厚生労働省は2024年12月24日、10月分の人口動態統計速報を公表。年間出生数の70万人割れが現実味を帯びてきた中、育児支援サイトを運営するベビーカレンダーは、1人以上の子供を出産した経験がある会員を対象に実施した妊娠・出産への意識調査の結果を公表した。 厚生労働省の2024年10月分の人口動態統計速報値などをもと計算した結果、2024年の出生数は68万7,081人となる見込み。昨年の出生数72万7,288人(確定値)よりも5.5%程度減少する見通しとなった。日本における外国人や外国における日本人、前年以前に発生した出生も含むが、日本における日本人のみを集計した概数値でも、上半期(1~6月)の出生数が前年同期比6.3%減の32万9,998人にとどまり、年間出生数の70万人割れが現実味を帯びてきた。 育児支援サイト「ベビーカレンダー」は、2024年11月に1人以上の子供を持つ432人の会員にアンケート調査を実施。その結果、希望人数の子供を持てない理由としては「経済的な理由」(32.7%)、「年齢的な理由」(28.9%)、「健康上の理由」(20.8%)、「仕事上の理由」(20.1%)が上位にあがった。2022年10月にも同様の調査が行われたが、当時も約3割の人が経済的不安を理由に希望人数の子供が持てないと回答しており、妊娠・出産を取り巻く環境は大きく変わっていない。 一方で、年齢を重ねるにつれて妊娠・出産へのリスクや体力面に不安を感じる人も多い。希望人数の子供を持てない背景には、経済面だけでなく晩婚化・晩産化も影響している。特に30~34歳の年代では「希望していた人数より少ない」と答えた人がもっとも多く、43.1%にのぼった。 さらに、「第1子の妊娠に至るまで、想定よりも時間がかかりましたか?」との問いに「はい」と答えた人の19.2%が、想定と実際の妊娠時期に3年以上の開きがあったと回答。日本生殖医学会によれば、女性は30歳から妊娠する力が低下し、35歳を過ぎるとその傾向が顕著になるという。妊娠力が下降すれば、不妊症のリスクも高まる。 山王病院名誉病院長の堤 治先生は、日本の妊活事情や不妊治療の現状について解説し、脱・少子化を目指して成功率を高める妊活のヒントを探ることが重要だと述べた。卵子は胎児のときに作られ、出生後新たに作られることはなく、減る一方である。特に37歳を過ぎたころからそのスピードは加速し、質も低下していくという。 同時に堤先生は「プレコンセプションケア」の重要性を強調。これは女性やカップルを対象に、将来の妊娠に向けて性や妊娠に関する正しい知識を身に付け、健康管理を行う取組みで、日本ではまだ広く普及していないが、正しい性の知識を得ることや自分の体に関心をもつことが大切だと述べている。 また、東京都が2023年に加齢等で妊娠機能の低下を懸念する人に対して卵子凍結にかかる費用の助成制度を導入したことが話題となり、卵子凍結もプレコンセプションケアの一環として注目されている。卵子の老化を食い止め、将来の妊娠の可能性に備える有効な手段として卵子凍結にも期待が寄せられる。 少子化問題の解消は、性教育の充実やプレコンセプションケアの普及がカギになるという。性教育は家庭や学校など身近な環境で自然に吸収することが望ましいが、日本ではまだ堂々と言及しにくいのが実情。今後もベビーカレンダーが発信する情報が少子化対策の一助となることが期待される。