
子どもの頃から学校給食でよく飲んできた牛乳。しかし大人になると「太りやすそうだから飲まない」、「なんとなく体によくないのでは」というイメージから牛乳を避けている人も多いのではないでしょうか。しかし、実は牛乳はダイエットや健康維持に適した食材の一つだと知っていましたか? 今回は牛乳の知られざる栄養素や更年期女性にピッタリな理由について、管理栄養士でミルク料理家の小山浩子先生にお聞きしました。
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▶牛乳が「実は太らない」理由牛乳は低GI食品で実はダイエット向き。その脂質もエネルギーになりやすい
――牛乳は太るから飲まないようにしている女性も多いと思いますが、ダイエット視点で見ると体にいいのでしょうか。
まず低GI食品なので血糖値が急上昇しにくい点が挙げられます。また牛乳のタンパク質は20%がホエイタンパク質で80%がカゼインタンパク質なのでダブルで効果を発揮してくれます。ホエイタンパク質はBCAAという必須アミノ酸が豊富に含まれ、消化吸収が非常に早いため、筋肉の回復や維持にとても有効です。カゼインタンパク質は胃酸に触れると固まる性質があるため、満腹感が持続しやすい特徴が。
さらに牛乳は脂質が多いと思っている方も多いかもしれませんが、牛乳の乳脂肪分は短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸が豊富に含まれており、体内で素早く分解されてエネルギーになりやすい特徴があります。このように牛乳は太りにくい体を作ることが期待できる栄養素が豊富に含まれているんですよ。
――更年期女性だとエストロゲンのために豆乳を飲んでいる人が多いかと思います。牛乳と豆乳はどちらを飲むべきなのでしょうか。
豆乳に含まれる大豆イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをするので、更年期症状の緩和はたしかに期待できます。ただ豆乳はカルシウムが少なく、更年期女性が悩みがちな骨粗しょう症予防に効果的なのはカルシウムを豊富に含む牛乳です。それぞれで特徴が異なるので両方飲むのがベストだと思います。
▶乳糖不耐症なら飲み方にコツが乳糖不耐症は40代以降になる人も?飲み方にはコツがあります
――牛乳を飲むとお腹が緩くなってしまう人は牛乳を飲まないほうにしているかと思います。
乳糖不耐症ですね。牛乳に含まれる糖は単糖類の「ブドウ糖(グルコース)」と「ガラクトース」が1つずつ結合した二糖類「乳糖(ラクトース)です。単糖類はそのまま小腸に吸収されますが、二糖類は一度消化酵素(ラクターゼ)によって分解されて吸収する必要があります。このラクターゼが不足して小腸で十分に消化・吸収されないとお腹が緩くなって下痢症状が起きてしまいます。
このラクターゼの分泌量はミルクや母乳をしっかり消化できる生まれたばかりの赤ちゃんのときがピーク。その後、ラクターゼを体内で作る働きは1歳を過ぎて20歳くらいまで徐々に低下します。そして加齢とともにラクターゼ活性は低下する人が多く、特に更年期は女性ホルモンの影響で腸の動きが乱れることから乳糖不耐症になる人が増えていくと言われています。
――若いときは牛乳をゴクゴク飲めていたのに、40代以降になって飲めなくなる女性も多いんですね。乳糖不耐症の人でも美味しく牛乳を飲むコツはありますか?
乳糖不耐症は病気ではなく体質なので、治すのではなく慣れることが大事です。まずは温めて飲むと胃腸への刺激が少なく飲みやすくなります。またおにぎりやパンなど食事と一緒に飲むと牛乳が胃の中に長くとどまりやすくなるので、小腸への吸収が緩やかになって症状が出にくくなります。そして牛乳を噛んで飲むと、唾液と混ざって胃や腸で消化しやすくなります。
さらに50mlなど少量から飲んでみるのもおすすめです。そこでお腹の調子を確認して問題なければ翌日に80ml、100mlと少しずつ量を増やしてみてください。乳酸菌は乳糖を分解する酵素「β-ガラクトシダーゼ」を作り出します。チーズやヨーグルトは発酵の過程ですでに乳糖を分解しているため、牛乳と一緒に食べるとお腹のぐるぐるや下痢を緩和する効果が期待できます。
▶更年期女性の目安摂取量は牛乳はコスパがいい「栄養の総合デパート」。更年期女性の目安摂取量は。
――更年期世代の女性は1日でどのくらい牛乳を飲んだらいいのでしょうか?
個々人の普段の食生活によって目安は異なります。肉や魚など動物性タンパク質を含む食材を多く食べている人は1日200ml、野菜や炭水化物がメインの食生活の人は1日400mlくらいを目安にするといいかと思います。
ただ注意したいのは玄米をよく食べている人です。牛乳にはカルシウムが骨に定着できるよう最高バランスのリンが含まれていますが、玄米にも白米の約4倍のリンが含まれています。牛乳だけ、玄米だけならリンの摂りすぎにはなりませんが、三食玄米を食べ、牛乳もたくさん飲み、さらに加工食品やインスタント食品も多く食べる食生活だと長期的に見てリンの過剰摂取で腎臓に大きな負担がかかってしまいます。リンは多く摂取するとカルシウムの吸収が悪くなったり骨に蓄えられたカルシウムが血液中に溶けだしたりしてしまうことも。玄米を主食にしている人は牛乳の飲み過ぎには注意が必要です。
牛乳は未調理でそのまま飲むだけでたくさんの栄養素を摂取できる栄養の総合デパートです。コップ1杯何十円という低価格なので物価高の今、賢く栄養をしっかり摂るにはピッタリ。水の代わりではなくお肉やお魚の代わりと思って積極的に飲んでくださいね。
◆お話を伺ったのは…
小山浩子先生

管理栄養士、ミルク料理家。30 年以上にわたり牛乳と向き合い、「牛乳× 和食」という新しい食文化「乳和食」を確立。第一人者として、テレビ等のメディア出演・講演・執筆・レシピ開発など幅広く活動している。これまでに指導した生徒は 7 万人以上に及ぶ。代表的な著書に『目からウロコのおいしい減塩 乳和食』、『やさしい、おいしい はじめよう乳和食』がある。2014年にグルマン世界料理本大賞 イノベイティブ部門 世界第2 位、2019 年には同大賞 チーズ&ミルク部門 世界第2 位。牛乳をこよなく愛し、作る人に寄り添ったオリジナルレシピを継続的に発信し続けている。




