2022年に急逝した河村光庸プロデューサーの企画である「港のひかり」は、自分の人生においてもとても意味のある作品になりました。『自己犠牲』をテーマに描かれる本作は、「ヤクザと家族 The Family」以来、常に気をかけてくださっていた舘ひろしさんを主演に迎え、北陸・能登半島の美しい景色と地元の皆さまのお力で完成した日本映画です。そして木村大作さんとの共同作業も、発見と勉強の連続で、沢山の偉大な背中を見せていただきました。ロケーションへの敬意、撮影現場での情熱、そして何より映画への愛。そのすべてが、デジタルによって便利に、そして簡易になった現代へのメッセージともとれる大作さんの哲学を感じました。35mmフィルムでの撮影、モニターのない撮影現場のスタッフ、キャストの集中力は凄まじく、「先輩たちは、この集中力の中で映画を作っていたのか」と圧倒されました。大作さんはじめ、美術の原田満生さん、音楽の岩代太郎さんなど、日本映画を代表する先輩方と若輩者の藤井組が一つの集合体となり、「港のひかり」を作れたこと、誇りに思います。そして、何より主演の舘ひろしさんが現場の中心に立って下さり「監督、楽しんでますか?」といつも優しく声をかけてくれたことが、毎日の心の支えでした。日本映画界の未来といっても過言ではない尾上眞秀くんも、素晴らしい演技でスクリーンを彩ってくれています。本作公開まで是非楽しみにしていてください。そして撮影地でもある、北陸地方の皆さまの一日でも早い復興を、心より願っています。