仲野太賀「虎に翼」11年ぶり朝ドラで未体験の感覚「思い出すだけで辛い」印象深いシーンとは<インタビュー> | NewsCafe

仲野太賀「虎に翼」11年ぶり朝ドラで未体験の感覚「思い出すだけで辛い」印象深いシーンとは<インタビュー>

芸能 モデルプレス/ent/wide/show3
伊藤沙莉、仲野太賀「虎に翼」(C)NHK
【モデルプレス=2024/05/24】2024年度前期連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合・毎週月~土あさ8時~ほか)に出演する俳優の仲野太賀(なかの・たいが/31)は、11年ぶりの朝ドラで心優しき青年・佐田優三(さだ・ゆうぞう)役を熱演。そんな仲野が「思い出すだけで辛い」と明かした印象的なシーンとは?インタビューでは、役作りでの心がけや、久々の朝ドラ現場で感じたことなどたっぷりと語ってもらった。<前編>

【写真】「虎に翼」仲野太賀、伊藤沙莉と密着

◆伊藤沙莉が主人公の朝ドラ「虎に翼」

110作目の朝ドラとなる同作のモデルは日本初の女性弁護士、のちに裁判官となる三淵嘉子(みぶち・よしこ)さん。激動の時代を生きた1人の女性法曹とその仲間たちの波乱万丈の物語として大胆に再構成し、登場人物名や団体名などは一部改称して、フィクションとして描いていく。主演の伊藤沙莉は主人公・佐田(猪爪)寅子(さだ・いのつめ・ともこ)を演じ、脚本を吉田恵里香氏が務める。

仲野が演じるのは、猪爪家に下宿している書生・優三。早くに両親を亡くし、弁護士だった父に憧れて大学に通うが、高等試験(現在の司法試験)にはなかなか合格できない。昼は銀行で働き、夜は大学で勉学に励み、寅子の夫となる役どころだ。

◆仲野太賀、優三役で心がけていること

― まず、オファーを受けた時のお気持ちからお聞かせください。

仲野:日本初の女性弁護士、そして裁判官になる人物の話ということで、女性が社会進出していく現代に通ずるテーマを朝ドラで描くのは素敵だなと思い、出演がとても楽しみでした。

― 優三役で出演が発表された際に、キャラクターについて「おどおどしていて何だか頼りない。けど、とても優しく、芯のある人だと直ぐにわかる」と説明されていましたが、改めてどのような人物か教えてください。

仲野:優三は早くに両親を亡くし身寄りのない天涯孤独の状況でしたが、寅ちゃんの父・直言さんに声をかけてもらい、寅ちゃんの実家で書生として住まわせてもらいます。直言さんのお仕事を手伝いながら、自分自身も法律の道を目指していくといったキャラクターです。

― 演じる上でどんなところを心がけていましたか?

仲野:優三が持つ温かい空気感を大事に演じました。あとは、寅ちゃんがまっすぐに物事に向き合っていくある意味猛進な人なので、それと対照的に頼りない一面もありつつ太い芯のある人物として表現できたらいいなと思っていました。

― 優三とご自身が共通している点はいかがですか?

仲野:やりたいことがあって、その夢に向かってひたむきな部分は近いのかなと思います。ただ、優三は柔和なキャラクターですが、僕はどちらかというと騒がしい性格なので、そういう部分では違うかなと思います。

◆仲野太賀「思い出すだけで辛いぐらい」印象的なシーン語る

― 優三は出征するシーンもありますが、戦争のあった時代を演じたお気持ちをお聞かせください。

仲野:出征のシーンが近づくにつれて、台本を読み進めていくのがとても苦しかったです。家族のいなかった優三が寅ちゃんと結ばれて、愛する娘もできて、ようやく本当の家族を手にすることができた。法律の道には行けなかったけど、優三が心の底から欲しかったものは家族だったと思うので、そんな中で戦況がどんどん悪化していくことは辛かったです。「なんで戦争に自分の幸せを奪われなければいけないんだ」という怒りはあったと思います。でも、優三の主語は常に寅ちゃんで。「戦争に行くのは仕方がないから、せめて寅ちゃんを悲しませないように」という思いだったんじゃないかと考えながら演じました。

