
インデックス投資を考え始めると、多くの人が「オルカンかS&P500か」という選択に立ち止まります。過去の成績や成長性を比べるほど、結局どちらが正解なのかわからなくなることも少なくありません。
本記事では、TBSキャスターとして活躍し、現在はビジネス映像メディア「PIVOT」でマネー番組のナビゲーターとして多くの専門家から学び、自身も初心者から経験を積んできた国山ハセン氏の著書から、この2択をめぐる考え方を整理しながら、長期投資を続けるうえで大切な視点について掘り下げていきます。
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※本記事は書籍『投資初心者の僕がプロたちから学んだ、正しいお金の増やし方』(国山ハセン :著/徳間書店)から一部抜粋・編集したものです
「どちらが儲かるか」より「どちらが長く持てるか」
インデックス投資をするなら、オルカンか、S&P500か。もしその2択を聞かれたら、僕は迷わずS&P500を選ぶでしょう。
前述した上場企業の創業者が言っていたように、僕もGAFAM をはじめとするアメリカの巨大テック企業がこれからも世界経済を牽引していくと信じています。S&P500型のインデックスファンドは、そんなAppleやMicrosoft、Amazonといった“世界を動かす企業群”にまとめて投資できる仕組みです。いわば「世界中のお金が流れ込む場所」にベットしておくようなもの。もっともシンプルで合理的な選択だと感じます。
しかし、この「オルカンvs S&P500」に新しい視点を提示してくれたのが、YouTubeチャンネル登録者数60万人超えの「節約オタクふゆこ」さんです。彼女は450万円以上の奨学金を返済するかたわら、20代で純資産1000万円を築いた努力家。名前こそ“節約オタク”ですが、もはや投資オタクと言ってもいいくらい、鋭い分析力を持っています。
一般的にこの2択は「どちらの成長性が高いか」、つまり「どっちが儲かるか」という観点で語られがちです。また、ご存知の方も多いと思いますが、オルカンといってもその構成銘柄の約6 割は米国株が占めています。つまり、オルカンとS&P500とではその値動きがかなり似ているのです。
「だったら、世界経済をリードするアメリカ企業に集中投資するS&P500がいいのでは?」僕はそう考えていました。
しかし、ふゆこさんの判断基準は違いました。収益率の数字よりも、「自分自身が、その投資信託を信じて一生持ち続けられるか」を重視されていたのです。彼女も以前はS&P500に投資していましたが、ある時からオルカンへ切り替えたそう。
その理由は、米国株の成長性を否定したからではありません。「アメリカ一強時代がこの先何十年も続くという保証はどこにもない」という不確実性があり、そしてそのリスクを自分のメンタルが受け入れられるかどうかを重視したからです。
インドをはじめとする新興国の台頭や、世界情勢の変化。そうしたニュースを前に、「アメリカという1つの国に、自分の全資産の運命を預け続けること」へのわずかな不安を拭いきれないのであれば、暴落が来たときに心が折れてしまう。だからこそ彼女は、リターンを最大化すること以上に、「これなら何があっても動じずに持っていられる」と思えるオルカンを選び、心の平穏を優先したのです。
「安心して持ち続けられるか」──。その問いが、僕の頭の中で何度もリフレインしました。投資の「正解」ばかりを追い求めて、自分自身の「心の平穏」という視点が、当時の僕には完全に抜け落ちていたことに気づかされたのです。
僕はイーロン・マスク氏率いるTesla(テスラ)が大好きで、個別株でもTeslaに投資しています。けれど、Teslaは株価がまるでジェットコースターのように乱高下する“投資家泣かせ”の代表格でもあります。
そんな不安定さを承知で、僕はTeslaの成長性に大きく賭けていた。いわば、将来の伸びしろばかり追いかけていたのです。そんな僕にとって、ふゆこさんの「どちらが安心して持ち続けられるか」という視点は新鮮なものでした。
最強のポートフォリオは「ほったらかしにできる」こと
一般的に、オルカンが選ばれる理由として「広範囲に分散されているぶん、暴落したときの下げ幅が小さい」というメリットがよく語られます。僕も当然、それがオルカンの最大の強みであり、鉄壁の守りなのだと思い込んでいました。
しかし、ふゆこさんの視点はさらに一段、冷静なものでした。実は、その安心感こそが多くの投資家が陥りやすい「誤解」だというのです。
世界経済の中心であるアメリカが崩れれば、オルカンもS&P500も、結局は同じように大きく値を下げます。全世界の株式市場の約6割はアメリカ企業で占められているわけで、米国市場が落ち込めば連動して下がる構造になっている。事実、リーマン・ショックやコロナ・ショックのときもそうでした。アメリカ発の株安が瞬く間に世界中へ波及し、どの国の株価も大きく下落しました。
それでも、彼女がオルカンを選ぶ理由。それは「値動き」の差ではなく、「心の安定」にありました。米国株が下がれば、確かにオルカンも下がります。しかし、全世界に分散していることで、「どこかの国が落ち込んでも、別のどこかの国が伸びてくれる」という安心感が持てる。この確信があるからこそ、国際情勢のニュースにいちいち心を揺さぶられずに済むのです。
この心のブレにくさは、数字では測れない大きな価値です。オルカンを持ち続けるだけで、全世界の成長の“平均点”を享受できる。どこかの国の経済が低迷しても、どこかの国は成長しているかもしれない。こういった「ほったらかしにできる気楽さ」こそ、長期投資を続けるうえで最強の武器になる。ふゆこさんの合理的な考え方に触れて、僕はその本質をようやく自分の中に落とし込めた気がします。
僕はつい「どちらが得か」「どちらが強いか」という比較に終始してしまいがちですが、彼女が何より大切にしていたのは、「結局のところ、長期で続けられるかどうか」という1点でした。米国株の勢いを信じて持ち続けられるなら、それも1つの選択。大切なのは、自分が納得して続けられるほうを選ぶことなのです。
どんなに優れたデータや理屈を並べられても、自分の心が信じ切れない投資は、市場が荒れたときに恐怖に負けて手放してしまう。投資とは、どこまでも自分自身の心の問題なのだと言い切る彼女の姿勢には、1つの道を深く探求してきた人ならではの凄みを感じました。それこそが、本当の意味で市場を生き抜く「長期投資家の胆力」なのでしょう。
■著者略歴: 国山ハセン(クニヤマハセン)
1991年生まれ、東京都出身。中央大学商学部卒業。2013年、TBSテレビに入社。数々の番組でメインMCなどを務め、2021年8月からは報道番組『news23』のキャスターも務める。2022年末に退社し、ビジネス映像メディア「PIVOT」に参画。動画コンテンツの企画・制作に携わり、なかでもMCを務める『MONEY SKILL SET(マネースキルセット)』『MONEY SKILL SET EXTRA(マネースキルセット・エクストラ)』は資産運用の学びの番組として大きな人気を博している。2025年、アメリカでFOX UNION Inc.を立ち上げ、日本発のグローバルメディア「UnKnown」を合わせてローンチ。著書に『アタマがよくなる「対話力」』(朝日新聞出版)がある。




