いい笑顔を見た。
朝の通勤途中のことである。
若いカップルが二人乗りしたバイクが信号待ちをしていた。
彼が運転、彼女が後ろのタンデムシートに座っている。彼の背中に彼女はヘルメットを被った頭をピッタリとくっつけ、抱きついている。そのヘルメットの奥の彼女の表情が本当に満面の笑顔だったのだ。
もちろん彼は前を向いて運転しているので、彼女の顔は見えていない。彼女もそれはわかっているはずだ。しかし彼女は本当に顔全体で笑っていた。
その笑顔は誰かに見せるための表情ではなく、幸せで、楽しくて、心の底からあふれ出た表情なのだ。ヘルメット越しにでも充分にわかった。
本当に素晴らしい笑顔だった。
彼がその表情を見たらな、さらに彼女を好きになることは間違いない。その笑顔を見せて、彼に教えてあげたい気持ちになった。
君の目に映らないところでも、君の恋人は君と一緒にいる喜びをこんなにも感じているんだよ、と。
大人になると笑顔を道具として使うことが多くなる。仕事の道具、社交の道具、そして恋愛の道具にと、みんな便利に使っている。
道具どころか、口角をクっと上げた笑顔を恋愛の武器にしている女性もいる。
中には口角を上げ過ぎて般若っぽい表情になり、「そこまでいくと笑顔も逆に怖いよ…」と、思わせる女性もいる。
私も取引先や取材相手、上司に愛想笑をすることは、しょっちゅうある。愛想笑だとわかっていても、人の笑顔をみると安心する。笑顔は礼儀の一つなのだ。それを悪いことだとは思わない。
しかし、心からの笑顔は本当に素晴らしい。作った笑顔では到底敵わない力がある。
ちょっと憎からず思っている人の心からの笑顔を見たら好きになっちゃうよ。男でも女でも。心から笑顔はあらゆる恋愛テクニックよりも、テクニックでないだけに有効なのだ。
バイクに乗ったカップルよ。君たちは本当に素晴らしい恋愛をしているのだろう。心から羨ましい。美しき恋人たちに幸あれ。
[編集後記~Newsスナック/NewsCafe編集長 長江勝尚]
《NewsCafeコラム》
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