「ヘアロス」という言葉を知っていますか? 言葉通り、脱毛症などで髪の毛を失うことを指します。よく耳にする「円形脱毛症」は、代表的な脱毛症のひとつです。円形脱毛症以外にも「男性型脱毛症」「女性型脱毛症」などさまざまな脱毛症があります。ヘアロスは外見に大きく影響することから生きづらさを抱えていたり、周囲に伝えづらくひとりで悩んでいる場合が少なくないのが現状です。今回は「女性型脱毛症」について、脱毛症外来のある東京医科大学の入澤亮吉先生に伺いました。
ヘアロス #3
女性型脱毛症とは?
女性型脱毛症は、女性の男性型脱毛症、FAGA(Female AGA)、FPHL(Female Pattern Hair Loss)ともいいます。男性とは違って50~60歳代に多く、いわゆる更年期以降に悪化します。
男性は前頭部から頭頂部にかけて目立つような薄毛の分布になりますが、女性の場合、前頭部から頭頂部、さらに側頭部のボリュームが減っていきます。頭頂部の広い範囲が薄毛になりますが、後頭部は正常、側頭部の毛髪は比較的保たれるのが特徴です。
初期には「分け目が目立つようになった」、「地肌が透けて見えるようになった」、「髪のコシが弱くなった」、「抜け毛が増えた」などと感じて自覚することが多く、徐々に進行していきます。
女性型脱毛症の原因
加齢により女性ホルモンのエストロゲンの分泌量が急激に減少し、髪のボリュームが減っていきます。男性ホルモンの影響ははっきりしていません。
過度のダイエットや鉄・亜鉛などのミネラル不足による休止期脱毛症(一時的に頭部全体の脱毛量が増える)、甲状腺疾患などの全身疾患、間違ったヘアケアなどが合併していて薄毛を悪化させていることも少なくありません。
>>女性型脱毛症の治療法は?
女性型脱毛症の治療法
女性型脱毛症に対する有効な治療法は確立していません。休止期脱毛症などの原因がある疾患が合併している場合はその原因を排除することで、かなり改善させることができます。ミノキシジルは毛乳頭細胞に働きかけることで毛の成長を促す効果があり、女性型脱毛症の治療に有効です。
【外用薬(育毛剤)】
1%ミノキシジル外用薬(国内承認薬、保険適応外の自費診療)。
薬局で購入できる製品では、【第1類医薬品】大正製薬「リアップリジェンヌ」
【内服薬】
スピロノラクトン、ミノキシジル内服(国内未承認薬、自費診療)。
※ミノキシジル内服は、欧米では一般的に使用されていますが、本邦のガイドラインでは「利益と危険性が十分に検証されていないため、男性型脱毛症・女性型脱毛症ともに行わないよう強くすすめられる」と記載されています。使用を検討する際には正確な知識を有する医療機関で、充分な説明を受けたうえで使用することをおすすめします。
注意:女性型脱毛症の外用薬にしても、内服薬にしても、やめるとその効果がなくなり、もとに戻ってしまいます。継続することが重要です。
【ウィッグ・かつら】
かつらを使用することで、脱毛が悪化することも治療への影響もありません。
生活で注意すべきこと
バランスのよい食事、適切なヘアケア、禁煙
脱毛症はさまざまタイプがあり、原因も複雑です。「自分は●●脱毛症だ」と決めつけず、心配な場合はできるだけ早く皮膚科を受診しましょう。
加療してもなかなか毛が生えてこないと不安になります。でも”毛髪ビジネス”には気を付けてください! 特にすぐれた発毛効果がないのに、効果があると謳って過剰な料金を請求するグループもあるので気をつけてください。
※日本皮膚科学会に基づいた診療
※病院によって、治療法が異なることもあります
監修:東京医科大学病院皮膚科、入澤亮吉先生
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本性感染症学会認定医。日本皮膚科学会東京支部代議員、日本皮膚悪性腫瘍学会評議員、日本褥瘡学会評議員。1988年東京医科大学卒業。同大学病院皮膚科病棟医長を経て、2021年より東京医科大学病院皮膚科 講師。特定非営利活動法人 円形脱毛症の患者会 監事