「漫画のキャラクターが友達だった」アカデミー賞監督クロエ・ジャオと講談社がタッグ「実写とアニメ、両方とも一緒に作れば」 | NewsCafe

「漫画のキャラクターが友達だった」アカデミー賞監督クロエ・ジャオと講談社がタッグ「実写とアニメ、両方とも一緒に作れば」

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Kodansha Studios 設立発表会見
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講談社が、アカデミー賞受賞監督のクロエ・ジャオ、プロデューサーのニコラス・ゴンダとタッグを組み、ハリウッドを拠点とする新会社「Kodansha Studios」を設立した。

本スタジオでは、『ノマドランド』で脚本・編集・製作・監督を務め第93回アカデミー賞の作品賞、監督賞、主演女優賞の主要3部門を独占したクロエ・ジャオ監督が最高クリエイティブ責任者(Chief Creative Officer)として企画やクリエイティブを統括。

クロエ・ジャオと共に制作会社「Book of Shadows」を共同創業し、数多くの映画やTVドラマを手掛けてきたプロデューサーのニコラス・ゴンダがCOOに。

また、講談社専務取締役の森田浩章がCEOに就任。本スタジオを通じ、日本で出版された多種多様なマンガや小説の海外実写映像化およびグローバル展開において、より主体的な役割を担っていくという。

「漫画、アニメという共通項で、すぐに意気投合」
会見で「Kodansha Studios」最高クリエイティブ責任者に就任することとなったクロエ・ジャオは「本当にワクワクしていて、今日はとても嬉しい機会です。わたしは子どもの頃から深く日本の漫画やアニメを愛してきました。ですから本当にこのような機会をいただけて光栄です」とあいさつ。

同COOに就任したニコラス・ゴンダも「特に講談社さんのように、100年以上の長い伝統、そして素晴らしいクリエイティビティを育み、保ってきた会社とご一緒させていただけることを心から光栄に思っております」と語った。

そして、「Kodansha Studios」が設立について講談社代表取締役社長の野間省伸は、「これまでは日本のIP、原作の権利を海外の企業にお渡しして、そこから企画・制作・プロモーションなどをすべてお任せするような形でしたが、今回、我々が制作会社を設立することによって、そういったところに深く関与していって。日本のIPを、そして日本のクリエイターを世界に広めていく。またこういった海外の素晴らしいクリエイターの方々とコラボレーションをして、ある種、化学反応を起こして新しいコンテンツを作っていく。そういったことを目指したいと考えております」と話した。

野間氏とクロエ・ジャオがロサンゼルスで会ったのは2年半ほど前のこと。漫画、アニメという共通項で、両者はすぐに意気投合。

「もちろん彼女が、アカデミー賞で監督賞を受賞した著名な監督であることは存じ上げておりましたし、日本の漫画が大好きだということも存じ上げておりましたが、実際にお話をしてみますと、本当に漫画が大好きで。中国にいた子ども時代からずっと漫画を読んでいたこともあり、漫画に対する愛情、深い造詣を持っている人だなと感じました」と野間氏。

さらに、その場でクロエ・ジャオから「アニメもぜひつくりたい」という話が飛び出したといい、野間氏も「実写とアニメ、両方とも一緒に作ればいい」と提案。「彼女からは『それはimpossible(不可能)なこと』だと言われたのですが、講談社は英語で“Inspire Impossible Stories”というスローガンを掲げていることもあって、“We're here to make impossible stories”と言ったら、彼女が大層喜んでくれて。そこから仲良くなっていきました」と経緯を説明。

その後、ニコラス・ゴンダとも食事をしたり、ゲームをしたりと親しく付き合いをするに至り、「非常に良い信頼関係を築けているのではないかと思っております」と付け加えた。

クロエ・ジャオが掲げる新スタジオ「Kodansha Studios」3つのポイント
「Kodansha Studios」に望むものについて、クロエ・ジャオは3つのポイントを掲げる。

