「大勢人を殺すっちゅうことだで」母の言葉と裏腹に暗転・変貌する秀吉(池松壮亮)――信長の死で分かたれた道 | NewsCafe

「大勢人を殺すっちゅうことだで」母の言葉と裏腹に暗転・変貌する秀吉(池松壮亮)――信長の死で分かたれた道

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「大勢人を殺すっちゅうことだで」母の言葉と裏腹に暗転・変貌する秀吉(池松壮亮)――信長の死で分かたれた道

*TOP画像/秀吉(池松壮亮) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』31話(8月16日放送)より(C)NHK

戦国時代のど真ん中を舞台にした『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の主人公は仲野太賀が演じる豊臣秀長。兄弟の絆で“天下統一”という偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡を描いた大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の第31話が8月16日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。

市と秀吉の決意……信長の死により“別れた道”

『豊臣兄弟!』の第31話「これで、お別れにございます」は、互いに深く信頼し、慕い合う者同士であっても、個人的な感情だけでは関係が成り立たない現実を、秀吉(池松壮亮)と市(宮崎あおい)を通して鮮やかに描き出した回でした。

秀吉は家臣団の中で孤立するも、我が道を暴走

第30話「清須会議」において、織田家の当主に三法師(清水伊織)を据え、3歳の三法師を秀吉、柴田勝家(山口馬木也)、丹羽長秀(池田鉄洋)、池田恒興(堀井新太)が補佐する体制が決まりました。しかし、秀吉は3人を出し抜き、一段上の地位を獲得。この3人を含む織田家の家臣の中には、秀吉に怒りを抱く者も現れ、秀吉は孤立に追い込まれていきます。

また、市と勝家は秀吉の勧めもあり夫婦となりましたが、そこにも秀吉の自分の利益のためのねらいがありました。“織田家と縁戚になれば盤石”になると勝家に説いた秀吉ですが、この言葉の裏には勝家の安泰だけでなく、自らの身を守るための目論見が潜んでいたのです。

黒田官兵衛(倉悠貴)はこの点を早くから見抜いていました。官兵衛は「殿と小一郎殿は お市様とは親しき仲。何かの時には お市様が間に立ち 柴田殿を いさめてくれることでしょう」と、小一郎(仲野太賀)と蜂須賀正勝(高橋努)に秀吉の考えを説明していました。

正勝が「おい。まるで殿が 柴田殿と 事を構えるような物言いではないか」とおどろき、小一郎が「今は 身内で争ってる場合ではござらぬ」と返すと、秀吉は「柴田殿と争うつもりなどない。わしはの」と静かに返答。秀吉は落ち着いていたものの、瞳には確かな覚悟が宿り、遠からぬ将来に何が起きるかを予見しているようにも見えました。

そんな折、信長の三男・織田信孝(結木滉星)が安土城の修繕を理由に三法師を岐阜城へ連れて行き、手放さない事態に……。官兵衛が問題は信孝の一存でないと察すると、秀吉は市に文を送りました。

「もし万が一にも 殿が関わっているようであれば すぐ手を引くよう おいさめしてくだされ」と書かれた文を勝家の前で読み上げると、勝家はばつが悪そうな顔をしつつ、怒りをあらわにしました。勝家が「ぬけぬけと。先に勝手なまねを やり始めたのは あやつの方ではないか」と声を荒げると、市は「それゆえに 私は ここにいるのです」と静かに、しかしどこか力強くにつぶやいていました。

勝家(山口馬木也) 市(宮崎あおい) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』31話(8月16日放送)より(C)NHK

秀吉は大徳寺での信長の葬儀に重臣がほとんど集まらぬ中、養子の秀勝(柊木 陽太)を喪主に据え、葬儀をほぼ独断で執り行いました。さらに、「喪主である秀勝は 亡き上様より賜った大事な我が息子。織田家との何よりの絆でござりまする。その秀勝に成り代わり この秀吉 方々に心より御礼申し上げまする」と堂々と挨拶します。

秀吉(池松壮亮)ほか 大河ドラマ『豊臣兄弟!』31話(8月16日放送)より(C)NHK

小一郎や家臣たちの諫言(かんげん)に耳を貸さず、独断専行で突き進んだ秀吉。さらに葬儀での挨拶は、織田家において自らがもっとも権力を握っていることを、あからさまに誇示する内容でした。長秀は秀吉に“屈服”し、味方に最終的についたものの、勝家、前田利家(大東駿介)をはじめとする多くの家臣の信用を失いました。

