
食後にふっと眠くなる、体からだるさが抜けない——そんな困り事の裏には、食後血糖値の急上昇が関わっているかもしれません。そこで最近注目されているのが、食事の前や途中に紅茶を取り入れる「ティーファースト」というスタイルです。編集部は、ウェルネス総合研究所が主催した「ウェルネスの最前線:エビデンスから紐解く紅茶ポリフェノールの新たな可能性~抗老化・抗疲労とティーファースト習慣~」と題したメディア向けセミナーを取材しました。
【こちらも読まれています】◀◀糖化年齢75歳!「だるさの原因はこれだったか…」実年齢より約30歳も体がコゲついていた編集部員、NGだった食習慣とは
▶40代なのに閉経状態!?その原因は40代なのに体は「閉経状態」!? 原因は血糖値スパイクかも
女性の閉経は平均で50.5歳ほどと言われています。閉経を迎えるまでは、女性の体はエストロゲンの働きによって守られています。動脈硬化の進行がゆっくりで、認知機能の低下も男性より緩やか、骨は強く保たれ、血管も若々しい状態を維持しやすい。こうした長年の“エストロゲンの恩恵”のおかげもあって、結果として女性の平均寿命が男性より約7年長くなると考えられているのです。
しかし閉経が近づくと、エストロゲンが急激に減少し、体の代謝バランスが変わり始めます。閉経後は太りやすくなったり、コレステロール値や血糖値が上がりやすくなったりすることがよく知られています。つまり50代は、閉経を境に糖や脂質の代謝が崩れやすくなる時期で、体調の変化が現れやすいタイミングでもあるのです。
「私はまだ若いので大丈夫」と思った人がいるかも知れませんが、30代・40代の女性にも深く関係しています。エストロゲンは、体内で NO(一酸化窒素) を作り出します。NOは、血が固まりすぎないように調整し、血管や骨を若々しく保ち、神経細胞を守るといった重要な働きを担っています。そして、そのNOを生み出しているのがエストロゲンです。
ところが、若い世代でも食後の血糖値スパイクが増える生活を続けていると、体にAGEsが溜まりエストロゲンの働きが妨げられ、NOが作られにくくなります。さらに、せっかく作られたNOもAGEsによって壊されてしまうでしょう。つまり、AGEsが多い女性の体は、実質的には早く閉経を迎えたのと同じ状態になるのです。
▶糖尿病リスクが10倍以上ある人とは糖尿病予備群は1年後に糖尿病へ進むリスクが10倍以上!
健康診断で「血糖値が高め」「糖尿病の可能性がある」と指摘される人は少なくありません。糖尿病と診断されるほどではないけれど、正常とも言えない中間の状態が「糖尿病予備群」です。代表的なのが、空腹時に血糖値が高めの「IFG(空腹時血糖異常」と、食後に血糖値が高めの「 IGT(耐糖能異常)」 です。
正常な血糖値の人と比べると、糖尿病予備群は1年後に糖尿病へ進むリスクが10倍以上高いことが知られており、まさに“注意が必要なグループ”とされています。中でも IGTの人は、さまざまな病気にかかりやすく、寿命が短い傾向があります。食後の血糖値が高く跳ね上がるという特徴が、将来の病気の進行や合併症のリスクに強く影響してしまうからです。

血糖値が食後に大きく跳ね上がるほど、体の中では活性酸素が多く生み出されます。ある研究では、血糖値と活性酸素はきれいに比例して増えることが示されました。血糖値スパイクが繰り返されるほど、体の中で活性酸素がどんどん生み出されてしまうということです。この活性酸素は血管の内側を傷つけ、動脈硬化を進めたり、心筋梗塞のリスクを高めたりします。また、細胞のDNAにもダメージを与えるため、がんの発症リスクにも関わると考えられています。こうした影響が積み重なることで、最終的には寿命が短くなる可能性もあるのです。
▶リスクが上がる!AGEsが関わる病気とはAGEsが増えるとプリプリのコラーゲンがゴワゴワのゴムみたい!
さらに、血糖値スパイクが起こるたびにAGEsが増えることも見逃せません。プリプリのコラーゲンが余分な糖にさらされてAGEs 化すると、コゲついてゴワゴワのゴムみたいに変わってしまいます。

そのほかAGEsは、認知症やアルツハイマー病、骨粗しょう症、サルコペニア、動脈硬化症、がんといった重大な病気に関わると言われています。メタボリックシンドロームや脂肪肝炎、肝硬変にも関係しています。美容面では、シワやたるみ、シミの原因になり、髪の毛のボリュームが失われ、数が少なくなったり、細くなったりするといったことも知られています。

だからこそ、食後の血糖値の急上昇を抑えることが、体の健康と若さを守るうえでとても大切になるのです。
▶血糖値スパイクを抑える飲み物って知ってる?取り入れたい紅茶習慣。健康効果を高めるために、いつ飲む?
そこで、ぜひオススメしたいのが紅茶を習慣的に取り入れることです。しかも、「いつ飲むか」というタイミングが重要。紅茶は食後に楽しむイメージが強いですが、食事の最初、もしくは食事中に飲むことがポイント。紅茶に含まれる紅茶ポリフェノールには、糖質が体に吸収されるまでのスピードをゆるやかにする働きがあると考えられているからです。これにより食後の血糖値スパイクが抑えられれば、AGEsを減らすことも期待できます。
それだけでなく、紅茶プリフェノールはコレステロール値を下げる、脂質代謝を改善するという効果も報告されています。そのため、毎日のティーファースト習慣で、糖質だけでなく脂質も一緒に対策できるというわけです。

飲む量は1日3杯くらいが目安です。茶葉にお湯を注いで抽出したものをいただくのがベストで、夏はそれを冷して飲むとよいでしょう。夕食時にいただくと、カフェインが夜の睡眠に影響するかもしれません。できれば朝食や昼食時に飲めると理想的です。
▶更年期世代こそ健康習慣のはじめどき!忙しい毎日だからこそ、手軽に始めたい1杯のシンプル習慣
世界には、約12億人の糖尿病と予備軍がいるため、約6~7人に1人ぐらいが血糖値が高めであることになります。それだけAGEsを蓄積している人が多いとも考えられ、読者の皆さんも決して人ごとではありません。年齢を重ねると、どうしても血糖値やコレステロールが気になってきます。でも現実には、仕事や家事で忙しく、睡眠も十分に取れず、お腹が空けば甘いものに手が伸びてしまう——誰もがそんな日常を送っているのではないでしょうか。猛暑が続く毎日で気をつけたいのは、飲み物から糖分を過剰に摂るのを避けること。吸収が早く、一気に血糖値スパイクを引き起こすためです。カロリーゼロを謳う飲料をはじめ、甘い炭酸飲料も控えることをおすすめします。
更年期は、これまで以上に食事を大切にしたい時期です。エストロゲンの減少に乱れた食生活が重なると、ダブルパンチに。そこで無理なく続けられる、日常の中の小さな工夫が大切になってきます。紅茶は、忙しい生活の中でも取り入れやすい飲料です。食事の前や合間に紅茶を一杯添えるだけで、体の負担をそっと軽くしてくれる。そんなシンプルで続けやすい習慣が、未来の健康と美容を守る一歩になるでしょう。
お話/
山岸昌一先生
昭和医科大学医学部 内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科学部門 教授。日本内科学会総合内科専門医。日本糖尿病学会専門医。日本循環器学会専門医。日本高血圧学会専門医。




