イー・ラーニング研究所は、小学生の子供を持つ親を対象に「教育トレンドトピックと教育現場の変化に関する意識調査」を実施した。調査の結果、過半数の親は教育現場の取組みが大きく変化していることを認識している一方で、前向きに推進していると捉える人は約3割に留まり、教育改革の実態についての情報発信をより精力的に行っていくことが必要であることが判明した。さらに、今後注目される教育トレンドのキーワードとして「非認知能力」があげられ、将来の不安や社会の変化に対応するためにもテストでは測れない能力が重要になると感じている親が多いという現状がうかがえる結果となった。 調査は2025年2月5日から2月28日にかけて、紙回答で実施し、小学生の子供をもつ親や親族に子供がいる343人を対象に実施された。調査によると、教育現場の変化について「変化している」と感じる人は約6割にのぼる一方で、「わからない」と回答した人も約4割にのぼる結果となった。新たな教育の取組みに対し「前向きに進められている」と評価した人は約3割に留まり、「わからない」と答えた人が過半数を占める結果に。この結果から、多くの人が教育現場の変化を感じながらも、その具体的な内容を十分に把握できていない層が一定数存在し、教育改革の実態についての情報発信が不足していることが明らかになった。 また、教育現場をより良くするために必要なこととして「テストだけでない学習評価の在り方」が約7割ともっとも多くあげられ、「教育方法の多様化」や「生徒ひとりひとりの個性に合わせた指導」が続いた。これにより、生徒の多様な学び方を尊重し、一律の評価基準にとらわれない柔軟な教育を求めている親が多いことがうかがえる。さらに、「教師の働き方改革」や「保護者との連携強化」といった教育を支える環境面への関心も一定数見られたことから、教育の質を向上させるためには学びの内容だけでなく、それを支える制度や環境の整備も重要であることが示唆されている。 今後の教育キーワードとして「非認知能力」が注目されており、課題解決力や創造力といったテストでは測れない能力の重要性を認識していることが判明した。3割以上の回答者が「非認知能力の育成」について知っていると回答し、ついで「部活動の地域移行」があげられた。しかしながら、教育機関からの取組み発信が不足していることが示唆されており、今後、教育機関は積極的に取組みに関する情報を保護者へと伝え、対話を深めることで教育トレンドの理解を促進し、より良い教育環境を築くための基盤を整えていくことが必要であると言える。 さらに、「新たな取組みを推進していくうえで必要なこと」として「グローバルな視点の育成」が7割以上ともっとも多く、ついで「親や教師の意識と知識」と「充実した教材やカリキュラム」が約6割という結果となった。SNSやインターネットの普及により、国境を超えた交流が日常化していることから今後グローバルな視点を持つことが重要であると考えている親が多いことが読み取れる。また、新しい取組みだからこそ子供だけでなく、教える側も十分に知識を身に付けたり、工夫されたカリキュラムや教材を用意したりするなど環境から整えていく必要があるということがうかがえる。 なお、「2025年度において、教育現場でより一層強化すべきだと考えること」として「金融教育の推進」が急務であると考えている親が約8割ともっとも多いこともわかった。将来の経済環境に対する不安から、親世代は子供たちに早くから資産形成の知識を身に付けさせたいと考えていることがうかがえる。また、「AIの活用やプログラミング教育の深化」が2番目に多い結果となった背景には、生成AIの台頭による社会の変化が影響していると考えられる。AI技術の発展により、仕事の在り方が変わる中で、子供たちには「AIを使いこなす力」や「創造的に考える力」が求められる時代へと移行しつつある。今後、教育の現場でもAIを活用した学習支援ツールの導入が進み、個別最適な学びの機会が広がる可能性があると言える。一方で、テクノロジーの活用に関するリテラシー教育や、AIの倫理的な使い方に関する指導も重要な課題となると予想される。