
「香港に行かない?」と誘われたとき、最初に何から調べますか?
私たちの世代、学生時代から返還前後の90~00年代に一度は訪問したことがあると思います。当時の香港といえば「竹塩石鹸、耳つぼ、ブランドアウトレット、小籠包」……。うわ懐かしい、竹塩! 思わず声が出ますよね。
もちろん小籠包はいまでも食べたいのですが、2026年に香港を見つめる目は「アート」もアリなのかも。この記事で1つだけ記憶に残していただきたいのは「香港の現代アートはものすごくアツい!」です。では、いったいどのような……?
【いま香港に行くなら!】#1
21年オープンの新スタイルミュージアム「M+」からスタートする、新しい香港の歩き方
この数年はアジアのアートシーンがさらに過熱しています。25年4月はアートの強い台湾で新北市に「新北市美術館」がオープン。25年12月にはタイに初の国際現代美術館「Dib Bangkok」がオープン。そして、ひとあし先の21年、香港にオープンしたのが、アジア初にして最大級のヴィジュアル・カルチャー美術館「M+」です。
再開発が進む西九龍エリアに満を持してオープンした同館は、MTR西九龍駅からほど近く。日本国内最大級の美術館、東京・六本木の国立新美術館は展示床面積約1万4000平米、いっぽうのM+は約1万7000平米。フランスのポンピドゥー・センター、ロンドンのテート・モダンと同規模の超大規模美術施設です。展示室も多いため、展示を見て回るだけで丸一日かかります。できれば3泊できるとベストです。
アジアにおけるMoMA(NY)やテート・モダン(ロンドン)の位置、それが「M+」

そんな「M+」、まず外観から。プラダ青山店、北京オリンピック「鳥の巣」で知られるスイスの建築家ユニット、ヘルツォーク&ド・ムーロンの作です。テート・モダンも彼らの作。

アートと日常の接点を増やすため、M+は建物そのものを敢えて通り抜けやすく作ったのだそう。その狙い通りに写真奧、海側へと横切っていく人が多数います。早朝には奥の出口を出たところにある屋根つきテラスで太極拳を楽しむグループがいたり、暑い真夏にはお昼休みに涼む人がきたりと、それぞれの使い方でこの建物と付き合っているそうです。

同館シニア・キュレーター(デザイン&建築部門 統括)横山いくこさんにご案内いただきました。横山さんは2016年ごろのM の立ち上げ初期から中心メンバーとして関わり、現在のM のアイデンティティを形作った重要なキュレーターです。
M+の最大の特徴は、20〜21世紀のアジア圏の、 近現代美術 デザイン 建築 映像 4つのカテゴリーを網羅したコレクションです。美術館ではなく「視覚文化(ビジュアル・カルチャー)のミュージアム」と自己定義しているのも、従来定義されてきた美術の枠を越え、アジアをまとめ上げる視座を持つという志の一端です。
互いが影響し合うもの、商業であるが故に移り変わるもの、そして消えていくものを、改めて編みなおし俯瞰する

横山さんのキュレーションの一例として、「デザイン・アンド・アーキテクチャー(設計及建築)コレクション」の展示が同館の視座をクリアに示しています。これは入って2つ目のお部屋です。
私たちにはおなじみのダイハツ・ミゼット。ミゼットはデザインの視点から「アジア」を俯瞰する際のひとつのキーなのだそう。このクルマがアジアへ輸出販売され、現地で重宝されたため現地バージョンが発展、その風景を作り出していきます。小型化されたトゥクトゥクなどの新たなデザインが再びアジア圏の他国に広がり、新しい形を作ったのです。
このように、商業デザインは国境を越えて移動し、影響を与え合う。考えてみればその通りですが、これまで考えたこともなかった、そんな概念を新たに打ち立てたのがこのコレクションと言えます。

ミゼットが作り出した周辺の風景には、こうした電気製品も存在します。ミゼットが持つ形状と親和性のあるデザインは、やはり何かしらの共時性を持つことが明らか。この視点で世界を見ると、「誰かが意思を持ってその足で何かを運んだ」その足跡、交易や交流がデザインの背景に見えてくるようになるのです。

