
仕事だけでなく、家事に介護に育児に地域にと、それぞれがそれぞれの立場で多忙な日々を送るオトナサローネ執筆陣。彼女ら&彼らが各自の目線で今年「買ってよかったもの&行ってよかった場所」を語る、2025年ベストバイ&ベストプレイスです。
実用度高めなファッショントレンドをセンスよく紹介する連載「ricoリコメンズ」が5年目に入ったスタイリストの大日方理子さん。2025年はひとりで出かけたボルネオ島が人生のベストプレイスに入るレベルで素晴らしかったそう!詳しくお話いただきます。

【2025ベストバイ&ベストプレイス】
こんにちは、スタイリストの大日方です。普段はただひたすらに「服が好き!」という目線でトレンドやおすすめをリコメンドしています。今回は2025年行ってよかった!ボルネオ島ひとり旅のお話。
【RICOリコメンズ/働く女性のコーデ】
なぜボルネオ島へ行ったのか? その理由は話せば長いけれども、簡単に言うと
今年ボルネオ島へひとり旅してきました。きっかけはライター仲間が書いた「ひとり旅のすすめ」の記事と、ボルネオ島について書かれたヤシの実洗剤の広告記事を読んだことでした。
20代の頃に当時付き合っていた彼とタイ、ベトナム、カンボジア、ラオス、マレーシアをバックパック旅行をしたこともあり、東南アジアの雰囲気が好きです。いつか行ってみたいなら、からだの元気なうちに行った方が楽しめそうだと思ったのと、いつまでスタイリストを続けられるか少し人生に迷っていたタイミングでもありました。
1日目だけホームシックになってホテルで劇場版名探偵コナンを観ながら家族にLINEしましたが、行きたいところに行って、食べたいものを食べて、途中で話しかけられることなく本が読めて、疲れたら休んで、誰かに気を使う必要がないって楽ちん! 他の国の旅行者と話す機会が増えるというメリットも。行く前は、ひとり旅って寂しくない?と思っていたのですが、慣れてしまえば最高に楽しい時間でした。
ボルネオ島はカリマンタン島とも呼ばれる、オーストラリアの北に位置する世界に3番目に大きな島です。マレーシアとインドネシアとブルネイ、3カ国に分かれています。豊かな熱帯雨林には固有種が多いことでも知られ、第二次世界大戦では日本軍が進軍し占領していた激戦地でもあります。私は野生動物が見られる&物価が安いことに惹かれました。円安の最中でしたが、5月の大型連休明けはエアチケットも安く、お得に旅行できました。
たった一晩で91尾の海亀が産卵にやってくる。ボルネオの小さな島、セリンガン島
クアラルンプールで飛行機を乗り換え、降り立ったのはボルネオ島の主要都市コタキナバル。
1日目のコタキナバルでは、飛行機でガチガチになったカラダを整えようとサウナのあるホテルを予約していたのですが、着いてみてサウナは要らなかったと思いました。普通に外が暑いから! 実際、プールで冷えた体を温めるための採暖室であって、思っていたようなサウナではなかったし。肌寒い頃に予約をしたので、サウナが魅力的に思えたのですが。
2日目は飛行機で30分ほどのサンダカンへ移動、そこから車とボートを乗り継いで海亀の産卵が見られるセリンガン島へ行きました。産卵は夜なので、昼間はシュノーケリングを楽しみました。遠浅の海では大小様々な魚が岩に着いた海藻をついばんでいました。
波が穏やかで、泳ぐのをやめて海に浮かんでいると、「ボリッボリッボリッ」「ジャクジャクジャク」と音が聞こえてきました。魚が海藻を食べる音でした。ヤギが草を食べるときの「ボリッ」という音に似ています。魚の歯が岩に当たると「ジャクジャク」と音がするようです。大きな魚からは大きな音が、小さな魚からは小さな音がしました。これまで色んな場所でシュノーケリングをしたけれど、魚が海藻を食べる音を聞くのは初めてでした。夢中で聞いていたら背中が真っ赤に日焼けしました。

産卵を終え、朝日に照らされながら海に戻っていく海亀
夜は海亀の産卵と孵化した子亀を海に帰すところを見学しました。30分もあれば歩いて1周できるくらいの小さな島ですが、私が泊まった日は一晩に91の海亀が産卵に来たそうです。朝散歩に出かけると、砂浜には海亀が産卵した跡があちこち残っていました。世界には毎晩、海亀が産卵に訪れる島がある。すごいですよね。
オラウータンも棲む熱帯雨林。野生動物を見る2泊3日のトレッキングに参加

3日目はコタキナバルに戻って1泊して、4日目はラハダトゥへ。ラハダトゥ空港に着いて飛行機を降りたら虹が出ていて、嬉しくて写真を撮ったのですが、虹でテンションが上がっているのは私だけ。雨も晴れも多い熱帯雨林では珍しくもないみたいです。
空港から熱帯雨林ダナムバレーへは車で3時間くらいでした。空港からしばらくはきれいに植えられたヤシの木の中を抜けて行きます。ヤシ油やヤシの実石鹸は環境に優しいイメージがあったのですが、熱帯雨林を切り拓いて植えられた木から採れる油は環境に優しいのだろうかと疑問に思いました。サスティナブルって何?

