)
IT技術に関するハラスメントで、ITスキルが低い人を馬鹿にするような言動をとることなど。
エイハラ(エイジハラスメント)
年上、年下にかかわらず、年齢を理由とした差別的な発言で相手を傷つけるハラスメント。
逆ハラ(逆ハラスメント)
パワーハラスメントの逆で、立場が弱い者から上の立場の者に行う嫌がらせ行為。
“肩ポン!”“下の名前呼び”はハラスメント?
「どこからがハラスメントか」をテーマにしたアンケート調査で、最も多くの人がNGとした行為は「業務時間外のLINE連絡」。また、管理職と非管理職の認識で差があったのは「肩を叩く」で、その差は+7.3ptに上る。
管理職側は「肩ポン」や「下の名前で呼ぶ」といった行為を、親しみを込めたコミュニケーションの一環と捉える傾向があるが、非管理職にとっては不快に感じる場合もあり、こうした“グレーゾーン”の行為には注意が必要だ。
ここまでの記事では、「ハラスメントの定義と種類」について紹介しました。つづく関連記事では、「間違えがちな敬語や慣用句」をお届けします。
つづき>>「取り急ぎ~まで」は失礼⁉ 「こちら~になります」は間違い! 中堅社員でもうっかり間違えるビジネス日本語
■寺田貴哉(テラダ・タカヤ)
株式会社TERRAS代表取締役。エグゼクティブコーチ。1996年に株式会社リクルートへ入社。営業・経営企画などを経て人事へ。新人事制度の設計・導入、全社横断プロジェクトをリードする。2019年、LINE株式会社に入社。人事にて人材開発・組織開発・新卒採用を牽引。社内のキータレントに対する成長支援や機会提供を行うTalent Success Teamの立ち上げを行う傍ら、Zホールディングスにてグループ各社の役員を対象としたエグゼクティブコーチングを開始。2023年、株式会社TERRASを創業。現在、複業プロコーチとして社外に50名ほどのクライアントを持ち、経営者・起業家を中心にエグゼクティブコーチングを提供中。総コーチング時間は4,500時間を超える。





