
*TOP画像/小一郎(仲野太賀) 安藤守就(田中哲司) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』25話(6月28日放送)より(C)NHK
戦国時代のど真ん中を舞台にした『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の主人公は仲野太賀が演じる豊臣秀長。兄弟の絆で“天下統一”という偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡を描いた大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の第25話が6月28日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。
蜂須賀正勝は龍野城の主に
蜂須賀正勝(高橋努)は秀吉(池松壮亮)に15年仕え、龍野城(たつのじょう)の主になりました。

蜂須賀正勝(高橋努) 前野長康(渋谷謙人)ほか 大河ドラマ『豊臣兄弟!』25話(6月28日放送)より(C)NHK
かつて、正勝は前野長康(渋谷謙人)とともに“城の主になりたい”と夢を語っていましたが、それが実現したのです。秀吉は当初の約束では正勝に対して城を3年後に与えるはずでしたが、12年もの年月を余計に要しました。また、正勝は竹中半兵衛(菅田将暉)が織田信長(小栗旬)から与えられた屋敷が自分よりも大きく、「げせぬ!」と不平不満を口にした日もありました。最終的に夢が叶ったとしても、想定していたよりも遅く叶うことやその過程の中で誰かと比べてくやしい思いをすることはいくらでもあります。
史実では、正勝は豊臣秀吉に仕えてから約15年後に龍野城を与えられ、大名となりました。ちなみに、正勝は40歳前後で秀吉と出会い、50代半ばでようやく大名格に昇ったため、”遅咲き”といえるでしょう。城持ちとなってからも秀吉に誠心誠意尽くし、山崎の戦い(VS明智光秀)や賤ヶ岳の戦い(VS柴田勝家)でも大きく貢献。秀吉の天下統一を支える重要な役割を果たしました。
日本一の城・安土城の主になった織田信長
正勝が初めて与えられた城に喜んでいる一方、織田信長は日本一の城とも称される安土城の主となりました。信長は安土城の完成を祝して盛大な宴を催し、“天下に織田信長の安土城あり”と人びとに知らしめました。
この宴では、余興の一つとして、信長の命令により相撲が行われました。しかし、この相撲は単なる宴の娯楽ではなく、恐ろしくも、優しい理由で執り行われたのです。森乱(市川團子)の相撲の相手に最初に指名されたのは、林秀貞(諏訪太朗)でした。

秀貞(諏訪太朗) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』25話(6月28日放送)より(C)NHK
秀吉を含む家臣らは“新と旧の対決”だと笑って楽しんでいましたが、なんと負けた秀貞は織田家から追放されることに……。続いて指名されたのは、佐久間信盛(菅原大吉)。秀貞の二の舞になることを恐れながらも潔く覚悟を決め、立ち上がりました。信盛は「だあ~!」と雄叫びを上げ、乱に体当たりを仕掛けましたが、一瞬にして突き飛ばされました。

信盛(菅原大吉) 森乱(市川團子)ほか 大河ドラマ『豊臣兄弟!』25話(6月28日放送)より(C)NHK
最後に指名されたのは、安藤守就(田中哲司)。慶(吉岡里帆)の父であり、小一郎の義父です。

守就(田中哲司) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』25話(6月28日放送)より(C)NHK
小一郎は守就の危機を察し、彼の代わりに自らが相撲をとると交渉を試みましたが、守就はこれを断固として断りました。そして、「この安藤伊賀守 かつては 美濃の熊殺しと呼ばれた男よ!」と大見栄を張り、乱に立ち向かっていきましたが、あっけなく負けてしまいました。
信長が彼らを使命したのには理由があり、三人には本願寺や武田と通じていたという疑いがあったためです。市(宮崎あおい)が話していたように、確固たる証拠が出てきてからでは、死罪にせざるを得ないため、信長は証拠が出る前に彼らを追放しました。自分に長く尽くしてくれた彼らに対する信長なりの気遣いであり、粋な計らいでもありました。

