本作は、人との関わりを拒み孤独に生きてきたフリーの校閲者・入江冬子は、ひょんなことから年上の物理教師・三束と出会い、交流を深めていく中で、自らの孤独や感情と向き合っていく恋愛物語。
現地時間5月17日(日)朝、フランス・カンヌで開催中の第79回カンヌ国際映画祭にて、公式上映に先駆けて行われたフォトコール。
この日のために世界に1つだけのオーダーメイドで作られた黒いスーツに身を包んだ岸井、シックなスーツ姿の浅野のキャスト陣に加え、背中に大胆なカットアウトが入った「アルマーニ(ARMANI)」のドレスを着用した岨手監督が登場。海外の報道陣に囲まれ、南仏の爽やかな空に映える眩しい笑顔を見せた。
直後に映画祭のメイン会場のひとつであるTHEATRE DEBUSSY(ドビュッシー劇場)にて実施された公式上映では、満席の客席から大きな拍手で出迎えられた3名。上映前の舞台挨拶で岨手監督は「初めてカンヌ国際映画祭に参加します。今日、ここで作品を観てもらえることが本当に本当に幸せです。よろしくお願いします」と期待と緊張が入り混じりながら端的にコメント。「もっと話して良いのに」という司会に対し、「映画が長いのでコメントは短くしました」と岨手がきっぱりと返答をし、会場は和やかな笑いに包まれた。
上映中は、大きな笑いと、感嘆にも似たため息が何度も漏れ聞こえ、息を呑むように観客たちはスクリーンに釘付けに。上映が終了すると、劇場の中央に座る3人に向けて約4分間にわたる「ブラボー!」の声とスタンディングオベーションが沸き起こった。カンヌ映画祭への参加が初となる岸井は笑顔ながらも目に涙をため、そんな岸井を岨手が手繰り寄せて熱い抱擁。また2階から聞こえる大きな「ブラボー!」の言葉に、浅野はガッツポーツで応えた。

上映後には、日本メディア向けに囲み取材を実施。まずはワールドプレミアをカンヌで迎えた感想を聞かれると、岸井は「どんなふうに伝わるのかなと緊張していましたが、素直に映画を受け取ってくださっていて嬉しかったですし、とにかくほっとしました」とコメント。
浅野は「僕の中で三束という役は未だぐるぐる回っているような、どこに向かっているのか分からない存在だったのですが、先ほど皆さんと一緒に鑑賞してようやくなにかに辿り着けた気がしました。オープニングで自然に涙が流れ、終わった後も涙してしまいました。とても感動しました」と明かす。
岨手監督は「三大映画祭に参加する人生になるとは思ってもみなかったので、選出の知らせを聞いたときは本当に驚いたのですが、今日ようやく『カンヌに来たんだ』と実感することができました。観客の皆さんと、そして隣にいる俳優部の皆さんと、全員立場関係なく一緒に映画を観ることが新鮮で、はじめは緊張していましたが、最後には皆と同じ目線で見ることができました」と、それぞれの言葉で喜びを語った。「これからもついていきたい」岸井ゆきの、監督への信頼明かす
今回が初めてのカンヌ参加となった岸井が、「劇中、冬子と三束がフランス料理のお店に行くんですが、ふたりとも料理名が読めないというシーンで笑ってくださったのはフランスでの上映ならではで、新鮮でした」とカンヌならではの反応をふり返ると、岨手監督も「私もひとり編集していて『ここはコミカルだな』と思っていたシーンがあったのですが、日本で関係者だけの試写をやったときにはまったくそんな反応がなかったんです。でも今日そこで笑いが起きて少し安心しました」と応じ、「カンヌの観客はスクリーンとコミュニケーションをとっているということも分かり、とても良い経験になりました」としみじみ。
過去にも数回カンヌへ参加経験がある浅野は「おそらく7~8回は来ています。街もある程度把握できているし、顔見知りの映画人の方々もいるので、ホッとするくらいです」とカンヌへの親しみを語った。どちらも岨手組への参加は初めてとなる岸井と浅野。岨手監督の印象について「撮影に入る前、三束という人物を自分なりに考えて用意していましたが、監督が考える三束のイメージに引っ張っていってもらうことが多々ありました。きちんと話をしてくれて、一緒に創り上げてくれました」と浅野。
すると「私も同じです。もともと川上未映子先生の原作が大好きで、自分なりの確固たる冬子像があったのですが、映画と小説とでは違いが生じるので悩んでいた時、私の中の冬子と岨手監督の中の冬子、それぞれのイメージを掛け合わせて一緒にキャラクターを創り上げてくださいました。想いが強く、引っ張っていってくれる。芯の強い、闘う女性というイメージを感じました」と岸井も同意。続けて「今日も公式上映に参加する前にとても緊張していたのですが、監督が『私たちはもう映画を完成させて、面白いと思っているものができたから今ここに立っているんだ』と励ましてくれまして。これからもついていきたいです」と嬉しそうに裏話を明かすと、岨手監督は気恥ずかしそうに笑みを見せた。
20本中11本が女性監督作品「面白い映画が選ばれるのは自然なこと」
今後日本映画界を担う一人として活躍が期待される岨手監督に対し、いまの日本映画界が抱える課題についての問いが飛ぶと「私は現在金沢に住んでいますが、東京に居続けないと映画が撮れないというイメージは変えていきたいと思っています。地方でも、日本じゃなくても好きなところに住んで多様な経験をして、その経験を生かして豊かな映画を作っていけたら良いですよね。そんな一つのサンプルに、自分がなれていたらいいなと思っています」と語った。
また今年のカンヌの「ある視点」部門は、20本中11本が女性監督作品であることにちなみ、女性監督の活躍について話が及ぶと「やっと男女比の過半数を超えた、という意識はなく、面白い映画が選ばれるのは自然なことだと思っているので、特に意識はしていませんでした」と監督。「最近は日本でも女性の若手監督が非常に増えてきていますし、呉美保監督のように出産を経て復帰される方もいらっしゃり、子どもがいるいないやライフプランに関わらず、いろんな経験をした人が、それぞれの映画を持ち寄る映画界が私の理想です。私もやっと子供たちが手を離れてきたので、もっといっぱい撮っていきたいなと思っています」と意気込みを語った。
原作者の川上未映子は現在ブックツアーでオーストラリアに滞在中のため、残念ながらカンヌに参加することが叶わなかったが、岨手監督は「今朝も先生から『頑張って。楽しんでね』と応援のメッセージをいただきました」と報告。監督、キャスト、原作者まで、深い絆を育んだチームであることアピールしていた。
本作が出品されている、「ある視点」部門の授賞式は現地時間5月22日(金)(時間未定)に行われる予定。
『すべて真夜中の恋人たち』は今秋、全国にて公開。












