腸活で思い浮かべる食材といえば、ヨーグルトなどの発酵食品と答える人が多いのではないでしょうか。実は、くるみも腸内環境を整えるためにおすすめの食材なんです。体によい栄養素がギュッと詰まったくるみは、腸活だけでなくアンチエイジングや認知症予防にも効果があるそう。カリフォルニアくるみ協会本部科学顧問のレイチェル・ブレイン博士にくるみの効果について教えてもらいました。
くるみで空腹感が消える⁉ダイエットのお供にもおすすめ

カリフォルニアくるみ 協会本部 科学顧問 レイチェル・ブレイン博士
くるみにはタンパク質や食物繊維、脂質や葉酸、ビタミン・ミネラル、ポリフェノール、抗酸化物質などが含まれています。脂質=太ると思うかもしれませんが、くるみに含まれる脂質は多価不飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、オメガ3脂肪酸など、ヘルシーなもの。
とくにオメガ3脂肪酸を含むα-リノレン酸は、心疾患で死亡するリスクを低下させるほか、心疾患以外の原因による死亡リスクの低下や抗炎症効果、アルツハイマー型認知症を減少させるなどの効果もあります。また、多価不飽和脂肪酸には満腹感をアップする効果があるので食欲が抑えられ、体重コントロールに役立つといううれしい効果も。
さらに、くるみには抗酸化作用のあるポリフェノールや皮膚を健康にするビタミンEなども含まれるので、アンチエイジングにも効果的なのです。
腸内の悪玉菌を抑制。おなかもスッキリ!
くるみに含まれる食物繊維や不飽和脂肪酸、ポリフェノールは、腸活に効果絶大。腸内には細菌叢があり、消化しきれなかった栄養素を分解し、変化させる働きがあります。
食物繊維は腸内細菌によって分解されて「短鎖脂肪酸」になります。この名前をメディアなどで聞いたことがあるという人もいるかもしれません。短鎖脂肪酸はph(酸性・アルカリ性の度合い)をととのえる働きがあり、酸性に弱い腸内の悪玉菌が増えるのを抑えて、大腸がんの原因となる物質ができるのを防ぎます。加えて、腸の蠕動運動も活発にして便秘を予防する効果もあります。
さらに不飽和脂肪酸も、大腸がん予防に役立ちます。食べたものは消化され、それをエネルギーに変えるために「一次胆汁酸」が出されます。腸内のいくつかの細菌は、さらに一次胆汁酸を二次胆汁酸に変化させますが、二次胆汁酸には炎症を促進する作用があり、大腸がんの原因を作ります。くるみに多く含まれる不飽和脂肪酸は、この二次胆汁酸を減少させるのです。
くるみを食べると睡眠の質もアップ!
食べるものと睡眠は、お互いに影響を与え合っています。例えば、睡眠不足になると疲れてなかなか起きられなかったり、仕事や家事の途中で眠気が襲ってきたりしますが、満腹中枢を刺激するホルモンが分泌されて、食欲増加も招きます。その結果、過食したり、高カロリーな食事や間食が増えて、体重が増加することも…。
実は、くるみは睡眠の質も高めてくれる食べ物。睡眠を促すホルモン・メラトニンを含むだけでなく、くるみに含まれるトリプトファンが体内でメラトニンに変化するため、くるみを食べている人は寝つきが良くなり、睡眠の質が向上して昼間の眠気が減少するそう。ただし、トリプトファンは体内では作れない「必須アミノ酸」の一つなので、気持ちの良い眠りを手に入れるには、毎日食べ物から取り入れることが大切だといいます。
また、くるみの食物繊維が大腸で細菌叢のエサとなり、気持ちを落ち着かせるホルモン・セロトニンを増やします。それによって気持ちが安定するので、ストレスで過食に走ることもなくなり、暴飲暴食なども減るのだとか。
毎日、一つかみのくるみを食べよう
くるみを使った食べ物でよく見かけるのはくるみパンですが、そのほかにどんな食べ方があるでしょうか。
レイチェル・ブレイン博士は、毎日の食事にいろいろな形で取り入れているといいます。
「オートミールやヨーグルト、サラダにくるみを入れるほか、そのままおやつとしても食べています。腸内の細菌叢はそれぞれに分解できるものが違うので、ヨーグルトならブルーベリーと組み合わせたり、サラダなら葉物野菜にトマトやにんじんなどと組み合わせるなど、いろいろな食材と組み合わせるのがおすすめです。
もう1つお伝えしたいことは、細胞の修復や回復、皮膚の老化を防ぐ“ウロリチン”を作り出せるのは日本人の約半数だということ。ベリー類やザクロなど、ウロリチンを含む食材と組み合わせるといいでしょう」
くるみは、世界各国でもさまざまな料理に使われています。「世界くるみサミット2025」では、ミートボールや鶏肉のいため物、ウサギ肉のライス、トマトシチュー風からパイで包んだお菓子まで、アメリカやインド、韓国、トルコ、ドイツ、スペイン、イギリスなどの料理が紹介されていました。日本の料理として紹介されていたのは、くるみ入りおはぎといなり寿司。あんこやいなり寿司にくるみの香ばしさが加わり、食感も楽しめる一品でした。
くるみは1日に25~30g、だいたい片手でひとつかみできるぐらい食べるとよいそうですが、「いきなりそんなに食べられない」という場合は、まずは2~3粒からでもいいといいます。スナックとして、料理のトッピングや食材として、今日から健康効果抜群のくるみを取り入れてみてはいかがでしょうか。
【お話】
カリフォルニアくるみ 協会本部 科学顧問
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校 栄養学・食事療法学 准教授
レイチェル・ブレイン博士
米国管理栄養士としての資格を持ち、ハーバード公衆衛生大学院で公衆衛生栄養学の博士号を取得。肥満予防や健康的なライフスタイルに関する研究論文を数多く執筆し、2021年には米国栄養士会から優秀栄養教育者賞を受賞。国際的な学術誌『International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity』の編集委員も務める。
撮影(博士)/高井潤 取材・文/荒木晶子