本ツアーは、10月25日に愛知県バンテリンドーム ナゴヤを皮切りにスタート。全12公演で合計55万人を動員、“EDEN no SONO”(2019〜2020年開催)から始まり、“NOAH no HAKOBUNE”(2023年開催)、“Atlantis”(2023年開催)へと物語が紡がれてきた「ストーリーライン」と呼ばれるライブシリーズ。高さ約20m、重さ約100トンの巨大な“バベルの塔”が出現し、100人以上のキャストが携わるイマーシブな演出など、他のコンサートでは類を見ない、エンターテインメントの領域を超えた規格外のライブとなった。
◆ミセス、荘厳なオープニングで開幕
2019年の「EDEN no SONO」から始まったストーリーラインの集大成にして、2022年から4年にわたって展開してきたフェーズ2のクライマックス、そしてデビュー10周年のアニバーサリーイヤーの締めくくり…さまざまな意味合いと想いを乗せたMrs. GREEN APPLE初のドームツアー「Mrs. GREEN APPLE DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH”」。巨大なステージセットで造られたバビロンの街を舞台に、100人を超えるキャストとともに繰り広げられたのは、ミセスというバンドがこれまで紡いできた音楽をひとつに繋ぎ、彼らが音楽を届け続ける理由を人々に伝える、人間の弱さと強さ、そして意思と愛の物語だった。
荘厳なオープニングに続いてマーチングドラムが高らかに鳴り響き、ステージ中央から大森元貴(Vo/Gt)、若井滉斗(Gt)、藤澤涼架(Key)が登場する。両手を耳に当てて歓声を浴びた大森が華々しいサウンドとともに歌い出したのは「Love me, Love you」。バビロンの住人を演じる多数のキャストが行き交う街の風景のなか、大森の伸びやかな歌声と東京ドームを埋め尽くしたJAM’S(ファン)の声が交差し、「BABEL no TOH」はお祭りのような賑やかなムードとともに幕を開けた。続く「CHEERS」でライトスティックがカラフルに瞬くなか5万人と〈乾杯〉すると、「もっと声を聞かせてくれるかい、バビロン?」という大森の言葉にオーディエンスが全力で応えた「アンラブレス」では若井のギターも藤澤のキーボードもファンキーに跳ね回り、大森も手振りを交えながらリズムに乗って歌を響かせる。「Feeling」ではアリーナに色とりどりのバルーンが投げ込まれ、東京ドームはますます晴れやかな雰囲気に。キャストたちもアリーナに繰り出して、オーディエンスと一緒に盛り上がっていく。会場が本当にひとつの街になったかのような一体感だ。
「お帰りなさい、バビロン!Mrs. GREEN APPLEです!」。ここまで6曲を終えて改めて声を張り上げて挨拶をする大森。「我々も全身全霊で楽しみに来たので、みんなも全力で楽しんでいってほしいなと思います」と大森がさらなる盛り上がりを求めると、若井も藤澤も精一杯の大声でオーディエンスとコミュニケーションを取り、そのたびに会場中から大歓声が沸き起こる。そして「みんな、今まででいちばんの声聞かせてくれよな!」という若井の曲振りから「WanteD! WanteD!」でライブは再開。肩の力が抜けたMCで3人だけでなくJAM’Sの緊張もほぐれたのか、さらに大音量のシンガロングが広がった。
そんな2人の言葉のあと、「きっと、塔は建てられなかったんだろうね」と、大森はここまで進んできた物語を振り返って語り始めた。「でも、大事にしていたものが壊れたり、期待をしていたことが無駄になったり、生活はそんなことの繰り返しなんだろうなと思います。僕も自分のことを惨めだな、情けないなって思うこともあるんです。人というのはネガティブな生き物だと思っています。なので、どうせなら楽しいことをしたいと思って曲を書いています」。そんなふうにこの物語に込めたものと自分自身のことを言葉にし、彼はこう続けた。「今日、めちゃくちゃ楽しかったです!」。この「BABEL no TOH」のストーリーが聖書の「バベルの塔」をモチーフにしていることは明らかだが、むしろ大森が伝えかったのは、塔が崩れ落ちたあとの世界、つまりいろいろなものを失いながら今を生きる我々の物語だったのだろう。オーディエンスもその物語の一員だということを表現するために、この「BABEL no TOH」は演劇的という言葉すら当てはまらない、世界そのものを創造するようなスケールを必要としたのかもしれない。
そして「BABEL no TOH」もいよいよフィナーレ。藤澤の奏でるピアノの穏やかな音色とともに、大森は「天国」を歌い始めた。花道の先でスモークに包まれながら歌う彼の後ろで、舞台上の人々がひとり、またひとりと光のなかへと足を踏み入れて消えていく。そして若井、藤澤に続いて、大森自身も。この曲が作られたときにはなかった壮大なアウトロが鳴り響く。天使のラッパのようなトランペットの音色が彼らの新たな旅立ちを祝福するかのように聞こえてくる。去っていく大森の姿が見えなくなり、ついに「BABEL no TOH」はその幕を下ろしたのだった。
だが、もちろん、これは終わりではなく始まりだ。スクリーンには「TO BE CONTINUED」の文字とともに、「ELYSIUM(エリュシオン)」という言葉が映し出された。ギリシャ神話における、神々に愛された者たちの楽園の名だ。「エデン」から始まった物語がたどり着いた新たな楽園とはどんな場所なのか。やがて示されるであろうその「続き」を心待ちにしながら、フェーズ3の開幕を心待ちにしていたい。
なお、終演後にYouTubeオフィシャルチャンネルで「BABEL no TOH Ending Movie 〜 To ELYSIUM 〜」が、また、公演のセットリストが公式プレイリスト「DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH”」としてApple Music、Spotify、LINE MUSICで配信された。(modelpress編集部)