がんサバイバーの妊孕性温存最前線。体への負担を抑えながらの治療により、40代で出産したケースも【医師に聞く】 | NewsCafe

がんサバイバーの妊孕性温存最前線。体への負担を抑えながらの治療により、40代で出産したケースも【医師に聞く】

社会 ニュース
がんサバイバーの妊孕性温存最前線。体への負担を抑えながらの治療により、40代で出産したケースも【医師に聞く】

2人に1人が生涯のうちにがんにかかるといわれている現代の日本。がんに罹患した女性が、将来の出産を望んでいた場合、妊娠の可能性を残すために行われている治療は、卵子の凍結保存です。

前回の記事では、37歳でステージ4の悪性リンパ腫を発症し、寛解後に39歳で卵子凍結。再発と寛解を経て、42歳の時に凍結保存していた卵子を使って顕微授精を行い妊娠。43歳で出産した女性・宮子さん(仮名・46歳)のケースをご紹介しました。

つづく本記事では、宮子さんが卵子凍結や不妊治療を行った「ローズレディースクリニック」院長の石塚文平先生に、がん患者・がんサバイバーの妊孕性温存について伺いました。

迅速な対応を可能にするための取り組みや、最新技術を用いた治療内容とはどんなものなのでしょうか。

【シリーズ・40代50代が向き合う更年期/変えられることを変える知識と、変えられないことを受け入れる知恵】#3

※写真はイメージです。

◆がんと妊孕性温存。治療はどう進められる?

がんサバイバーが卵子凍結や胚(受精卵)凍結を行うために大事なこと

――がんに罹患された女性が御院を訪れて、将来的な妊娠を希望された場合、どのようなことができるのでしょうか。

まず、治療を円滑に行うために、近隣の総合病院などと連携を取りながら診療を行っています。その中で、できるだけ早く病状を把握し、ご本人が妊娠を希望され、体調的にも可能な場合には、迅速に卵子凍結や胚(受精卵)凍結を目指します。

そのためには、患者様の体調に十分配慮しながら、がん治療のスケジュールに合わせて、最適な方法を一緒に考えていくことが大切になってきます。

――42歳で出産された宮子さんのケースでは、「一般的な不妊治療では非常に可能性が低かった」と伺っています。彼女のような難しいケースでも妊娠に至った、専門的な治療について教えてください。

当院では、血小板濃縮血漿(PRP)を卵巣に注入する治療を行っており、卵巣機能が著しく低下している方でも、一定の効果が期待できることを確認しております。

さらに現在、PRPとは異なる新しい薬剤を卵巣に注入する治療法についても、安全性が高く、より高い効果が見込めることがわかってきました。本年中には、当院でも使用を開始できるよう準備を進めています。

――卵巣機能が低下した方への治療法「ローズ法」についても教えていただけますか?

卵巣機能が一定のレベル以下まで低下している方に対して、当院が基本としている不妊治療が、HMGという排卵誘発剤と、ホルモンを調整する点鼻薬を併用する「卵巣高刺激法(ローズ法)」です。

この方法では、ピルのような強いホルモン剤は使用せず、体への負担をできるだけ抑えながら治療を行うため、健康面への影響も過度に心配する必要がありません。

高感度なAMH検査により、より正確な状態に基づいた治療が可能に

卵巣機能が低下していても、採卵の可能性を少しでも高める治療とは

――妊娠が可能な状況かを判断する検査についても、より専門的な方法があると伺いました。卵巣機能が低下している方向けのAMH検査についても教えて下さい。

AMH検査は、患者様の卵巣に卵子がどのくらい残っているか、採血をして卵巣予備能を測定する方法です。卵巣機能が低下している患者様は、「もう卵子が残っていないのでは……」と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

一般的なAMH検査で測定できる下限値は0.02ng/mLですが、当院ではその下の単位であるピコグラム(pg)を用いて測定しています。(0.02ng/mLは20pgに相当します)。さらに現在は、0.004ng/mLまで測定可能な「高感度AMH検査」を導入しています。

