“脳がストレスを感じていると、さらに太りやすくなってしまう”ということをご存じですか?
更年期の女性は、仕事のプレッシャーや思い通りにいかない子育てなど、日々何かとストレスを感じやすいもの。
でも、少しの工夫でストレスの感じ方を軽減できれば、ストレス太りを回避できるそうなのです。
今回は、更年期、脳疲労、ダイエットの関係について研究を重ね、著書や学会などで発表を行ってきた婦人科・心療内科の横倉恒雄先生に2回にわたってお話を伺いました。
1回目の本記事では、ストレスがなぜ太りやすさにつながるのかについての解説をお届けします。
ストレスによる「疲弊脳」が引き起こす不調とは?
みなさんは、日ごろどのようなストレスを感じていますか?
家事や育児、パートナーとの関係、親の世話、そして仕事にまつわる人間関係――ストレスの原因はあちこちに潜んでいますよね。
さらに、現代人に特有の「情報過多」も、脳が疲れる大きな要因の一つ。現代の1日分の情報量は、なんと平安時代の人の一生分に匹敵するといわれているんです。
「ストレスは心身に負担をかけるだけでなく、脳にも大きなダメージを与えるんですよ。
その理由はとてもシンプルです。ストレスが過剰になると、脳の理性をつかさどる部分がオーバーヒートしてしまい、ストレスを通常よりも何倍も強く感じるようになるんです。
その結果、交感神経の緊張状態がつづき、心身にさまざまな不調が現れるのです。このような状態の脳を『疲弊脳』と呼びます」と横倉先生。
ストレスによる脳への負担が、さらなる悪循環を引き起こしてしまうのですね。なぜ脳が疲れると身体にも不調があらわれるのでしょうか?
「それは、健康の司令塔である脳がうまく指令を出せなくなってしまうからです。
疲弊脳になると、脳に余裕がなくなるために体内のさまざまなシステムが正常に指令を送れなくなり、その結果、『太りやすい』『生活習慣病』『更年期の不調』『不眠』『自律神経の乱れ』など、さまざまなトラブルを引き起こしてしまうんです」(上記イラスト・右側の状態)
「反対に、ストレスを軽く受け流し、平穏な気持ちを保ちながら生活できていると、副交感神経がいつも優位に働き、心身の機能も正常に整います。
その結果、体の調子が良くなり、物事がスムーズに進むようになるのです。このような、健康で幸せを感じられる脳の状態を私は『健幸脳』と呼んでいます」(上記イラストの左側の状態)
更年期太りとストレスの関係は?
更年期世代の私たちは、ストレスによって太りやすくなると聞きますが、それはいったいどうしてなのでしょうか?
「更年期になると、ホルモンバランスの変化や代謝の低下、筋肉量の減少などが重なり、そもそも太りやすい傾向があります。そこに、更年期世代特有のさまざまなストレスが加わって脳がオーバーヒートすると、そのストレスを解消させようと満腹中枢が過剰に働くようになります。
その結果、食欲や栄養吸収が高まり、代謝も落ち、体重増加につながっていくんです」と横倉先生。
ストレスが、更年期の太りやすい状況をさらに悪化させてしまうのですね。
「疲弊した脳の状態になると、食欲を適切にコントロールする指令がうまく出せなくなります。
そのため、食欲中枢が乱れ、ストレス解消のために『甘い物をやたらと食べたくなる』『脂っこい物やしょっぱい物を欲してしまう』『お腹がいっぱいなのに食べ続けてしまう』といった状態におちいりやすくなるのです」と横倉先生は説明します。
“イライラしたり、物事がうまくいかないとき、つい無性に何かを食べすぎてしまう……”
これ、みなさん、身に覚えありませんか?
そんなとき、食欲と脳の関係はどうなっているのでしょう。
「現代人は、日々、大量の情報を脳で処理しており、この情報過多もストレスの大きな要因になっています。
たとえば、空腹を感じてから食事をとるのではなく、時間に追われて急いで食べたり、『これが健康に良い』という知識を基に食べることも多いですよね。
お腹が空いたと感じたり、食べ物の匂いや味を思い浮かべながら『これが食べたい』と思うなど”五感に基づいた自然な食事”でなく、情報に頼った食生活を送りがち。
その結果、食欲中枢(脳)が満足感や心地よさを得られなくなることが、ストレス太りの一因となっているのです」と横倉先生。
つまり、食事を五感で楽しむことが、脳に満足感を与え、ストレス太りを防ぐ大きなポイントとなるのです。
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お話を伺った先生
婦人科・心療内科医
横倉恒雄先生
医学博士。横倉クリニック(東京.田町)院長。慶應義塾大学医学部産婦人科入局。東京都済生会中央病院産婦人科に勤務、同病院にて日本初の「健康外来」を創設。病名がない不調を抱える患者さんにも常に寄り添った診察を心がけている。クリニックで行っている講座も好評。著書に『脳疲労に克つ』『心と体が軽くなる本物のダイエット』他