
首都圏の中学受験が過熱するなか、ネット上では「我が子に合った学校選び」に頭を悩ませる保護者の声があふれています。
神奈川県在住で、一般社団法人の役員秘書として働くえみりさん(仮名・49歳)は、中学1年生の長男と小学4年生の長女を育てる2児の母。精密機器メーカー勤務の夫・忍さん(仮名・50歳)とともに長男の中学受験を終え、現在は長女の受験に伴走中です。長男のA君は現在、いわゆるボリュームゾーンの私立中学に通っています。母のえみりさんは、「正直、中学の偏差値なんてどうでもいい」とキッパリ言い切ります。それでも子供たちに中学受験をさせた理由について尋ねると、自身の経験と、わが子たちの性格が大きく関係していると話してくれました。
前編では、えみりさん夫妻のバックボーンと、長男が私立受験を希望した理由について伺いました。本記事では、A君とご家族が経験した受験生活をお話しいただきます。
>>この記事の前編:中学受験で「正直、中学の偏差値なんてどうでもいい」と話すママが、あえて私立を受けさせる理由とは
【どうする?小学校受験と中学校受験】後編
◆中学受験を決意したA君の塾選びはどうだった?
大手塾で「一番下のクラスになって心が折れた」。そして個別指導へ
中学受験を決意し、4年生で大手進学塾に入ったA君。しかし、生来の勉強嫌いと自由奔放な性格もあり、一番下のクラスになってしまいました。
「先生はおもしろかったようですが、成績別にクラス分けするシステムや、宿題の多さに親も子も疲れてしまいました。私はちょうど父の介護が始まり、ケアマネジャーさんとの打ち合わせも増えていた時期。難関校向けの大手塾は、残念ながら半年でドロップアウトしました」
A君は、学校の友達から冗談半分で「一番下のクラス」とからかわれたこともあり、それを悲しく感じていたそうです。その後、「探究型の塾」や「偏差値にとらわれない指導をする塾」も検討したものの、最終的には大手の個別指導塾を選びました。
「評判のいい小規模塾は、1年生から席を確保しないと入れないほど人気でした。一方で、偏差値重視の集団塾は我が子には合わなかった。そこで、子供に合わせた指導を求めて個別指導塾にしました。国語と算数だけ受講し、得意な理科と社会は通信教育のタブレット学習にしました」
◆A君が選んだ志望校は?
ダメ元で難関校挑戦を目指すか、無理のない受験か
えみりさんの両親は、A君が中学受験をすると聞いて、第一志望としては、誰もが知る伝統校を目指すのだろうと思っていたそうです。
「4年生の頃から中学受験フェアや学校見学に積極的に参加しました。息子が気に入ったのは、地学部と生物部のある難関校、理科のクラブで化石を扱うボリュームゾーン校、それから雰囲気が気に入った都立進学校でした。4年生なら夢を見るだけならどこでも目指せます。でも私の中では、その段階で『2科目入試のあるボリュームゾーン校かな』と思っていました」
理由は、A君の性格でした。
「うちの子は早生まれで、同級生の中でも幼いタイプなんです。高学年になっても、かなへびを見つけると追いかけてしまうし、夏休みのセミの幼虫探しも保育園時代と変わらず大好き。そんな彼の『外遊びの夏休み』を守りながら受験をするなら、あまり高いハードルを設けたくありませんでした」
さらに、候補校の理科の先生が化石について熱く語ってくれたことも印象的だったそうです。
「息子の雰囲気と合いそうな学校だなと思いました。その学校には特待生制度があり、学力層の幅も広いんです。夫も『地元の中学みたいでいいじゃない。いろんな個性がいて』と気に入っていました」
結局A君は、難関校は受験せず、本命2校と前受け校のみを受験することにしたそうです。
◆A君の中学校生活はどうなった?
「中学時点の偏差値なんて気にしません」とキッパリ
一般的には、私立中学に通わせるなら「少しでも偏差値の高い学校へ」と考えがちです。しかし、えみりさんはこう言い切ります。
「中学時点の偏差値なんて、私は気にしません。夫も同じです。もちろん、男子御三家に合格した近所のお子さんを見ると、知的好奇心にあふれたすてきな子だなと思います。だから多少の負け惜しみはあるかもしれません(笑)。でも、息子は息子なりに『好きなこと』を諦めず、その上でできる範囲の勉強をして、気に入った学校に進みました。今は、『英語の先生はキツい』とか『思ったより朝が早い』など文句も言いますが、友達もできて楽しそうです」
A君は希望していた理科部には入らず、個人的に「化石好きの理科教師」と交流しているそうです。そして友達に誘われ、吹奏楽部へ入部しました。
「それでも、おじいちゃんの化石を学校に寄贈できて鼻高々みたいです。これからどんな勉強をして、どんな友達を作って、どこの大学へ行くのか。それとも大学以外の道を選ぶのか。私には分かりません。もし私がもっと若い母親だったら、もう少し偏差値にこだわっていたかもしれません」
◆無理のない受験により、守れたこととは
50歳を目前にした年齢だからこそ「思うこと」とは
49歳になった今だからこそ、分かったことがあるといいます。
「高専卒の夫と、地方の大学を出た私。それでも、お互いの同級生の中には素晴らしい活躍をしている人がたくさんいます。私はいわゆる伝統私立中学に進学しましたが、校風が合わず公立高校を目指しました。母から見れば規格外の人生かもしれません。でも、私は楽しいことを諦めませんでした。息子にも、そして母親の私にも無理のない受験だったからこそ、『楽しい小学校時代』を守れた。そのことが、いつか何か良い形で実を結んでくれたらと思っています」
現在は、「クラスの男子がうるさくてめんどくさいから女子校に行きたい」と話す小学4年生の長女の中学受験にも、マイペースに伴走中とのことです。
>>この記事の前編:中学受験で「正直、中学の偏差値なんてどうでもいい」と話すママが、あえて私立を受けさせる理由とは
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