これにより、これまで「数値として測定できない」とされていたレベルまでAMHを把握でき、より正確な状態に基づいた治療選択が可能になりました。

また、これまでAMHは、「一度下がると上がらないもの」と考えられてきましたが、高感度AMH検査により、数値が変動するケースがあることもわかってきています。

実際に、初診時には非常に低い数値だった方が、その後の検査で10倍以上に上昇した例もございます。AMH値が低い場合でも、卵巣高刺激法(ローズ法)を用いることで、採卵や胚の凍結、さらには臨床妊娠に至った実績があります。

当院では、高感度AMH検査を行い、その結果を踏まえて最適な方法を選択することで、採卵の可能性を少しでも高める治療を行っています。

自費診療の卵子凍結。実際にかかる費用と助成金は?

助成制度を確認し、採卵時・保管費・将来の治療費を含めて検討を

――卵子凍結を希望する場合にかかる費用について、教えてください。

卵子凍結は自費診療となるため、費用は医療機関によって大きく異なります。当院での目安は以下のとおりです。

卵子を育てるための薬剤費・検査費:2〜5万円

採卵費用:10〜15万円

卵子凍結費用:凍結する卵子の個数により異なり、1回の採卵あたり約5〜15万円

卵子の保管費用:凍結した卵子の個数に応じ、1回の採卵分につき毎年5〜15万円

将来、体外受精を行う場合の費用:1回あたり30〜50万円程度

治療を検討する際は、採卵時の費用だけでなく、保管費用や将来の治療費も含めて、トータルで考えることが大切です。

――妊孕性温存の公的助成制度についても詳しく教えてください。

条件を満たせば、助成金を利用することができます。ただし、認定された医療機関で治療を行い、がん治療を行う医療機関と綿密に連携していることが必要です。

また、そういった場合、患者さま自身が患者登録システム「JOFR-II」に登録することも求められます。助成金には年齢制限があり、東京都の場合、43歳以上は対象外となります。対象となる疾患や詳細な条件については、各都道府県のホームページ(「がん患者等生殖機能温存治療費助成事業」)で確認してください。

※宮子さんの場合は、順天堂大学医学部附属浦安病院の血液内科と連携しながら治療が行われました。

ローズレディースクリニックは、「東京都若年がん患者等生殖機能温存治療費助成事業」における指定医療機関です。(※卵子凍結・胚凍結は対象、卵巣組織凍結は対象外)

要件を満たす方は費用助成を受けることができます。詳細は「東京都がんポータルサイト」でも確認することができます。

◆将来の妊娠、出産に不安を抱えるがんサバイバーへ

妊孕性温存が、がん治療の大きな支えに

――現在、がんの告知を受け、将来の妊孕性温存について悩んでいる女性に向けて、メッセージをお願いします。

妊孕性温存は、まだ黎明期の状態です。助成金制度も始まってから数年しか経っていません。それでも、「将来に希望を持てること」は、前向きに治療を受けていくための大きな支えになると思っています。

その支えは、ひとつでも多いほうがいい。私たちが、そうした方々の支えになれたら、少しでもお役に立てればという思いで、現在の診療体制を整えています。どうぞ、いつでもご相談にいらしてください。

お話を伺ったのは

石塚 文平 先生(ローズレディースクリニック院長)

プロフィール

ローズレディースクリニック院長。聖マリアンナ医科大学名誉教授。昭和大学医学部卒業後、慶應義塾大学産婦人科、 カリフォルニア大学留学をへて、聖マリアンナ医科大学産婦人科教授、同大学生殖医療センタ一長、同大学高度生殖医療技術開発講座特任教授を歴任、2014年に同大学名誉教授、同年口ーズレディースクリニック院長に就任。早発卵巣不全の研究と治療に長年とり組み、日本国内のみならず、海外からも患者が訪れる。https://roseladiesclinic.jp/

【関連記事】がん治療と将来の出産への希望。37歳で悪性リンパ腫と診断されてから、43歳で母になるまで


《OTONA SALONE》

特集

page top