伝説のデザイナー、倉俣史朗が1988年に東京・新橋に設計した寿司屋「きよ友」を店舗ごと買い取り、香港へ移設・復元させたプロジェクトも横山さんの手によるものです。「きよ友」の、ひとめ見て何のお店であるのかがわからない、青い曲線の壁が印象的なエントランス。

店内はアクリル、木材を組み合わせ、光を効果的に使うミニマルな空間です。往時訪れたことがある人ならばクリアに思いだせるような印象深さですが、しかしこうした店舗デザインはどれだけ優れたものでも閉店や改装で簡単に失われてしまいます。事実、倉俣史朗のインテリアデザインの多くは店舗改装で失われてしまいました。「きよ友」は奇跡的に当時のままの姿を保っていたのだそうです。
このほか展示室には、建築家・黒川紀章によるメタボリズム建築の代表作「中銀カプセルタワービル」の1カプセルも収蔵されています。造り付けのベッド、電卓、オープンリール式のテープレコーダーなど当時のオリジナルの内装を含めて復元されています。
未体験の中国現代美術に、いきなり「最高のコレクション」でぶつかることができる。「シグ・コレクション」

「M+」の目玉のひとつが、文化大革命以降の中国現代美術の変遷を辿る貴重な「シグ・コレクション」。スイスのビジネスマン、外交官、アートコレクターであるウリ・シグ氏は1970年代末から中国に関わり始め、1995年からは駐中国スイス大使も務めました。80年代当時、まだ価値が認められていなかった中国の現代アートにいち早く注目し、「中国現代美術の歴史を記録する」という使命感を持ったシグ氏は、文化大革命後から現代に至るまでの重要な作品を歴史を辿るように体系的に集めます。2012年、シグ氏はコレクションのうち1,463点をM に寄贈しました。

現代美術とは基本的には、まだ「歴史」としての評価が定まり切っていない「現在進行形」の事象です。ある程度作家の文化的な背景や表現の文脈を踏まえていないと、そもそも「何を表現しているのか」すらわからないことも多々あります。ましてや中国の現代美術となると、よほど詳しい人以外はまったく知らないのではと思うのですが……。

正直に言うと、お恥ずかしながら「こんなにわからないものなのだな」と驚いてしまったくらいに、私は個々の作品がわかりませんでした。恐らく普段私が日本で接する現代美術とは、作家の内面、精神性が研磨され、結果表現された作品なのでしょう。しかし、中国はとりわけこの50年、常に政治的緊張の中にあった国で、必然的に「体制と自分」「社会と自分」、自分と環境社会の関係性を踏まえた表現が中心なのだろうと思います。各セクションが「どの時代の、どのような社会状況を反映しているか」簡単にでもわかるような予習をしてから挑み直したいコレクションです。

最近はそうしてる人も多いと思うのですが、私は撮影可の美術館では気に入った作品を全部撮って「マイ図録」をカメラロールに作っています。シグ・コレクションにはもちろん社会的感情の表現とは異なる、静謐なグラフィック系の作品も多数あります。そしてやはり、日本の現代作品とは異なる思考が見て取れるのです。
たとえば、絵の具を彫り込む表現にたどり着いた作家は、もしかして宋代の作陶技法から自分の日常までの連続性のような、ある種スピリチュアルなものに向き合い続けていたのではないか……このように、わからないなりにも何かしら解釈して楽しめるというのが優れたコレクションの持つ魔力なのではと思います。


