中高大、いずれの受験も「時事問題」は社会科以外にもさまざまな教科で出題される。ネットやTVなどのニュースでよく見聞きする、基本的かつ重要な「キーワード」に関連するトピックスを、「経済」「法と政治」「世界情勢」「社会と技術」「宗教」「現代史」のテーマ別に収録した、池上彰氏の『カラー図解 社会人なら知っておきたいニュースに出るキーワードがすっきりわかる本』は、今の世の中の情報を読み解くために必要な教養を、オールカラーのイラスト図解を使ってわかりやすくまとめた1冊だ。 本記事では受験シーズンに突入するわが子と一緒に学び、考えたい「キーワード」をピックアップし、解説ととも紹介する。今回のキーワードは「アメリカ大統領選挙」について。(本記事は、「カラー図解 社会人なら知っておきたいニュースに出るキーワードがすっきりわかる本」(KADOKAWA)の一部を抜粋・改編し掲載している。本文イラスト・図版/ケン・サイトー)アメリカ大統領選挙はどう行うのか アメリカ大統領選が行われる年になると、連日、選挙戦のニュースを見聞きすることになる。いったいどうやって選ばれているのか?4年に1度の選挙 アメリカでは4年に1度、大統領選挙が行われます。アメリカにはいくつも政党がありますが、共和党と民主党の二大政党が圧倒的な力をもつため、事実上2党の候補者の一騎打ちとなります。ざっくりいうと、共和党は新自由主義的で「小さな政府」を目指す保守政党であり、民主党は貧しい人たちに寄り添い「大きな政府」を目指すリベラル政党です。 2党はまず、それぞれの党の候補者を決めます。具体的には、各州で「代議員」を選出します。代議員とは、両党の全国大会で候補決定の投票を行う代表のこと。選出の方法は2通りあり、1つは党員たちが候補者の名前を書いて投票する選挙方式(予備選挙)で、もうひとつが地区ごとの集会(党員集会)で討論しながら決めていく方法です。州ごとに選挙が行われるのは、各州が独自に強い力をもち、地方自治を重視しているからです。 3月初頭の火曜日には、10以上の州で予備選挙が同時に開かれます。そこで候補者が決まる重大な日となることが多いので「スーパー・チューズデー」と呼ばれます。そのあとに開かれる党大会で、それまでの結果をもとに正式な大統領候補者が決まります。2024年に行われた選挙では、共和党はドナルド・トランプ前大統領が代表候補になりました。民主党は、いったんはジョー・バイデン大統領に決まりかけたのですが、高齢への不安が出て、カマラ・ ハリス副大統領に決まりました。「勝者総取り方式」を採用 11月の第1月曜日の翌日には本選挙が行われます。本選挙も、有権者が候補者に投票しますが、実際に選ばれるのは大統領選挙人です。アメリカは建国当初、読み書きのできない人が多く、国民に代わって見識ある人たちに大統領を選んでもらう仕組みを採用しました。この方式が今も続いているのです。計538人の選挙人は全米50州とワシントン特別区に割り振られていて、一部の例外を除き、州ごとの選挙で1票でも多くの票を獲得した候補者が、その州の選挙人を総取りします。そして、選ばれた大統領選挙人による投票が12月中旬に行われ、過半数の270人以上を獲得した候補者が大統領となります。 この「勝者総取り方式」では、もっとも得票数が多い候補者が当選するとはかぎりません。過去にも、トランプ候補よりも多くの票を獲得したヒラリー候補が敗れるケースが起きています。選挙人投票 12月に行われる選挙人による投票は、年明けの1月に開票が行われます。ただ、選挙人がどちらの候補に投票するかはあらかじめわかっているので、11月の時点で当選者は確定します。 過去には、選ばれた選挙人がそれまで支持していなかった候補者に投票したこともありますが、影響はほとんどありません。 ところで、大統領選挙は多くの州で勝つ政党が決まっています。カリフォルニア州やニューヨーク州では伝統的に民主党が強く、シンボルカラーが青なので「ブルー・ステート」とよばれます。アラスカ州や中西部で支持されるのが共和党であり、シンボルカラーが赤なので「レッド・ステート」 とよばれます。勝敗を左右するのは、 2党の支持率が拮抗する「スイング・ステート(接戦州)」です。 アメリカの大統領が選ばれるまでの道のりは、およそ1年にもわたる一大政治イベント。選挙期間中には、相手候補を厳しく批判するテレビCMも流されます。候補者は厳しいふるいにかけられ、残った者は大統領にふさわしい能力を身に付けていきます。 「アメリカ大統領選挙」のほかにも、さまざまな気になるキーワードをわかりやすく解説している『カラー図解 社会人なら知っておきたいニュースに出るキーワードがすっきりわかる本』。気になるキーワードをきっかけに、親子で知識を共有したり意見を交換したり、「そうだったのか!」と会話を楽しむ時間をつくってみてはいかがだろうか。