信長(小栗旬) 市(宮崎あおい) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』25話(6月28日放送)より(C)NHK
史実でも、林秀貞、佐久間信盛、安藤守就は1580年に追放されています。秀貞は20年前の謀反の罪をなぜか蒸し返され、追放されました。また、信盛は信長の激怒を招いた重臣を庇ったほか、大坂本能寺ではいくつもの落ち度が指摘されています。これらが積み重なってなのか突然追放を言い渡されたのです。安藤守就については、息子が武田と内通していると疑われたことが追放の理由とされています。
ちなみに、市川團子扮する森乱は森蘭丸をモデルにした人物です。三人の重臣を軽々と倒していましたが、蘭丸は筋肉モリモリの大男だったとか……。本作では市川、過去にはウエンツ瑛士などキュートな見た目の俳優が蘭丸を演じていたほか、蘭丸は美男子だったとする説もあります。しかし、蘭丸は美男子というよりも、大柄で筋肉質だったという説も信ぴょう性があります。
守就の父としての覚悟
守就は明智光秀(要潤)が言うように武田と通じていたわけでもなく、自分が信長の怒りを買った理由に思い当たる節もありませんでした。そうした中で、小一郎は「義父上が追放された時 得をした者はおりませぬか?」と、守就に問いかけました。守就が「こたびのことで 安藤家の所領は 全てあの男のものに…」と答えると、小一郎の脳裏に稲葉良通(嶋尾康史)が浮かびました。
そして、守就、小一郎らは良通の屋敷に……。守就が「わしが武田と通じていると告げたのは お主か?」と良通に率直に尋ねると、「そうじゃ」と一言。その理由として、「わしは 家来に聞いたことを伝えたまでよ。お主らが 武田の者と ひそかに会っておるとな」と言います。守就が良通、小一郎、藤堂高虎(佳久創)の言葉を頼りにたどり着いた人物は、息子・定治(森優作)でした。守就に真相を尋ねられた定治は責任を感じ、錯乱状態に陥りながらも、胸に秘めた思いを涙ながらに打ち明けました。
「織田についてからというもの ずっと戦に明け暮れる日々じゃ。戦っても戦っても尽きませぬ。[中略]こんな… こんな地獄の先に 真にすばらしき世が あるのでございますか!?織田信長には そんな世をつくることなどできぬ!」
定治のつらい気持ちにどことなく共感できた視聴者もいるのではないでしょうか。当時において、武士は現代でいう企業戦士。明るい未来を思い描き、仕事をがんばってみたけれど、仕事は片付かず、心休まる暇もない。将来も期待できそうにない……。そうした中で、良い話を耳にすれば、他社の社長に協力したくなるものです。疲れ果てた定治の姿は、今を必死に生きる現代人にも通じるように感じました。
守就は定治の行動を自分の責任とし、小一郎や慶と共に暮らす城を去ることを決意しました。父として息子の責任をとりつつも、慶に迷惑をかけぬよう、城を去り、慶とは赤の他人になると静かに覚悟を決めていたのです。一方、慶が守就を想う気持ちも、守就の想いに劣るものではありませんでした。自身にもよからぬ疑いがかかったとしても、守就と縁を切り、寂しい思いをすることは避けたいと思っていました。

小一郎(仲野太賀) 慶(吉岡里帆) 守就(田中哲司) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』25話(6月28日放送)より(C)NHK
小一郎は「離れておっても 縁は切らぬ。いや 切れんのじゃ。一度ここ(心)に刻まれたらず~っと消えぬ」と語り、二人の仲裁に入りました。
愛する人との縁は距離を置いただけで切れるものではありません。また、離縁したとしても、心に刻まれた絆は消えるものではないのです。心に一度刻まれれば、それは永遠に残り続けます。だからこそ、相手を想うとあたたかな気持ちになれる一方で、想うがゆえに深い苦しみを感じることもあります。
本記事では、『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の第25話で描かれた、織田信長による家臣の追放についてお届けしました。
▶▶戦国時代にも逃れられなかったアルハラ。「職場の飲み会」
では、戦国時代の「酒宴」についてお届けします。