こちらは「シグ・コレクション」と同じフロアで26年4月26日まで開催中の、ロバート・ラウシェンバーグの企画展です。ジャスパー・ジョーンズと同時期に活躍したネオダダの代表的なアメリカ人作家ですが、実は彼が85年に北京で行ったプログラムが「’85新潮」という中国現代美術の大きな波を引き起こしました。当時、何を描けばよいのかがわからなかった中国の芸術家たちに「ゴミや日用品を組み合わせた物体(コンバイン)」を紹介し、「西洋絵画の真似をしなくていい。自分たちの周りにある現実を素材にすべき」という方向を示した結果、先ほどの「シグ・コレクション」に見られる熱量の高い作品が生まれていった、という経緯。
なのですが、私にとっては、ラウシェンバーグの作品は「言いたいことがとてもよくわかった」。彼が何を体験し、アジアの何をどう描いたのか、心の動きのようなものが中国作家よりも理解できる(ように思った)のです。この企画展は彼がアジアを回った際の作品群を集めたものだったので、余計に私たちにとっては見慣れた風景をアメリカ人である彼がどう受け止めたか、その心の動きがトレースしやすかったというのも大きな要素です。
人種的、地理的な近さより、表現文脈の共有度が高いほうが「共感」につながる。教育の大切さを語るときによく言われることではありますが、今回はじめて身をもって体験しました。「生まれつきの身体性が近いほうが共有できるものが多いだろう」という先入観をきれいに裏切られる、非常に有意義な体験でした。おそらく国内ではなかなかできない一期一会だと思います。
大規模な塩田千春作品も展示中でした。次の企画展も楽しみ!

26年1月18日まで、「M+」では企画展「Dream Rooms: Environments by Women Artists 1950s–Now」が開催されていました。
https://www.mplus.org.hk/en/exhibitions/dream-rooms-environments-by-women-artists/

圧巻は、まる1室を使って展示されていた塩田千春の作品。赤、時に白や黒の細い糸で空間を編み出し、その土地その時間の思いを閉じ込める塩田千春氏のインスタレーション作品は、国内では十和田市現代美術館、福岡市美術館、越後妻有などに収蔵されています。本作『I hope…』はベルリンの聖ニコライ教会で発表され、話題を集めた大規模インスタレーション。

これまで私が拝見した氏の作品の中で最大でした。
天窓から射す光が虹色の影を落とす、この作品は韓国の女性作家、金守子のもの。

本展示は元々ドイツで始まった展覧会の香港巡回です。南北アメリカ、ヨーロッパの女性作家の作品に、3名の現代のアジアの作家を追加して、M のストーリーや視座につなげたのだそう。このように、M では常に違う場所の作家や作品をローカルの文脈で見直し、ときには作品や解説を追加して、ここで見る理由を強調するようにしているのだといいます。
1Fのミュージアムショップの写真を撮り損ねてしまったのですが、大規模かつオリジナルアイテムのバリエが豊富です。香港のお土産はここで間違いないくらいに魅力的なお店です。企画展にちなんだオリジナル作品が販売されていることも。
これは「Dream Rooms: Environments by Women Artists 1950s–Now」のオリジナルグッズのうち、塩田千春にちなんだ作品。かわいい……。ぜひぜひ来館時にはお買い物時間も小一時間は確保しておいてください!
M+ ご案内はこちらから
言うなれば裏原から代官山。上環(ションワン)エリア、3時間ほどの街歩き

さて、M で香港のアートシーンに触れたあと、もうちょっとストリートも見て帰りたいな。そんな欲が出たら。
乾物やお茶をちょっと買って、ストリートアートを見ながらコーヒーを楽しむ、そんな上環エリアの散策ルートがオススメです。所要およそ3~4時間、お土産ショッピングと併せてご紹介します。

まずは地下鉄上環駅を目指します。地下鉄駅からほど近い永楽街は「海味参茸燕窩街」、高麗人参や燕の巣を扱う高級乾物街です。
ほしいお茶は必ず手に入る。見事な品揃えの「啟發茶莊」は一度は買い物に訪れたい

永楽街には中国茶の名店も集まるのですが、日本人に特に人気が高いのがこの「啟發茶莊」。
丸い小蜜柑や小檸檬に茶葉を詰めたお茶が見つかりました! 1つ200~500円と配布用のお土産にぴったりのプライス。

