東日本大震災から14年。地震のほかにも、豪雨、台風、大雪など自然災害が相次いでいますが、みなさん、食料備蓄はしていますか? 賞味期限、切れていませんか?
「用意しているけど、重くて持ち出せない」「避難所でもらえばいいのでは?」・・・どちらも大間違いです! そもそも持ち出し用リュックに入れる備蓄と、ライフラインが断たれた自宅で過ごす用の備蓄は別モノ。避難所は場所も食料も物資も不足しがちで、在宅避難が基本です。
備え・防災アドバイザーの髙荷智也さんによれば、「食料備蓄」には3種類あるそうです。
1)避難用の食料・・・数日分程度(走って逃げるための準備)2)短期備蓄・・・最低3日、できれば7日分程度(自宅に留まるための準備)3)長期備蓄・・・1ヶ月分以上の備蓄(食料危機から命を守る準備)
今回は「1)避難用の食料」=防災リュックに入れる食料についてお届けします。
※この記事は、『食料備蓄はじめてBOOK 備蓄ノウハウ55 防災リュック・在宅避難・食料危機まで完全ガイド』髙荷智也・著(
意外と見落としがち! 「防災リュックに入れないほうがいい食べ物」とは?
避難用の食料は、自宅から避難する際に持ち出して、避難先で食べるための食事になります。災害の状況によっては、避難先が慌ただしい環境であったり、停電や断水などが生じていたりする恐れもあるため、
「調理不要でそのまま食べられる」
「常温以下の温度でも食べられる」
「食器不要で食べられる」
上記のものを選択するのがおすすめです。
さらに「におい」にも注意が必要です。災害の規模が大きく避難者が多い場合は、避難所に多くの人が詰めかけます。この状態で「どこでも熱々カレーが作れるセット」を食べるのは人目がはばかられます。
車中泊などであれば問題ありませんが、避難所へ入る場合はあえて目立たない食料を持参するとよいでしょう。
防災リュックは「逃げ遅れ」を防ぐためのアイテム。「重い」のはNGです!
大地震による津波や火災、台風や大雨による洪水や土砂災害など、自宅に留まると命に危険が生じる災害から命を守るためには、避難をすることが重要です。
このとき、非常持ち出し袋……いわゆる防災リュックを作成しますが、ここに入れる食料は「餓死」を防ぐためのものではありません。
すばやい避難が必要となる状況で、防災リュックなどの用意がない場合、逃げるための荷物を作るための時間が発生し避難が遅れます。そこで、事前に避難用の荷物を用意しておくことで、緊急時にすばやく自宅を飛び出せるようにするのです。
リュックに入れる食料は楽に持てる量にしましょう。重すぎて避難が遅れた……というのは本末転倒です。
水と食料は、防災リュックに「最後に入れる」理由。食料を入れるときは最大3 日分
防災リュックに入れるものの中で、最も重量のあるアイテムが水と食料です。大きなリュックを準備した場合、たくさんの道具を詰められますが、水と食料を入れすぎるとリュックが重くなりすぎ、持ち上がらなかったり、すばやく行動できなくなったりという弊害が生じます。
そのため、まずは避難のために欠かせないアイテムをリュックに入れ、その後楽に背負える範囲内で水と食料を追加するのがよいでしょう。
リュックに荷物を詰めてみたら、実際に背負って重さを確認してください。できれば地域やマンションの防災訓練の際に、最寄りの避難場所・避難所まで歩いてみると確実です。
避難所のキャパは、住民のたった1~2割。「避難所に行けばだいじょうぶ」という考えは危険すぎ!
避難所は宿泊施設ではありません。屋根と床以外は自分で持ち込みます。避難先には、命を守るための「避難場所」と、生活をするための「避難所」があります。
避難場所は津波避難タワーや運動場などの屋外が指定されることもあり、原則として全住民を収容できるようになっています。
一方、自宅を失った人が一時的に身を寄せる避難所は、学校の体育館などの屋内ですが、住民の1 ~ 2 割分程度の収容数しかなく、場所も食料も物資も不足しがちです。
避難所へ行けばなんとかなるというのは危ない考え方で、外部の支援が始まるまで屋根と床以外は自分で準備しなければなにもない、という可能性もあります。リュックが重すぎるのは問題ですが、手ぶらで避難所へ行っても困る、ということは知っておいてください。
リュックに入れる飲料水、500サイズのペットボトルがベターなのはなぜ?
避難用のリュックが重くなる最大の原因は、飲料水の入れすぎです。大きなリュックを準備するとたくさんものが入るため、隙間に水のペットボトルなどをたくさん入れたくなりますが、これで重量が増えすぎて避難が遅れるのでは意味がありません。
飲料水を入れるのは最後にして、持ち運べる範囲内で調整しましょう。リュックを定期的に点検できるなら、安価な水を。そうでなければ長期備蓄水を入れると管理が楽です。
なお、2サイズのペットボトル水を入れると、これを飲むためのコップなどが必要になります。そのまま飲める500のペットボトル水が便利です。ただし、口をつけたボトルを長期間保管すると雑菌が繁殖するため、1 日程度で飲みきるようにしてください。
また、避難所で給水を受けるために、折りたためる給水バッグなどを追加してもよいでしょう。大型の水タンクは、避難用ではなく自宅に留まる在宅避難用に使用してください。
★ここまでは、防災リュックに入れる食料についてお届けしました。【関連記事】では、「2)短期備蓄」=自宅避難時用の食料についてご紹介します。
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■BOOK:『食料備蓄はじめてBOOK 備蓄ノウハウ55 防災リュック・在宅避難・食料危機まで完全ガイド』髙荷智也・著
■著者略歴:髙荷智也(たかに・ともや)
合同会社ソナエルワークス 代表、備え・防災アドバイザー。1982 年、静岡県生まれ。「自分と家族が死なないための防災対策」と「企業の実践的BCP 策定」のプロフェッショナル。備え・防災・BCP 策定に関する、講演・コンサルティングで日本全国を飛び回る。大地震や感染症パンデミックなどの防災から、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく伝えるアドバイスに定評があり、メディア出演も多い。著書に『中小企業のためのBCP 策定パーフェクトガイド』(Nanaブックス)、『今日から始める本気の食料備蓄』、『今日から始める家庭の防災計画』(徳間書店)などがある。