― これまでの1番印象的なシーンがあれば教えてください。

仲野:出征前の最後のデートシーンはすごく印象深いです。いつも2人で行く河原で、寅ちゃんが「私のせいで辛い思いをしてごめん」と土下座して、優三が「寅ちゃんができることは謝ることじゃないよ」と声をかけるシーンですが、それまで寅ちゃんが社会的な正しさに自身の判断基準を置いていたことで、とても苦しんでいたんです。自分が弁護した相手が弁護すべきだったのかとか、優三に社会的地位のために結婚してもらうことが正しかったのかなど、そういうことに対してとても厳しく自分を責め立てるのですが、優三としては寅ちゃんが誰かのために頑張る人だからこそ、自分の人生を大事にしてほしいと願っていたと思います。「寅ちゃんの頑張っている姿が好きだけど、頑張りすぎないで」「寅ちゃんのできることをやってほしい」という、優三の優しさが伝わればと心を込めたシーンです。

― 優三の優しさが垣間見えて、視聴者も“優三さんロス”になりそうなシーンですね。

仲野:そのシーンは思い出すだけで辛いです。撮影の後、2~3日はこれまであまりなかったような不思議な感覚で、優三を思うと悲しすぎて台本も読み進められなくて。素晴らしい脚本と巡り合えて本当によかったなと思うし、そういう思いで役に臨めたという大事なシーンになりました。

◆仲野太賀、朝ドラならではの“手応え”語る

― 朝ドラで1人の人生を長期間演じることへの手応えはいかかですか?

仲野:1人の役を時代の変化も感じながら長い期間演じるのは、本当に朝ドラならではで貴重な経験させてもらえていると感じます。時系列で撮影ができるわけではないですが、自分の演技だけでなく、ヘアメイクや衣装でその時代の年齢を表現するのを助けてもらっているので、そこまで気負わずにできています。僕が優三を演じることでキャストやスタッフさんの足を引っ張りたくないという気持ちはありつつも、この作品に参加できて、そして優三に出会えて本当によかったと思っているので、観ている人の心に届いていくお芝居ができたらと思っています。

― 1つの役を長く演じる上で、何か新たに気付いたことがあれば教えてください。

仲野:見た目よりも精神的な部分の方が、観ている方に伝わるのかなと思いました。また、作品によっては同じ役を年代ごとに違う俳優が演じることもありますが、今回は僕1人でやり遂げられる喜びをすごく感じています。

― 優三は天涯孤独で、家族ができて、その後戦争に行くという人生を送りますが、仲野さんはこれまでも戦争に行く人物を何回か演じられています。そういった役と今回重なる部分はありましたか?

仲野:これまでいろんな作品で戦争に行かせてもらっているので、経験としては積み上がっているものはあるかなと。衣装を着て「軍服落ち着くな…」みたいな気持ちもあるので(笑)、その経験を活かせられればと思っています。

◆仲野太賀、11年ぶり朝ドラ出演で成長実感したこと

― 『あまちゃん』(2013年)以来の11年ぶりの朝ドラ出演となりますが、久々に朝ドラの現場に入った印象やご自身の成長を感じた部分をお聞かせください。

仲野:前回約11年前に朝ドラに出演させてもらった時はほんの少しのシーンだったので、今回初めてしっかりと参加できています。当時の僕は右も左もわからずガムシャラにやっていたと思うのですが、それから約10年、色々な現場に参加させてもらって、あの頃よりは心は熱く頭は冷静に、現場と向き合えているのかなとは思います。

― 朝ドラの現場において、“朝ドラらしさ”を実感したものはありますか?