これはご参考まで、その小蜜柑のお茶をお店で飲んだときの写真です。このようにポットに入れてお湯を注ぎ、蒸らしてから飲みます。3煎ほどは楽しめるそう。
「啟發茶莊」は茶葉の種類も非常に豊富です。以下、プライスは写真をクリックして確認してください。
著名な日本人の香港インフルエンサーがたびたび紹介しているため、店内はお土産の茶葉を求める日本人でいっぱい。タイミングによっては日本人スタッフが在店して説明してくれることもあります。接客は非常にフレンドリーですから、欲しい茶葉があるなら臆せず質問してみて。
啟發茶莊 kai fat tea
132 Wing Lok St, Sheung Wan
「小分けのかわいいインスタント麺」はこちらで買えます! 麺好きなら麺の専門店「安利製麵廠」へ

啟發茶莊から歩いて10分ほど、有名な麺の専門店が「安利製麵廠」。
こじんまりとした店内に、あらゆる麺がぎっしりと並んでいます。主なフレーバーは15種類、さらに細麺や太麺などのバリエがあります。こちらも日本人観光客にフレンドリーで、商品によっては日本語の説明も。見ていると「どんな麺がほしいの?」と声をかけてくれます。私はホテルで食べた雲吞麺と、香港焼きそばを作るための蝦子麺が欲しいのですが……。
「雲吞麺はこれがおすすめ!」と教えてもらったのがこちら。

日本で香港ヌードルというと玉子麺が代表的ですが、蝦の卵を練り込んだ蛯子麺はより風味がよいのでお勧めとのこと。これもひとついただいていきます。鮑魚麺(あわび)も人気です。
「焼きそばにするならこっち!」と、使う専用麺も教えてもらいました。
こちらは蝦子麺を個包装した、お湯を注げば食べられる麺。もともと蝦子麺は出汁がゆで汁に出るのでそのままゆで汁をスープにしていただけます。塩で味を調えてどうぞ。2つで300円ほどと配布用のお土産としてもお勧めです。
安利製麵廠
上環文咸東街84-90號順隆大廈B1地舖
G/F. B-1 SHUN LOONG MANSION ,84-90 BONHAMShun Loong Mansion, Bonham Strand East, Sheung Wan
人気の骨董街、キャットストリートの一角に。ヴィンテージカップが並ぶコーヒー「halfway coffee」

永楽街から坂を上がり、15分ほど歩いた地点にあるのが骨董通り、キャットストリート。その一角には1960〜70年代のアンティークカップを並べたコーヒー店「halfway coffee」が。隣にはアンティークショップも併設しています。

カウンターの背に並ぶのは、往時の香港でよく使われていたカラフルで縁起の良い模様のヴィンテージカップ。同店のテイクアウト紙コップにもこれらヴィンテージ模様がデザインされています。

ラテは「玲瓏(リンロン / Linglong)」、日本では「ホタル焼き」とも呼ばれるカップで出てきました。ドットをちりばめたような透かし模様の入った焼き物です。お茶のコップと急須では見かけますが、こんなコーヒーカップもあるのね。かわいい。景徳鎮で焼いてるみたいです。

プライスはこんな感じです。イラストもかわいい。ちょっと一休みするなら絶対お勧めのお店です。
halfway coffee
https://www.instagram.com/halfwaycoffee/
26 Upper Lascar Row , Sheung Wan
ここから向こうがオールド香港。香港最古の道教寺院の一つ「文武廟」は一度は訪れてみて

halfway coffeeから3分ほどの位置にあるのが、香港最古の道教寺院のひとつ「文武廟」。1847年から1862年にかけての清朝時代に建立された廟で、その名の通り「文」と「武」の神様が祀られています。

文帝(梓童帝君)は手に筆を持った姿で描かれる、学問と文学の神様です。受験生や資格試験を受ける人々が合格祈願に訪れます。武帝(関聖大帝)は三国志の英雄・関羽として知られる、忠義と武勇の神様。現在は商売繁盛や厄除けの神として、ビジネスマンや警察官からも深く信仰されています。

一歩廟の中に入るや、息をのむような光景が広がります。写真や映画で見たこともあると思う、この渦巻き状のお線香。
お線香はいちど火をつけると長い場合で1週間ほど燃えるそう。こうして煙が絶え間なく立ち昇ることで、神様への祈りが途切れることなく天に届くと信じられているのだそうです。
文武廟
https://www.discoverhongkong.com/tc/place-to-go/man-mo-temple.html
124-126 Hollywood Road, Sheung Wan, Hong Kong Island
混在し続ける東西文化、香港の路地が持つ生命の熱、そこから生まれるストリートアート