織田家の“誇り”を守るために生きることを決めた市

市は「兄上が目指した世を 自らの手で なそうとしておるのじゃ」「そのためなら 織田をも滅ぼす覚悟であろう」と、勝家に秀吉の企みを説明していました。市は秀吉が信長の世継ぎをねらう企みを勝家に明かし、勝家とともに戦うつもりである意向を示します。

市(宮崎あおい) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』31話(8月16日放送)より(C)NHK

勝家(山口馬木也) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』31話(8月16日放送)より(C)NHK

第27話「本能寺の変」で、市は「生きてる者にしか この世を変えることはできませぬ」「それだけが 生き延びた我らに残された 唯一の道にござりまする」と、織田信澄(緒形敦)に裏切られ、気落ちした信長を励ましていました。

今の市に残された唯一の道は、秀吉から織田家を守ること。織田家を守れるのは、“生きてる者”にしかできないことだから……。

本回のラスト、市は「兄上の志は 私が受け継ぐ。そなたらを止めることが…。いま一度 生きる力となった。礼を申す」と、小一郎に胸の内を明かしていました。織田家の誇りを守り抜くため、最愛の兄がもっとも信頼し、自身も心の拠り所にしていた豊臣兄弟と戦いを宣言したのです。

第30話で喪を表す黒い着物をまとっていた市が、本回では黄色い着物を着ていたのも、市の心が生き返ったことを表していると思いました。

筆者は、市は信長よりも戦国武将に向いてるのではと思うこともあります。信長は感情的で、人を信じやすい一面がありますが、こうした特質は戦において不利になりがちです。一方、市は常に冷静ですし、織田家を守るためであれば信長以上に冷徹な判断も下すようにも思います。

市(宮崎あおい) 小一郎(仲野太賀) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』31話(8月16日放送)より(C)NHK

例えば、今回のラストで、小一郎は市に歩み寄っていましたが、市は「羽柴の所領を播磨以外 全て我らに譲り 人質として 身内の者を3人出せ」と、彼のそんな思いも一蹴していました。そのうえで、「織田家を敬い 共に生きるとは そういうことじゃ」と現実の厳しさを小一郎に突きつけます。

かつて、信長は「お前が男であればのう」(第27話)と、市に対して言ったことがあります。市は信長の後継者としての適正が誰よりも高くても、女であるがゆえに清須会議に参加できないばかりか、跡継ぎ候補にもなれません。自分を差し置いて、血縁関係にもない男たちが、織田家の行く末を決めていく……。そうした中で、市は勝家と手を組み、織田家の誇りを命がけで守ろうとしているのです。

池松壮亮扮する秀吉の変貌に息をのむ

池松壮亮扮する秀吉の変化は圧倒的で、第31話における見所の一つでした。秀吉は本放送回の序盤から瞳に覚悟を宿し、深い闇を纏(まと)っているように見えました。

秀吉(池松壮亮) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』31話(8月16日放送)より(C)NHK

池松といえば、2024年放送の『海のはじまり』(フジテレビ系)における津野晴明のイメージが個人的に強く、戦国三英傑の中でも特に残忍な印象の強い豊臣秀吉とはなかなか重なりませんでした。

池松の透明感と端正さは魅力ですが、それゆえに秀吉がどこか弱々しく、脆く見えてしまうのではないかと懸念していました。過去に秀吉を演じた俳優は、竹中直人(『軍師官兵衛』)や香川照之(『利家とまつ』)など、肉感的で泥臭さのある役者が多かった印象です。

また、第2話「願いの金」で、なか(坂井真紀)が「戦で手柄を立てるっちゅうんは 大勢人を殺すっちゅうことだで あの子に そんなまね できるわけないがね」と口にしていたこともあり、本作において秀吉はクリーンな人物として描かれるのかと思っていた時期もあります。

しかし、本回の秀吉は以前の親しみやすさや軽やかさが消え、見事にダークな人物になっていました。信長の思いを受け継ぎ、安泰の世を築くには生易しい手段では不可能だと悟った秀吉は変貌したのです。

池松の演技の幅広さ、内に潜んでいた雄々しさ、秀吉の心の変化を細やかに表現する丁寧な演技、そして意図的に構築された高度な演技に感服しました。

本記事では、第31話を振り返りながら、秀長と市の変化についてお届けしました。

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《OTONA SALONE》

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