レッドリーフモンキーの子供
熱帯雨林のトレッキングはオラウータン、レッドリーフモンキー、シルバーリーフモンキー、カワウソ、メガネザル、ジャコウネコなどたくさんの野生動物を見ることができました。滞在中はみんなが何について会話をしているのか分からなくて苦労しました。Macaw(ヨウム)Tarsier(メガネザル)Pangolin (センザンコウ)など、初めて耳にする単語だらけ。調べたくてもネットは繋がらない。説明してもらったり、写真を見せてもらったり。ここでは自分がマイノリティ(少数派)なのだと感じました。みんなの優しさが嬉しかった。大変だったけれど、そんな経験も丸っと面白かったです。

3日間一緒にトレッキングしたみんなと。後ろで手をあげているのがガイドのSyafiz。
一方で、誠実な人柄というのは話す言葉が違ってもわかるものなんだな、と思いました。ガイドのSyafizは真面目な青年で、動物について質問すると話が止まらなくなるのです。トレッキングが始まる前にリサーチしておいてくれて、私たちが色んな種類の動物が見られるように頑張ってくれました。There!とかCome!とか言って終わっていく1日は楽しくてあっという間で、最高の3日間でした。7〜10月はフルーツがなって、動物が集まる木が特定されるベストシーズンだそうですので、興味がある方はぜひ。
2泊3日を熱帯雨林で過ごし、また空港まで車で送迎してもらったのだけど、帰りは30代半ばくらいのアメリカ人男性と一緒でした。飛行機までの時間、エアコンが効いているこの街1番の高級店に行きたいと言う。高級なマレーシア伝統料理を食べに行った話、高級ドリアンの話、日本はうなぎが素晴らしいetc…自慢ばかりで話の内容がない。この男性もしかして「高級な物を食べている僕ちゃんが好き」なだけでは? アジア人のおばさん(私)に話しかけてくれるいい人だとは思うのだけど、趣味が合わないなと思いました。
私はコインランドリーの前で車を降ろしてもらったのだけど、その後歩いていたら街1番の高級店に彼がポツンと座り真剣にメニューを吟味している姿が窓越しに見えました。冷房の効いた広い店内には白い花柄のテーブルクロスのかかった丸テーブルが並んでいて、他には客が入っていません。私はその隣にある天井の扇風機がぐるぐる回っているオープンなお店でチキン&ライスとビールを注文して食べました。高級店と私が入った店は奥で繋がっていて、冷えたビールは高級店の冷蔵庫から運ばれてきたようでした。チキンもビールも美味しくて、私は誰もいない高級店よりも地元の人で賑わっているこっちのお店が好きだなぁと思いました。なんだかそれがとても自分らしいと感じました。
お金持ちでお金持ちですごいと聞く隣国のブルネイも日帰りしました。しかし、百聞は一見に如かずで

前王様が建てたモスク
7日目は日帰りでお隣ブルネイへ行ってみることにしました。ブルネイと検索すると必ず「豊かな国」と書いてあって、王様が建てたモスクが有名です。私は豪華絢爛なモスクをイメージしていたのですが、意外に中はシンプルすっきり系でした。クレジットカードが使えるのは空港内のみ、ショッピングモールは空き店舗だらけ、公共バスはおんぼろ…で、想像していた豊かな国とはちょっと違ったんですよね。
「空港へはどのバスに乗ればいいですか?」と聞けば、バスの運転手さんに「この人空港だって!よろしくね」と声をかけてくれるなど、人々は親切で「心の豊かな国」という意味だったのかな、なんて思いました。百聞は一見に如かず!映画『スターウォーズ』のお姫様みたいな民族衣装を着た女の子がいてすごく可愛かったのです。写真を撮らせて貰えば良かったな。

ブルネイでは話す言葉はマレー語で、表記はアラビア文字
それを知ったあとでは「見えるもの」の意味が私にとっては変わる。動物園に行って感じた「違い」とは
8日目はレンタカーでコタキナバルにある動物園に行きました。熱帯雨林で野生のオラウータンを見てから動物園でオラウータンを見ると、違和感を覚えました。野生のオラウータンは移動の際に地上に降りてくることがあっても、危険なのでサッと木に登るそうです。でも、動物園のオラウータンは日陰の地面でじっと座っています。動物園の囲いの中には木がないのです。高い木に登ってしまうとお客さんから見えなくなってしまうからだと思います。ロープの遊具は置いてありますが、葉っぱがなくて暑いので、登らないのだと思います。
野生のオラウータンを見るまでは動物園のオラウータンを見てもおかしいと感じたことがなかったのに、初めて動物園のオラウータンが可哀想だと思いました。同じ景色を見ても、知らないと見えないものがある。脳みそが揺さぶられるような体験でした。

日陰でじっとしている動物園のオラウータン
9日目に再びクアラルンプールで乗り換えて日本に戻ってきました。家に帰ってきて、お風呂って贅沢だなぁと思いました。熱帯雨林では23じ〜7じの間すべての電源がOFF、シャワーは水でした。ドライヤーなどなく、髪が濡れたまま寝るのが嫌だったので、5じ半に起きてスマホの明かりを頼りに水シャワーを浴びていました。水シャワーには昼の太陽の温度がほんのり残っていて、覚悟して浴びたわりには寒くなかったのを覚えています。
安全で不自由のない生活はもちろん素晴らしい。でも「自分の普通や当たり前」が「普通でも当たり前でもない」世界に身を置くと、同じところに帰ってきても、前とは見えるものが変わる。だから旅は楽しい!
「10日くらい母がいなくても生きていけるよね?」と聞いたら、「いいよ行ってきて」と快く送り出してくれた娘に感謝。家事デキの夫も完璧で、家に帰ったらいつもより家がきれいでした。という訳で、またどこか行けたらいいな、なんて思っています。
【2025ベストバイ&ベストプレイス】




