
首都圏の中学受験が過熱するなか、「中学受験で入りやすいが難関大学が狙える」と噂される「レバレッジ校」の存在がにわかに注目を集めています。
今回お話を伺ったきみこさん(仮名・49歳)は、中学1年生のA子さん(仮名・13歳)を、「レバレッジ校」と呼ばれる私立中学校に進学させたワーキングマザーです。
そんな彼女は「当たり前ですが、いくらレバレッジ校だからといって、うちの子の成績がぐんぐん伸びるわけじゃないんですよね」と苦笑しつつも、「学校には概ね満足しています」と話します。
【どうする?小学校受験と中学校受験】前編
受験メディアで働いていた母が抱いていた「レバレッジ校」イメージ
Web制作会社の社員であるきみこさんは、数年前まで受験関連メディアの編集に携わっていたこともあるWeb編集者。職業柄、首都圏の中学受験事情は「ふわっと把握していた」そうです。
「私は小規模のWeb制作会社に勤めていて、取引先に年単位で常駐することもあるのですが、数年前は受験メディアで働いていました。でも当時、娘はまだ保育園児から低学年。目の前の仕事をただこなすだけで精一杯でした。
Web更新や編集だけでなく、イベントの手伝いまで駆り出されましたが、あくまで業務を委託されている立場。そこまで活躍することもなく……。詳しくなったのは『自分が更新した記事や、イベントで関わった学校』だけで、読者とさほど変わりませんでした」
それでも当時から、「いつかは、うちの娘も中学受験をするのかな」と考えていたきみこさん。「レバレッジ校」と似た意味を持つ「お得校」言葉が、頭の片隅に残っていたといいます。
「レバレッジ校という言葉は当時もあった気はしますが、数年前は、お得校、の方がよく使われていた印象があります。要は入学時の偏差値は低めだけれど、卒業生の進学実績は良い学校、という意味だと思っています。私は千葉の公立高校出身ですが、平成の地方高校にも、似たような学校はありました。
公立なのに希望者の短期留学や研修、移動実験教室などを取り入れて、教師陣がやる気に燃えている新進気鋭の学校とか……。ちなみに私の母校は『入るときは普通。自由すぎて現役合格はいまいちだけど、浪人するといいところに受かる』と言われていましたが、私は現役でIT系専門学校に進みました」
自身の育った環境に照らし合わせて、令和の東京の「レバレッジ校」も、「カリキュラムが充実している結果なのだろう」と、シンプルに捉えていたそうです。
最初の模試の偏差値が一番良かった! ビギナーズラックで膨らんだ期待
「いざ娘が3年生になって塾に入り、模試を受けてみたら、ビギナーズラックで思ったより高めの偏差値を叩き出してしまって。レバレッジ校のことなんてすっかり忘れて、『お嬢様学校に行けるんじゃない?』と舞い上がってしまいました」
しかし、A子さんは最初のテストが、いちばん偏差値が高かったそうです。
「今思うと、初回がたまたま良かっただけなんですよね……。3年生の3学期の時点で、4教科偏差値は58。近くに住む妹の娘である姪は振るわなかったようで、妹が『4教科で偏差値42とかで凹んだ』と言っていて、『あれ? うちの子、悪くないし、これからまだまだ上がる?』と思ってしまいました」
きみこさんの妹の娘である姪っ子と、娘のA子さんは、隣接した公立小学校に通い、同じ塾に入塾しました。
「小規模ながら、地元では親切丁寧な指導で人気の高い塾です。その塾の模試で、姪っ子より10以上高い偏差値が出るとは思わなかったので……。幼少期はずっと、活発な姪っ子を『地頭がいいなぁ』と思っていたので、『うちも、けっこうイケてた?』と調子に乗ってしまった面はあるかもしれません」
塾長からは「小学3年生時点の偏差値は参考にならない」という言葉も
きみこさんは当時を振り返りつつ、こんな記憶もあると話します。
「その頃、入塾生全員の前で塾長先生が『3年生の問題はまだシンプルなので、親が勉強をやらせれば偏差値は簡単に上がる。あまり意味はないですよ』とおっしゃっていたような気もするのですが……。そんなに無理やり勉強をさせた覚えもないし、自分とは関係のないことだと思っていました」
A子さんは、おとなしく真面目なタイプ。大手フランチャイズの計算塾に通っており、コツコツと教材を進めることが苦にならない子だったといいます。
「低学年は、複雑な応用問題が出ないぶん、暗記中心。運動と体育がちょっと苦手で、外遊びがあまり好きではなく、インドアでドリルをコツコツやる子の成績が上がるのは、ある意味当然なんですよね。それなのに、つい夢が膨らんで、『仮に10偏差値が上がったら……』なんて前のめりで難関女子中学やMARCH付属中学のパンフレットを取り寄せていました」
成績下降「うちの子が下がっているわけではなく、周りが伸びている」
しかしA子さんの成績は、4年生になると徐々に下降。特に国語と社会で苦戦し、5年生に上がる頃には4教科偏差値が50を切るようになり、どんなに頑張っても「上がらない」どころか、じわじわと下がり続けるスランプに陥ったそうです。
「学校の成績は安定しており、『うちの子が下がっているわけではなく、周りが伸びているだけなんだ』ということを、やんわり塾の先生から告げられました。中学受験の偏差値は、あくまで『中学受験をする層だけ』の中での相対評価。親御さんが中学受験を考える時点で、期待をかけられている子供たち。もともと地頭が良いのに、低学年は外遊び中心で勉強せずに過ごしていた子たちが、塾で勉強のやり方を覚えて一気に成績を伸ばしはじめたんです」
焦ったきみこさんは、家庭教師の体験授業を申し込んで費用面で夫・まさおさん(仮名・52歳)とケンカになったり、妹に相談して姪の成績の伸びを羨んで涙を流したりと、取り乱した時期もあったといいます。
後半では、偏差値が45まで下がってしまった後も、「できることをコツコツと続けた」A子さんのがんばりの結果をお伝えします。
つづき>>>中学受験「第二希望レバレッジ校」への入学の現実とは? 入れば誰でも成績が上がる魔法の杖など存在しないが、それでも満足だと話す母の心理




