
「投資を始めたとして、いつ売ればいいの?」「もし急に下がったらどうすれば?」そんな疑問や不安を感じて、なかなか一歩を踏み出せない人も多いのではないでしょうか。
オルカンの生みの親である代田秀雄氏は、短期的な値動きに左右されるのではなく「市場に居続けることこそが重要」だと指摘します。
本記事では代田氏の著書から、長期投資の基本と、「゙最後に笑う」人の心構えをご紹介します。
※本記事は書籍『オルカン思考: 世界経済を味方につける「長期投資」の教科書』(代田秀雄:著/Gakken)から一部抜粋・編集したものです
「市場に居続ける」ことの重要性
過去のデータでは、20年程度の保有期間を取るとマイナスになりにくい傾向があります。長期投資の期間について問われたときに20年は投資しましょうと答えることが多いのも、そういった背景があります。
ここで注意したいことは20年の“長期投資”の意味です。20年間の長期投資というのは、オルカンやS&P500といった市場と連動する分散された株式ファンドを一度買ったら、20年間持ち続けるということです。
つまり、利益が出たから売却するとか、急落したから売却するとか、途中でそういうことをしてはいけません。売却するということは、一時的に市場を離れてしまうことになります。
市場を離れたときに、大きな値上がりをすることもあるかもしれません。そして、その大きな値上がりがいつあるのかは、誰も予測できないのです。
「過去年間(1995〜2024)でS&P500に全期間投資していた場合、最も上昇した10日を逃したらリターンがほぼ半分になった」というレポートがあります。このように、“ほんの数日”を逃すだけで、長期投資の成果が大きく変わる可能性が高いのが株式投資です。
「市場が好調のときだけ市場に入ればいい」「暴落時に逃げて、回復を待てばいい」といった“タイミング重視”の戦略は、実際には成果を出すことが難しい投資手法であるといわざるを得ません。
したがって、私たちは短期的な値動きを予測しようとするより「市場に居続ける(Time in the Market)」ことを重視すべきです。市場に出たり入ったりを繰り返す行為は、一見するとリスクを避けているようですが、実際には、相場が大きく回復する局面や、リターンの大部分を生み出す限られた「上昇日」を逃してしまうリスクを高めます。
株式市場の長期リターンは、毎日の平均的な上昇の積み重ねで生まれているわけではありません。ごく一部の大きな上昇局面が、全体の成果を左右しています。感情に流されて市場から離れてしまうことは、その最も重要な瞬間に立ち会えない可能性を高めてしまうのです。
だからこそ、投資において本当に重要なのは、「当てること」ではなく、「続けること」です。“Time in the market beats timing the market.”(市場のタイミングを計ろうとするよりも、市場に居続ける時間のほうが、はるかに大きな成果をもたらす)という投資の格言があることも、それを証明しているといえるでしょう。
長期投資とは、相場を完璧に予測する技術ではありません。変動を受け入れながらも、市場との関係を断たずに持ち続ける姿勢そのものが、最終的なリターンを決定づけるのです。
相場が荒れても「続ける人」が最後に笑う
また、長期投資で大切なのは、途中でやめずに積み立てを続けることです。これは、相場が下がったときに積み立てをやめてしまうと、せっかくの”安く買える時期”を逃してしまうためです。毎月一定額を投資する定額積み立てであれば、相場の上下にかかわらず着実に投資を続けられ、長期的な成果につながります。
もちろん、相場が急落すると不安になるのは自然なことです。「このまま積み立てていて本当に大丈夫だろうか」と感じたことのある人も多いでしょう。しかし、長期投資では、逆境の時ほど後の成果が大きくなるという逆説的な仕組みがあります。だからこそ、定額積み立てを継続することが重要なのです。
ここで、二つのシナリオを比較してみましょう。
シナリオA: 年間、相場が一直線に上昇して価格が1.5倍になった場合。
シナリオB:最初の5年間で価格が半分になり、その後10年間かけて元の水準に戻った場合。
この2つのシナリオのもとで、毎月1万円を10年間積み立てることにします。多くの投資家はシナリオAのように、ストレスなく上昇してほしいと考えるでしょう。しかし、実際にはシナリオBのように大きな下落が起こることもあります。
興味深いのは、シナリオBでも毎月定額で積み立てていた場合、価格が安いあいだに多くの口数を手に入れられるため、最終的なリターンはシナリオAを上回るという点です。
つまり、下落局面でも慌てず、定額で積み立てを続ける― その地味な行動が、知らず知らずのうちに未来の大きな成果につながるのです。そして、相場が下落したときにどのように行動するか、そのことが将来の運用の成果を大きく左右します。
オルカンを通じて世界中の企業の成長に参加するということは、いい換えれば、世界経済と一緒に自分の人生を歩むことです。毎月の積み立てという小さな一歩を重ねるだけで、未来の大きな成果につながります。
世界経済は長期的に成長を続け、その果実は確実に私たちの資産として実を結びます。地味な行動に思える積み立ても、人生の自由やワクワクに直結する― それが、長期投資の最大の魅力です。
ここまでの記事では、「市場に居続けることの重要性」についてご紹介しました。つづく関連記事では、「1億円を生む長期積み立ての考え方」についてお届けします。
つづき>>「1億円を生む」積み立て方がある?「マイナスになりにくい」年数って?「オルカンの生みの親」に聞く、投資運用の“本質”
■著者略歴:代田秀雄(しろた・ひでお)
三菱UFJアセットマネジメント前常務。シロタ・ウェルス・アンド・ウェルビーイング・アドバイザーズ代表。1985年に三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)に入社。支店にて個人財務相談や法人融資などを担当した後、年金資金や投資信託の運用業務に約30年にわたり携わる。三菱UFJ投信で商品企画部長などを歴任し、2019年より三菱UFJ国際投信常務取締役として商品・マーケティング部門等を所管。インデックス投資を通じて、資産形成やNISAの普及に貢献した。2025年4月、三菱UFJアセットマネジメント常務取締役を退任し、特別業務顧問に就任するとともに、シロタ・ウェルス・アンド・ウェルビーイング・アドバイザーズを設立。中央大学法学部兼任講師(国際金融論)。人気投資信託シリーズ「eMAXIS Slim」、なかでも「オルカン」の生みの親として、メディアでたびたび取り上げられている。本書が一般書としては初の書籍となる。