仲野:1週間に撮影しなければいけない量がすごく多いのは、これぞ朝ドラの大変さだなと思っていますが、撮影期間が長いので役にじっくりと向き合えるなと。色々なゲストの方が出たり入ったりしながら、自分の中で役が育っていく感覚は朝ドラならではで、貴重な経験をさせてもらっています。そして、撮影現場の空気が非常によくて、1年以上一緒に作品を作っていく仲間として他の現場にはない温かさがあるなと思いました。例えば1週間の撮影の最後のカットを撮り終えた後に、皆で「お疲れ」と拍手したり、スタッフさんからも沙莉ちゃんを絶対に支えていくんだという懐の深さも感じます。沙莉ちゃんを中心にこのドラマで、このチームで、朝を盛り上げていくんだというような、とてもいい空気が流れているのを感じました。

◆仲野太賀が悲しみを乗り越えた方法

― 今回演じる優三は「高等試験にはなかなか合格できない」という挫折や悲しみを経験する人物となりますが、太賀さんご自身がこれまでのキャリアの中でなにか悲しみや挫折を感じた経験があれば教えてください。

仲野:10代の頃からこの仕事をしているので、数えきれないぐらいオーディションを受けて、たくさん落ちました。受かったものでもすごく小さな役だったり、セリフがなかったり、チャンスをもらえたのに掴めない時間がとても長かったです。ただ、演じることへの情熱が絶えることはなかったので、しがみつくようにいろんな現場で自分の可能性を試させてもらっていました。

― どのようにその期間を乗り越えたのでしょうか?

仲野:1番の心の支えになっていたのは、宮藤官九郎さんや石井裕也さん、岩松了さんなど尊敬する大好きな方々に「面白いよ」と言ってもらえたことです。皆の注目を集めることは難しいけど、自分の好きな人からだけでも「お前は大丈夫だ」と言ってもらえていた時間は、すごく支えになっていましたね。うだつの上がらなかった10代、20代前半は、言葉にしなくても負のオーラが出ていて、相談せずとも「こいつ悩んでいるんだ」と多分一目瞭然だったと思います(笑)。

◆仲野太賀、30代の展望は?

― 2月7日に31歳の誕生日を迎えられましたが、30代の展望がありましたらお聞きしたいです。

仲野:今は恵まれた環境でお芝居をさせてもらっていると思うので、いい40代を迎えるためにも、30代にできることをやれる限りやって、成熟していけたらいいなと思っています。

― 30代になってから役者業への思いの変化というのはありましたか?

仲野:もっともっといい芝居をしたい気持ちが高まる一方で、そのために今の自分には何が足りてなくて、何が必要なのかと日々ぼんやり考えています。ですが、これをすれば芝居が上手くなるということはないので、やっていくしかないのかなと思います…いい俳優になりたいです!

◆仲野太賀「虎に翼」視聴者にメッセージ

― 放送を楽しみにしている視聴者に向けてメッセージをお願いします。

仲野:この物語は女性が社会に出て活躍することがこんなにも難しい時代だったんだと思う反面、そういった女性たちの言葉にできないため息のような言葉をセリフに落とし込んでいるので痛快さもあります。法律の世界を目指す女性の物語というとすごく堅く聞こえますが、寅ちゃんをはじめとした登場人物のキャラクターが豊かで、ユーモアに溢れた物語になっているので期待していてください。色々な思いを背負った寅ちゃんの生き様が観る人の胸に響くと思いますし、一生懸命頑張っている寅ちゃんの姿を見届けてもらえたら嬉しいです。

★インタビュー後編では、再共演で2度目の夫婦役を演じた伊藤への信頼感などを語っている。(modelpress編集部)

◆仲野太賀(なかの・たいが)プロフィール

1993年2月7日生まれ、東京都出身。2006年に俳優デビュー。2016年、宮藤官九郎脚本の社会ドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ)で、ゆとりモンスターを演じて一躍脚光を浴び、その後、芸名を「太賀」から「仲野太賀」に改めた。近年の主な出演作は、『今日から俺は!!』(2018年/日本テレビ系、映画・2020年公開)、『コントが始まる』(2021年/日本テレビ系)、『拾われた男』(2022年/NHK・ディズニープラス)、『初恋の悪魔』(2022年/日本テレビ系)、『ジャパニーズスタイル』(2022年/テレビ朝日系)、『季節のない街』(2023年/ディズニープラス・テレビ東京)など、さまざまな役柄を演じ分ける。2024年10月25日から公演のM&Oplaysプロデュース舞台『峠の我が家』(作・演出 岩松了)では主演を務める。(東京公演後、地方公演あり)

【Not Sponsored 記事】
《モデルプレス》

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