「まず1つ目は東と西の懸け橋となること。異文化間の理解を促進するということ。わたし自身、子ども時代からそれを成し遂げたいという思いがありました。そして2つ目は、Kodansha Studiosに“庭”として機能してほしいということです。映画作家として、ストーリーテラーとして、わたしがいつも望むものは安心できる場所です。作家、作品、アイデアがそこから発展して、そして外からの変革や情勢に左右されることなく守られる場所として機能させてほしい。つまり日本の作家と海外のクリエイターたちが共に植物を強く育て上げ、そこから巣立つことを助けられるような役割を担うことを期待しています。最後に3つ目は、野間社長と知り合った時に、彼の勇敢さに非常に魅せられたのです。不可能なことに果敢に挑んでいく。ですからわたしは彼に『Mr. Impossible』というあだ名をつけたのです。その精神をKodansha Studiosに取り入れて。果敢に取り組んでいきたいという思いがあります」という。

改めてクロエ・ジャオに、日本のコンテンツへの思いを尋ねたところ、「日本のコンテンツは、まさにこのわたしの血と肉をつくったと言えます。漫画だけではありません。小説、アニメ、同人誌といったすべてに影響を受けました」とコメント。

「わたしは孤独な子どもでした。ですから漫画の中のキャラクターが友達だったのです。それはわたしだけではなく、世界の多くの人に共通する思いだと思います。たとえば漫画のシリーズ、作品がずっと続いていく中で、わたしもその漫画のキャラクターとともに成長していったのです。わたし自身、今はストーリーテラーとして仕事をしていますが、もともとは漫画家を目指していたのです。ただ絵を描くのがあまりうまくなかったということで断念しました」と明かす。

その上で、子どもの頃に漫画から学んだことは陰影だったとクロエ・ジャオは語る。「漫画のキャラクターには明るさ、暗さだけではなくて、グレーのような幅広い表現があります。ですから漫画の中のキャラクターというのは単一的ではなく複雑です。それを日本文化が表すようになったのは、やはり西洋の文化を観察し、それを取り入れ、統合した上でアウトプットをしているからでしょう」と分析。

「そこには人間とは何かといった問いかけがあり、深いレベルで漫画に描かれていました。わたし自身がストーリーテラーとして探求をする何か。埋もれてしまっているものや怖いもの、見えないもの、神秘的なもの、神話的なもの、科学、そういったものをわたしが映画で描こうとしているのも、やはり漫画の世界にわたし自身が何年も生きてきたことが大きな理由になっています」と話した。

日本IPをハリウッド実写化へ「作家を尊重することは、ハリウッドにとっても健全」
「我々は今までさまざまな作品が映画化される上での困難というのを目の当たりにしてきました。そしてそれはわたし自身も経験してきたことですが、その大きな要因は東西文化における理解不足と言えるかと思います」とクロエ・ジャオ。

「知らないものへの恐れというものもあるでしょう。ただそれを超えて、両者は強く求め合っている。そもそも文明というのはその上に築かれてきたものですから、今回、Kodansha Studiosが“庭”となって、文化、そしてストーリーをつなげる。そうした調和を生み出す、impossibleなものを実現化するということは、今から考えただけで待ちきれないほどに楽しみです」と語る。

さらに「きっとハリウッドも深く影響を受けるのではないかと感じています。ある意味ハリウッドはこれまで違う文化のIPを勝手に解釈して扱ってきたわけです。でもこれからは、作家なり、元々のアイデアに耳を傾け、コラボレーションをして、作家を尊重して、より作家性に近いものをつくるというのは、ハリウッドにとっても健全な形ではないかと感じるからです」と期待を寄せた。

その言葉を受けた野間社長は、今後の展望について、「ハリウッドの実写作品に関しては、クロエやニックたちがやっている『Book of Shadows』の皆さんという非常に力強いパートナーを得られました。その中で我々としては、これまであまり知られていなかった日本の数多くのIPを、より多く世界に広めていくということをまず目指したいと思っています。また日本の漫画家、作家といったクリエイターと、海外の監督や俳優に限らず、さまざまなクリエイターが出会うこと、コラボレーションすることによって、新しいコンテンツ、新しい表現方法が生まれてくることを期待しています」と話している。
《シネマカフェ編集部》

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