香港の歴史を簡単におさらいします。1841年、イギリス軍が最初に上陸を宣言した「ポゼッション・ポイント(水坑口)」はこのハリウッドロードを進んだ隣のエリアにあり、現在は「ハリウッド・ロード公園」になっています。アヘン戦争が終結した1842年、南京条約により清朝からイギリスへ香港島が永久割譲され、その後、九龍半島、さらに「新界」と呼ばれるエリアが99年間の期限で租借されました。その後イギリスは香港を自由港とし、中国大陸と世界を結ぶ貿易の拠点として発展させました。

ハリウッドロードはかつて、山側に広がる主要な「華人居住区」と、海側に広がる伝統的な「華人商業区」を分ける道でした
ご覧の通り、通りにはどこか西洋の雰囲気が漂います。たとえば神戸や横浜が持つ「異国感」に近い空気があり、住むならこのエリアがいいなあ……なんて思ってしまいますが、私の月収以上のお家賃を覚悟しないとならないそうです。
山側ミッドレベルは、香港開港当初、この地区だけ洋館の建築が許可され、西洋人の居住区となっていました。19~20世紀初めころには華人商人もこの地域に好んですむようになったそうです。上環には「最も古い病院跡」を改装した博物館「香港医学博物館」があります。
若手アーティストのアトリエが並ぶリノベ施設「PMQ(元創方)」にも立ち寄りたい

ハリウッドロードを反対に中環方向へ歩くと、若手デザイナーやアーティストの拠点、PMQ(元創方)が。

1951年に作られた警察官とその家族が住む「旧既婚警察官宿舎(Police Married Quarters)」を2014年にオシャレにリノベーションし、若手アーティストに貸し出しています。とにかく家賃の高い香港では必須の施策です。

館内にはアトリエのほか、ショップもあります。気に入った作品があれば立ち寄って眺めてお買い物も。

こんな、昔ながらの建物の造作にも注目してみてください。
PMQ
35 Aberdeen Street, Central, Hong Kong
香港のウォールアート群のうち「もっとも古い作品」は上環と中環の境目にあります

さて、一般に「落書き」と思われがちで、実際に落書きである場合も多いのがストリートアートのうちグラフィティ。上図はストリートアートの一種であるステッカー・ボムで、何も知らないで眺めるとただの迷惑なステッカーです。しかし、実はこれらには世界的にもかなり複雑な「その道でのルールとコード」があるのだそう。
よく見るとメインのウォールアートを避けて、そばの柱や看板にステッカーを貼っていることがわかると思います。これは著名作家に対する敬意のお作法。また、なるべく他者のステッカーの上には貼らないのもセンスなのだそうです。

ちょっと脱線しますが、これは東京・原宿の例。写真を撮って、AIに「アーティスト名がわかったら教えて」と質問してみると、こんな答えが戻りました。SKEYLOO 電柱の最上部。香港を拠点に活動するアーティスト。NFKE(24K)不眠遊戯 グラフィティ・クルー。繁華街では頻繁に目にするステッカーの一つ。ARK (#北海道) 中央付近と下部のピンク、赤のステッカー。非常に活動的なアーティストまたはクルーでタグは全国各地で見られます。THRALL DIVISION いちばん下の黒いステッカー。ショップ、ハードコアなどインドネシアのコレクティブ。SQUiD 著名クルーあるいはライター。いずれも私には確認しきれない内容ですが、うちいくつかは正解なのでしょう。
香港に戻ります。1枚目の写真の左上、インベーダー状のドット絵のステッカーは、フランスのアーティスト、invaderへのオマージュではないかと思います。invader自身2014年に香港に一気に48点もの作品を追加設置、落書きだとして消した当局とアート愛好家の間で議論が巻き起こり、結果的にこうした議論が後述する「HKwalls」へとつながりました。
この柱は香港の最初のウォールアート、アレックス・クロフトのアートの脇にあります。

