
*TOP画像/歌麿(染谷将太) 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」45話(11月23日放送)より(C)NHK
「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」ファンのみなさんが本作をより深く理解し、楽しめるように、40代50代働く女性の目線で毎話、作品の背景を深掘り解説していきます。今回は江戸時代における「その日暮らし」について見ていきましょう。
日本人は勤勉な国民性といえるのか?
日本人について“外国人よりも休まない” “給与に対して一生懸命に働きすぎている”と指摘されることもありますが、筆者個人としては“人による”としかいえないようにも思います。日本では会社に拘束されないフリーターをもてはやす風潮が繰り返されていますし、“マイペースに働きたい”という理由から非正規雇用を選ぶ人もいます。また、最近は、Uber Eats(ウーバーイーツ)やタイミーなどで生計を立てることを好む若者も珍しくないようです。
江戸時代においても仕事に疲弊することを好まず、ほどほどに稼ぎたいと考える人たちがいました。そんな彼らの多くが選んだ職業は「棒手振り(ぼてふり・ぼうてふり)」です。棒手振りは天秤棒を担ぎ、魚や野菜などの品物を売り歩きます。自分の心がおもむくままに街を歩き、客を見つけては品物を売ります。誰かに監視されることもなく、自分のペースで働けます。
一方、大工やお店の番頭は高収入も社会的地位も得られますが、自立して働けるようになるまでは時間も労力も必要です。職場に自分の気が向いたときにだけふらっと足を運んでいれば、いつかなれる職業ではありません。
独身男はワンルームで一人暮らし
現代の日本では都心部における男性の未婚率が他の地域と比べて高い傾向にあります。2022年の東京における30~34歳の男性の未婚率は54.3%(全国比:+7%)といわれています *1。一方、江戸においても半数程度の男性が独身だったという説もあります。
また、今の時代も東京で暮らす独身者の中には5畳程度のワンルームで生活している人も珍しくないと思います。江戸時代にも、単身者の多くは長屋の4畳半程度の部屋で暮らしていました。寝食を共にする狭い部屋で暮らし、所持品も必要最低限だったと言われています。彼らはワンルームのような空間で生活し、棒手振りなどをして生計を立てていたのです。
江戸には一人で気軽に食事できる屋台が充実していたため、庶民にとっても外食は身近なものでした。蕎麦、寿司、天ぷらは当時におけるファーストフードであり、独身者は一人でよく食べていたといわれています。
現代の独身男性の中にもワンルームで暮らし、食事は立ち食い蕎麦屋や丼もの屋に頼る人は多いと思います。江戸時代と令和の今では独身者の生活はさほど変わらないのかもしれませんね。
ちなみに、江戸時代においても、何らかの事情で独り身の女性はいました。大奥を退職した中高年の女性は裕福な暮らしが保証されましたが、一般の女性は長屋に住み、三味線などの先生をして生計を立てていました。
*1 東京都「東京の子供と家庭をめぐる状況」
江戸っ子は宵越しの銭は持たない、その納得の理由とは
江戸っ子たちは浪費家気質で、“将来のために金を貯めなきゃ”という思いに縛られる人はあまりいませんでした。当時は銀行口座がありませんから、自宅に現金を保管しておくしかありません。火事が起きればお金は燃えてなくなってしまうため、稼いだお金で気前よく楽しんでいたようです。
なお、家や現金を火事などで失った場合でも、生活の再建はそれほど難しくなかったといわれています。江戸には仕事が潤沢にあり、どこかしらで雇ってもらえたためです。また、顧客台帳があれば、ビジネスを短期間で再度興すことも可能です。
本編では、江戸の“その日暮らし”と独身者のリアルな暮らしぶりについてお伝えしました。
▶▶「写楽」誕生の瞬間!やっと気付いた“兄弟の絆”、ていが届けた嘘と真実【NHK大河『べらぼう』第45回】
では、蔦重たちに再び訪れた運命の転機を深掘りします。
参考文献
堀江宏樹『女子のためのお江戸案内: 恋とおしゃれと生き方と』廣済堂出版 2014年
ミニマル、BLOCKBUSTER 『イラストでよくわかる 江戸時代の本』 彩図社 2020年
東京都「東京の子供と家庭をめぐる状況」




