年明け早々の2025年1月20日、とうとう第2次トランプ政権がスタートします。「アメリカ・ファーストすぎて、日本の物価高騰がさらに進んだら困るー!」と警戒している人も多いのでは。「でも、実は日本にとってトランプ氏は『救世主』になる可能性もありそうです」と語るのは作家・経済評論家の渡邉哲也氏。その理由を同氏の著作『トランプ勝利なら再編する新世界の正体』(徳間書店)からご紹介します。
実はルールを守る、常識人!? トランプ氏が就任後すぐやる「ToDoリスト」とは?
トランプ氏は比較的、近未来が見通しやすい政治家である。というのは元々ビジネスマンだったトランプ氏は、「期日を定めたルール作り」を行うことを得意とする。「今やらなければならないルール」、「すぐに取りかからなければならないルール」、あるいは「100日以内にやるルール」がそれだ。
こうしたルールを公的に明示し、その日程に合わせる形で確実に実行に移す。皆さんお馴染みの「ToDoリスト」を思い浮かべるとわかりやすい。トランプ氏は課題の優先順位を明確に決めて、公約を明確に守るということを明言している大統領でもある。前回、2017年のトランプ政権誕生後も、このルールに従い、すべてのものが進んでいった。
このため、私にとっては非常に予想がしやすい大統領でもある。いつまでにこれをやるといった期日に加え、課題に対する優先順位が明示されるため、将来こうなるであろうという予測がつくからだ。その「ToDoリスト」こそが大統領選の公約であり、「トランプ後の世界の設計図」でもある。
「アジェンダ47」には、犯罪、教育、医療移民、経済などに取り組むための多くの提案が含まれている。例えば、麻薬の売人への死刑判決。愛国心のある教師を認定する資格認定機関の創設といった、いわゆる保守層にとって注目を集めるアイデアが多く含まれていた。
ただし大統領選公約として未完成で、例えばヘルスケアなど民主党の目玉政策に対抗する部門については置き去りのままだったのである。
次に発表されたトランプ氏の公約に近いものが、バンス氏をうちうちに推薦したとされる「プロジェクト2025」だ。これは、「2025大統領移行プロジェクト」として知られていて、保守系シンクタンクのヘリテージ財団が2023年4月に発表した。
この中に繰り返し記載されているのが国境の安全保障、LGBT権利の抑制、エネルギー支配などである。
そして2024年7月、ミルウォーキーで開催された共和党全国大会に先立ち「アジェンダ47」のウエブページは、共和党全国委員会(RNC)の公式ページとして作り変えられた。
トランプ氏はこれまでの「アジェンダ47」を「アメリカを再び偉大にするための20の核心的公約」に集約。その公約はそのまま共和党全国委員会で採用されることになった。「Make America Great Again」──RNCは「アメリカを再び偉大にする」という、トランプ氏の掲げるスローガンをタイトルにして、共和党の公約として承認したのである。
「アメリカ・ファースト:常識への回帰」と題した公約の前文は、アメリカの歴史と精神を称え、現在の深刻な問題に対処するために再びその精神を呼び起こす必要があると主張する。
過去の偉業を振り返りながら、現在の政治家たちが国を衰退させたと非難し、トランプ前大統領のリーダーシップを称賛。そして、国境の安全、経済の復活、犯罪の撲滅などを通じて、アメリカを再び偉大にすることを目指すとした。
トランプ氏のアジア政策次第では、日本経済の復活チャンスがやってくる!
アメリカが台湾独立を認めた場合、日本は台湾に対してどうするのか──これが一つの大きなポイントになる。
同時に、中国が台湾に対する圧力を強めるとすれば、軍事オプションまで行く可能性は充分にある。そのために台湾を国家承認する時には、同時に、即時に、その場で安全保障条約を締結する。安保と一体化した形でやっていかなければ国家承認は難しい。
アメリカの同盟国であり台湾と一衣帯水の関係である日本は当然のことながら、この米台の同盟関係に無関係ではいられない。何らかの覚悟を決めなければならなくなるだろう。
中国にとって台湾は太平洋進出の出入り口という位置づけだ。台湾が強い壁になってしまえば、より弱いところを出入り口にすることになる。それゆえ台湾とセットにして考えなければならないのがフィリピンの存在だ。
大東亜戦争とは似て非なる、日米同盟による「大東亜共栄圏」構築という巨大なテーマが日本に突きつけられる可能性を考えなければならない時代になっている。
そのテーマを日本政界で扱えるのは誰か──旧派閥で自民党と両岸問題との関係を考えると旧清和会(安倍派)、麻生派が親台湾。旧宏池会、旧二階派、旧茂木派が親中派ということになる。
岸田文雄政権は宏池会の政権だったが対米政権とのパイプは民主党にある。共和党パイプを持っているのは麻生派、安倍派だ。甘利明氏に経済安全保障を任された小林鷹之氏、あるいは安倍元総理に期待され経済安保を任された高市早苗氏も共和党パイプを持っていることになる。
トランプ時代の到来は日本が「国連戦勝国体制」から脱出するチャンスの時代でもある。考えていただきたいのが高度経済成長期からバブルまで日本が繁栄していた時、中国は日本にとって存在していなかった。中国の台頭によって日本経済は疲弊し、長いデフレの中で苦しんできたのである。
トランプ政権が中国を封鎖するということは、日本が再び台頭するチャンスである。アジアを牽引する西側のリーダー国となれれば自ずと経済は発展するのだ。有権者の皆さんの正しい選択が日本復活の鍵であると言えるだろう。
【BOOK】
『トランプ勝利なら再編する新世界の正体』渡邊哲也・著 1980円(税込)/徳間書店
【著者】 渡邉哲也 わたなべ・てつや
作家・経済評論家。1969年生まれ。日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。大手掲示板での欧米経済、韓国経済などの評論が話題となり、2009年、『本当にヤバイ! 欧州経済』(彩図社)を出版、欧州危機を警告し大反響を呼んだ。内外の経済・政治情勢のリサーチや分析に定評があり、さまざまな政策立案の支援から、雑誌の企画・監修まで幅広く活動を行っている。 著書に『これからすごいことになる日本経済』
『パナマ文書』『「韓国大破滅」入門』『「新型コロナ恐慌」後の世界』『情弱すら騙せなくなったメディアの沈没』『2030年「 シン・世界」大全』『世界インフレを超えて 史上最強となる日本経済』(以上、徳間書店)などのベストセラーの他、『「お金」と「経済」の法則は歴史から学べ!』(PHP研究所)、『今だからこそ、知りたい「仮想通貨」の真実』(ワック)、『GAFA vs. 中国』(ビジネス社)な
ど多数。