競泳・韓国代表のパク・テファン。北京五輪400m自由形金メダリストで、今回も優勝候補だった。
400m予選3組に出場しトップ記録を出したが、スタート時に不正があったとして失格となった。大韓水泳連盟が国際水泳連盟に抗議し、主張が認められ決勝に進出。結果は2位だった。連盟の事務総長は「ヒューマンエラーだった」と語ったが詳細は述べなかった。失格判定をした審判はカナダ人であり、パク・テファンが失格すればカナダ選手が決勝に進出することになったとして、韓国メディアは関連性を指摘している。
スポーツマンシップの発祥の国、英国で開催された五輪。それをないがしろにする不思議な判定が起きている。際たるものは3日目男子柔道66kg級の準々決勝だ。韓国チョ・ジュンホと海老沼匡が対戦し、一度は決まった旗判定が覆るという異例の事態が発生した。チョは試合後、「何かを盗まれたような感じがした」と不満を漏らす。もっとも銅メダル獲得後は「残りの試合に最善を尽くそうと心に決め、自分なりに良い結果を出せたと思う」と語った。
一方大韓柔道事務局長は、「判定が覆るのを初めて見た。3人の審判が下した判定を映像確認することは審判の権限を侵害するものだ」と主張。韓国メディアは「柔道宗主国、日本の見えない力が作用したと見なければならない釈然としない判定だった。日本の態度は昨日今日のことではない。ホームの利点と同じアドバンテージが存在した。歳月が 流れてもその力は色あせなかった」と報道している。
国際柔道連盟(IJF)を牛耳るのはハンガリー人のビゼール会長。07年前任のパク・ヨンサン会長の選挙疑惑を執拗に追及し会長に収まる。ビゼールはまずアジア柔道連盟会長職を日本から取り上げる。アテネ五輪から始まった「5分勝負。延長はゴールデンスコア制」は、山下泰裕元IJF教育コーチィング担当理事の尽力による。その山下理事に対抗馬を立てて追放。一気に商業化に走る。09年より世界選手権、グランプリ大会を開催するなど、プロ化を推進した。日本のスポンサー対策で上村春樹全柔連専務理事を議決権の無い指名理事に任命。プロ化は浸透し、怖いもの無しのビゼール体制となり、日本は宗主国どころではなくなった。しかし講道館を無視できないのが柔道。さらに10年1月タックルなどの足取り技や抱きつく行為が排除されたルール改正。その結果10年の世界選手権では日本は16種目中10種目で優勝。強すぎる日本は目の上のタンコブなのだ。
今回審判員を審判するジュリーが導入された。当然ジュリーはトップと繋がり強い権限を持つが、その権限がどこまで及ぶのか明確でない。今回の混乱はそこに起因している。特に日本人の試合では不思議なことが起きている。日本選手の金メダル候補は、戦いの中で技ありが取り消されたり有効に格下げされるケースが見られた。海老沼も判定が二転三転し準決勝では集中できず敗れた。そういう状況でも勝ちきれない選手が悪いとの意見もあろうが、日本に金をとらせず、並みの柔道国にするという意図が見え隠れする。そしてビゼールの思惑通りことは進む。そこに松本の金。柔道本家の存在を示す貴重なものとなった。勿論1個では不十分。
残る試合で金を重ねビゼールの鼻を明かして欲しい。
そう願うのは私だけだろうか。
[ビハインド・ザ・ゲーム/スポーツライター・鳴門怜央]
《NewsCafeコラム》
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