
日本で暮らす外国人の増加やインバウンドの拡大に伴い、民泊や交通サービスのあり方などをめぐる話題への関心が高まっています。なかでも、中国人コミュニティや訪日中国人に関するニュースを目にする機会は少なくありません。
中国生まれ、中国育ちで在日9年の中国人YouTuber・むいむいさんは、中国を離れて日本への移住を選ぶ「潤日族」に注目し、その背景にある中国社会の変化や、日本を移住先に選ぶ理由について語っています。
本記事では、むいむいさんが「中国人の視点」をまとめた著書から、日本移住を選ぶ中国人たちのリアルな事情を紹介します。
※本記事は書籍『とある中国人のむいむいの「私たちはどうしても日本にムキになる」: 知っていればイラつかない中国人の39のホンネ』より一部抜粋・編集したものです。
※撮影/岡 利恵子
※イラスト/冨田マリー
YouTube番組『とある中国人のむいむい』とは?
チャンネル登録者数17万人。生粋の中国人でありながら翻訳、通訳をこなすほど日本語が流暢なむいむいが、日中の文化の違いや言語ネタをユーモアたっぷりに発信。日本語を敬愛し、同じ漢字文化圏出身だからこそ導き出せる独自の視点や、機知に富んだ考察を通して、改めて日本語や日本そのものの魅力に気づかせてくれるYouTube番組です。
〈出演者〉
むいむい:浙江省臨海市出身。名字が梅で、愛称「梅梅(むいむい)」。2020年4月にYouTubeチャンネル「とある中国人のむいむい」をスタート。MBTI診断は、INFP型。来日9年目。
民泊、白タク、タワマン爆買い。社会問題化する「潤日族」とは何者か
最近の中国では、不毛な過当競争を指す「内巻き(ネイジャン)」という言葉が使われるようになりました。
この内巻きに疲れ果てた末に、全てを放棄して最低限の生活を送る「寝そべり族」と呼ばれる若者や、中国を脱出して日本へ移住する「潤日(ルンリー)」と呼ばれる中国人が増加していると言われ、中国で深刻な社会問題になっているらしいのです。

もともと「潤」という漢字には「潤う」という意味がありますが、英語の「Run(ラン)」の発音に似ていることから、近年「脱出」という意味でも使われるようになり、「中国社会から逃げるように日本へ移住してくる中国人」を潤日と呼ぶようになったそうです。
昔は、日本へ来る中国人の多くが出稼ぎや経済的な成功を目的としていましたが、今の潤日の人たちは、いわゆる富裕層で、勝ち組が中心です。
中国の進学や就職における競争の中で生きるより、日本の大学を卒業して日本企業に勤める方が確実と考え、子どものために移住してくる家族や、締め付けが厳しくなった中国から膨大な資産や身の安全を守るために移住してくるケースも多いのだそうです。
日本は500万円程度の出資でも会社を設立すれば、比較的スムーズに在留資格を取得できるため、富裕層にとっては移住のハードルが低いことも、日本に来る理由の一つになっていると思います。
こうした潤日族の動きに対して、日本では「投資目的で都心部のタワーマンションや国内の土地を現金で爆買いしている」「高級住宅街で中国人同士のネットワークを構築し、リトル・チャイナのような経済圏を作りあげている」といった話も聞かれます。
さらに、中国人観光客向けの無許可の「白タク」や民泊サービスが問題視されている――そんなニュースも最近よく見かけます。
私は日本で生活していても、移住を目的とした潤日の人たちと接する機会がないので、正確な実情はわかりません。ただ、彼らはあくまで富裕層ですし、日本人のみなさんが想像するようなマナーの悪い中国人とは少し違うと思います。
とはいえ、移民が少ない日本に、文化や価値観の異なる中国人たちが急増すれば、受け入れる側の日本人が違和感を抱いてしまうのも当たり前。だからこそ、特に中国と日本においては、お互いへの理解が欠かせないのだと思います。
それは、ただ一方的に「日本人のみなさんに中国を理解してほしい」と押し付けることではありません。
まずは中国人が日本人に理解してもらうために、もっと日本のことをよく知り、理解しなくてはならないし、それができれば、お互いにもう少し距離が近づいて、仲良くなることもできるんじゃないかと思うんです。
でも、どうしても一方的に求めてしまって、なかなかうまくいかない。だから私は、「日本人にもっと理解してほしい」とか、「中国はこうなんだ!」と強くアピールしたり、事情を発信しすぎたりしてはいけない、と思っています。
「あの人、中国人なのに日本のことをめちゃくちゃ理解しているな。なんでだろう?」「そういう中国人もいるらしい。じゃあ、そもそも中国人ってどういう人たちなんだろう?」
そんなふうに、自然と興味を持ってもらえる流れを、なんとなく待っているところです。まぁ、これを言っちゃったらネタバレなんですけどね(笑)。
ここまでの記事では、日本への移住を選ぶ「潤日族」の実情を通して、中国社会の変化や、お互いを理解するためのヒントをご紹介しました。つづく関連記事では、日本での暮らしに慣れた著者が母国へ帰省して気づいた、日本と中国の文化や習慣の違いについて紹介します。
つづき>>日本に慣れた中国人が母国へ帰ってびっくり!「いただきます」がない?待ち合わせは30分遅れ?逆カルチャーショックの正体とは
■著者:とある中国人のむいむい (とあるちゅうごくじんのむいむい )
むいむい(梅梅)。 中国浙江省臨海市出身。職業:中国人。 ユーチューバー、翻訳、通訳、バイリンガルMC、動画クリエイターなど。 幼少の頃から、日本のアニメやドラマ、漫画などのコンテンツに触れて育つ。次第に日本語そのものに興味を持ち始め、高校から独学で日本語の勉強を始める。 中国国内の大学の芸術学部グラフィック学科に入学。学生時代に日本語能力試験N2、N1を取得。 卒業後、北京でAmazon kindle部門や広告会社、日本国際交流基金など、さまざまな職を経験しながら日本語の勉強を続ける。 2018年に来日。東京アナウンス学院に入学。 2020年4月YouTubeチャンネル「とある中国人のむいむい」を開設。 2026年3月現在、番組登録者数16.2万人。SNS総フォロワー数は18万人を超える。 MBTI診断はINFP型。漢字検定準2級、日本語能力試験N1、実用日本語検定SA認定の資格を持つ。