上環エリアは特にウォールアートの盛んなエリアです。実は香港のグラフィティの原点の一つは、街中に独特の筆致で自身の恨みつらみなどの主張を書き殴った「九龍皇帝」ことツァン・チョウチョイだそう。何と墨によるカリグラフィーでした。

CC BY-SA 3.0, 373953
香港人としてはじめてベネチア・ビエンナーレに紹介されるに至り、単なる落書きを超え社会へのメッセージを伝える表現として評価されました。教育がベースにある芸術とは全く別の文脈で登場してくるストリートアートは、このように庶民の感情の噴出であることも多いのです。
こうした背景を踏まえ、2014年頃からは非営利団体 「HKwalls」がストリートアート・フェスティバルを毎年開催するようになりました。ビルのオーナーと交渉して合法的な「キャンバス(壁面)」をアーティストに提供し、地元の若手から国際的なアーティストまでが参加する大規模なアートイベントへと成長、今日に至ります。香港の街中を鮮やかなアートで彩るストリートアート・フェスティバルは、「香港アートマンス(3月)」を象徴するイベントの一つ。

香港の壁画の最初の1作品めと言われるのが、ライフスタイルショップ「G.O.D.(Goods of Desire)」 ハリウッドロード店の外壁に描かれたこの作品、「古いアパートの密集図」。地元のグラフィティ・アーティスト、アレックス・クロフトの作品です。密集して重なり合うアパートの描写は、1994年に解体された伝説的な建築群「九龍城砦」のオマージュとも言われます。


こちらがショップ「G.O.D.(Goods of Desire)」。香港スタイルを追求したアイテムがセレクトされており、お土産探しにもよいお店です。
G.O.D.(Goods of Desire)
G/F & 1/F, 48 Hollywood Road Central, Hong Kong
中環駅からすぐ、香取慎吾のウォールアート「大きなお口の龍の子(大口龍仔)」も

shingo katori wallは地下鉄中環駅のすぐそばに位置します。作品名はなんと「大きなお口の龍の子(大口龍仔)」。世界最長のエスカレーター「ミッドレベルエスカレーター」の脇、ハリウッドロードとシェリーストリート(些利街)が交差する場所に位置し、香港のスカイライン、バウヒニアの花(香港の市花)、そして中央には香取さんを象徴するキャラクター「大口龍仔」が描かれています。

2018年、香港政府観光局のプロジェクトの一環として制作されました。制作は深夜、エスカレーターの運行が止まった時間帯に数日間にわたって行われました。

+81とは日本を意味します。ぜひお立ち寄りを。
かつての警察署や監獄をリノベーションした巨大アート施設「大館(タイクン)」

中環の香取慎吾アートから数分のところにあるのが、イギリス植民地時代の「警察署(セントラル警察署)」「裁判所(旧中央裁判所)」「監獄(ビクトリア監獄)」をリノベーションした「大館」。19世紀半ばから建設されたレンガ造りの美しい建物群は香港の法定古蹟(重要文化財)に指定されています。

2018年に大規模なリノベーションを経て一般公開されました。敷地内には、ヘルツォーク&ド・ムーロン(M も設計した世界的な建築ユニット)が設計した、アルミ鋳物の外装が特徴的な現代美術館「JC Contemporary」が新設されています。

また、館内にはかつての独房や警察の執務室がそのまま保存されています。

1931年から1933年にかけてはベトナム初代大統領ホー・チ・ミンもこの監獄に収容されました。他に歴史的著名人の収監者もいるので、現地解説をご覧ください。
大館
https://www.discoverhongkong.com/jp/explore/culture/tai-kwun-heritage-and-art.html
Tai Kwun, 10 Hollywood Rd, Central
これまでの香港のイメージとは少し違う、新しい「アートの都市」の姿がちょっと見えてきたのではないでしょうか。ストリートからミュージアムとは、かなり精神距離があるようでいて、デザインという要素が入ると急に近づきます。新しい街歩きを楽しんでみてください。
つづき>>>「これが食べたかった!」2026年香港で訪れたい「新しいお店」リスト、「食い倒れの街」香港は永遠です
















