
子どもに「学校に行きたくない」と言われたとき、多くの親が強い不安に襲われると思います。無理にでも行かせるべきなのか、それとも見守るべきなのか――正解がわからず、将来この子は社会でやっていけるのだろうかと、先のことまで考えてしまう方も少なくありません。
こうした親の不安について、20年以上にわたり不登校の子どもと家族に寄り添ってきた公認心理師の植木希恵氏は、「学校」と「社会」をどう捉えているかが、不安の正体を見極める鍵だと指摘します。
本記事では、植木氏の著書から、子どもの不登校・行き渋りに親が悩みやすい理由と、気持ちが少しラクになる考え方を紹介します。
※本記事は書籍『不登校・行き渋り…タイプ別でわかる 「学校に行きたくない」と言われたときの親のかかわり方』(植木希恵:著/ディスカヴァー・トゥエンティワン)から一部抜粋・編集したものです
子どもが学校に行けないと親が不安になる理由
子どもが「学校に行きたくない」と言ったり、行き渋ったり、学校でトラブルを起こしたりしたとき、みなさんはどうしますか?学校に行けない原因やトラブルになる原因を探ろうとしたり、なんとかして学校に問題なく行けるようにならないかと模索したりするかもしれません。
学校は1つの「社会」であり、将来自立して生きるための準備をする場でもあります。そのため、学校にうまくなじめないわが子を見ると、親のほうがなんとなく将来を想像して不安になり、「学校に行ってほしい」と願うようになるのです。
ここでいう「社会」には2つの意味があります。
1つは、「自分以外の人々とのかかわり」という意味です。自分の外はすべて社会。人が2人以上集まっている場は「社会」なので、家族のいる家庭も1つの社会ですし、友だちとのかかわりも社会です。学校は、先生も同級生も下級生も上級生もいるので、さらに大きな「社会」になります。
もう1つは、「社会人」という言葉に象徴されるように、経済活動をする場としての「社会」です。自立して、1人の人間として生きる場ともいえるかもしれません。
人は成長するにつれて、「家庭→保育園・幼稚園→学校→自立して経済活動をする場」とかかわる場が増え、かかわる人の種類、人数がだんだん増えていきます。それに伴って、その子自身が得られる手助けは減っていきます。
小学校入学前に、家庭で家族との関係のつくり方やルールを守る練習をします。たとえばあいさつをしたり、トイレトレーニングをしたりしますね。これは子どもにとって、学校という少し複雑でルールがはっきりした場になじむための練習です。
友だちと遊んだり、保護者と一緒に出かけたりすることも、学校のルールを理解したり、慣れたりするための練習となるでしょう。ここでは子どもたちがうまくできるように、保護者が助けてくれます。
同様に学校では、時間を守ったり、みんなと同じ行動をしたりと、大人になって経済活動を行うための準備と練習がはじまります。学校は本番ではなくて、練習の場なのです。それを助けるのが先生です。
私たち大人は、人は社会に出て人とうまくかかわっていかないと生きられないこと、お金を稼いで自活することができないこと、つまり経済的に自立できなくなってしまうことを知っています。
現代は働き方が多様化し、人に会わなくてもできる仕事も存在します。しかし、人とかかわることなく生きていくのは難しいですし、人に会わずに仕事できるほどのスキルや才能がある人はそうそういません。社会から重宝される突出した才能がなかったら、社会に出て人とかかわりながら生きていくのが一般的なルートになります。
ところが、目の前のわが子を見ていると、社会に出る前段階となる学校生活でつまずいている。このままだと、大人になって社会に出たときにうまくやっていける気がしない……。
ここに、保護者のみなさんが不安になる要素が隠れている気がします。「社会」に出る手前の「学校」でつまずいてしまったら、そこから先には進めないのではないか、そう考えるから不安になるのではないでしょうか。
ここまでの記事では、「子どもが学校に行けないと親が不安になる理由」についてご紹介しました。つづく関連記事では、不登校や行き渋りの状態になったときに「まず考えるべきこと」をお届けします。
つづき>>子どもの不登校=親の「評価」?公認心理師が語る「親が陥りがちな状態」と、本当に考えるべきこと
■著者略歴: 植木希恵(うえき・きえ)
公認心理師。20年以上、不登校・発達障害の子どもたちとその家族にかかわる。カウンセラー・心理スタッフとして勤務したフリースクール併設のカウンセリングルームで、多くの不登校の子どもたちにソーシャルスキルトレーニングや心理カウンセリング、進路相談を行う。その後、中学校で講師として勤務した際に不登校や発達障害の子どもと接する機会が増えたため、2014年、広島市にて「不登校・発達障害傾向の子どものための個別指導塾 きらぼし学舎」を開業。1人の子どもに長くかかわるのが特徴で、小学生から高校、大学、専門学校、社会人になってからもカウンセリングを継続しているケースもある。子どもの心理・学習サポートを行うと同時に、母親に子育ての視点を提供する人気講座「お母さんのための心理学講座」をオンラインで開講中。受講生の方から「もし受講していなかったら、不登校の子どもへの対応を誤ったり迷ったりしていたはず」「不登校だから、発達障害だからではないもう一つ上の視点を学び、子どもとの関係が良くなった」という報告が届いている。著書に『発達障害&グレーゾーンの子の「できた!」がふえる おうち学習サポート大全』(主婦の友社)がある。




