
「みんなと同じようにできないのは、どこか欠けているから?」そんなふうに感じたことはありませんか。まわりと違う選択をすることに不安を覚え、「正解」から外れないようにと、自分を抑えてきた人も少なくないでしょう。
この「みんなと同じ」でいようとする息苦しさについて、エッセイストの一田憲子氏は、自身の経験を通して疑問を投げかけています。一田氏は、人と違うところこそが個性の芽であり、無理に消そうとしなくていいものだと語ります。
本記事では、一田氏の著書から、「みんなと違う」を恐れず、自分らしさを育てていくための考え方を紹介します。
※本記事は書籍『褒められなくても、生きられるようになりましょう』(一田憲子:著/主婦の友社)から一部抜粋・編集したものです
「みんなと同じ」でなく、「みんなと違う」から個性が育つ
「新しい学校のリーダーズ」というダンスボーカルユニットが人気だそうです。私も、セーラー服で、足を大きく広げて歌う女の子4人の姿に圧倒され、ヘンだけれどなぜか心を打たれて、一度見たら忘れられなくなっていました。
そんな彼女たちのインタビュー記事を読みました。結成当初から「はみ出していくこと」がテーマだったそう。デビュー前に4人で合宿をしているころには、「今まで誰もやったことがないことをやろう」と、パフォーマンスを探し続けていたのだとか。
私が若いころと真逆だな、と思いました。学生時代、私は世の中には、正解があって、それさえ知れば、目標に向かって歩いていけると考えていた気がします。つまり、「人の道にはずれないように」「みんなと同じように」生きていきたいということ……。
「みんなと同じ」でなければ、その生き方は「失敗」で、「〝みんな〟から外れちゃったらどうしよう?」と不安でたまりませんでした。女子校育ちで親のコネで商社に就職。「いい子」の道を一直線に進みつつ、そこからはみ出したら、二度と戻れない、と信じこんでいた気がします。
でも、同時にどこかで本物の自分を生きていない気がして、「何かが違う」とずっと感じていました。何が違うかわかったのは、もっとずっとあとのこと。「人とは違う生き方をしたい!」と切に願い、自分の道を歩いている人と出会ってからでした。
そこで知ったのは「人と違う」から、そこにその人だけの個性が宿るんだということ。「自分らしさ」は、「これまであるもの」への否定から始まります。「そうじゃなくて、私はこうしたい」と……。私はずっと、世の中の常識的な道を否定なんてしてはいけないと思っていたのに。
大人になってみたら、あの「新しい学校のリーダーズ」のように「はみ出す」人が称賛され、その個性がきらりと光る宝物としてみんなを魅了していました。あれ?私が信じてきた道の歩き方と違う……。
一方で、ずっと自分が優等生で、個性がないことがコンプレックスでした。どうしたら「自分らしさ」や「個性」というものを手に入れることができるのだろう?と考えても考えても答えが見つかりません。『暮らしのおへそ』の取材で、片桐はいりさんにインタビューをさせていただいたときのこと。片桐さんといえば、圧倒的に個性のある俳優さんです。さっそく「どうしたら個性を手に入れることができますか?」と聞いてみました。
「個性ってね、トイレで流しても流しても流れないこびりカスのようなものだと思うんです」と片桐さん。つまり、「やめよう、やめよう」と思ってもついやってしまうこと。手放そうとしているのに、どうしても手放せないものが、その人の個性だと。
今まで優等生だったのに、急に「はみ出す」生き方なんてできない……。だったら私は個性を持つことなんてできないんじゃなかろうか?と思っていたのに、片桐さんのこの言葉で、「あれ? 私にも個性はあるのかもしれない」となんだかちょっと嬉しくなりました。
私にとって、流しても流しても流れない「こびりカス」ってなに? もしかして、それこそが「褒められたい」という根強い思いなんじゃないか? 「こびりカス」って、どうしてもやってしまう「欠点」のようなものです。明るく前向きになりたいのに、どうしても心配性で、ネガティブになってしまうことだったり、どうしてもみんなの称賛を浴びたい!という「目立ちたがり屋」だったり。
でも、欠点は見方を変えれば、その人の強みになる……。私の場合は「褒められたい」「人の目をどうしても気にしてしまう」というのが欠点。人一倍、他人の様子に過敏な私は、その場に集まっている人が、ちょっとでも不快そうだったり、何かが心配そうだったら、すぐにわかります。
そんな「人の顔色ばかりをうかがう」というイヤなところをくるりとひっくり返してみたら……。誰かの気持ちを繊細に読み取ることができる、というひとつの長所になり、周囲の人の気持ちを取り逃がさないように、気を配る、という個性に変換できるのかも。
欠点こそ、個性の種になると考えたら、なんだか明るい光が見えてきました。私は、「新しい学校のリーダーズ」みたいな、はみ出しまくった、強い個性は持つことができないけれど、もっと静かで、でもピリッと尖った個性なら持つことができる……。
自分の欠点を見つめ、それを個性に変えていくというプロセスは、自分にしか理解できません。だとすれば、もう私は褒められる必要はないのかも。「みんなと違う」を怖がらないで、小さな個性の芽を少しずつ育てていきたいと思います。

玄関に花を飾る。和風の我が家に似合うよう、華美でない地味な花をチョイス。これは小さなクレマチス。(撮影/馬場わかな)
ここまでの記事では、「みんなと違う」を恐れず、自分らしさを育てていくための考え方についてご紹介しました。つづく関連記事では、「自分の心をより健全に穏やかに保つスキル」をお届けします。
つづき>>「褒められなくても満たされる人」は、他人の評価が気になる人と何が違う?エッセイスト・一田憲子氏に学ぶ、「大人の承認欲求」との向き合い方
■著者略歴:一田憲子(イチダ・ノリコ)
1964年京都府生まれ。編集者・ライター。OL、編集プロダクション勤務を経てフリーライターとして独立し、女性向け雑誌・書籍などの取材・執筆で活躍。暮らし、おしゃれ、仕事、人間関係、年齢の重ね方などについての、日常の中の揺らぎや気づきを丁寧にすくい取る文章で、幅広い共感を集める。『暮らしのおへそ』『大人になったら、着たい服』(ともに主婦と生活社)を立ち上げ、イベントも開催。『最後の答えは、きっと暮らしの中にある。』(内外出版社)、『小さなエンジンで暮らしてみたら』(大和書房)など、著書多数。自身のWebマガジン『外の音、内の香』では、さまざまなコンテンツを配信。ライター塾を主宰し、「書く暮らし」の楽しみを伝えている。




