【中学受験】塾での劣等感も成長の糧――小学校受験とは異なる「複雑さ」と「本人の意志」 | NewsCafe

【中学受験】塾での劣等感も成長の糧――小学校受験とは異なる「複雑さ」と「本人の意志」

女性 OTONA_SALONE/LIFESTYLE
【中学受験】塾での劣等感も成長の糧――小学校受験とは異なる「複雑さ」と「本人の意志」

首都圏では、いまや2月の一大イベントともいえる中学受験。首都圏模試センターによると、2026年度入試の私立・国立中学受験者数は52,050人(前年比99.5%)にのぼり、過去40年で4番目の多さとなりました。

都内の大学の広報部で広報・マーケティング業務に携わる美桜さん(仮名・49歳)の三男・C君(10)は、長男・A君(17)が小学校から高校まで通う自由な校風のG学院(仮名)を目指し、大手中学受験塾に通っています。しかし最近は挑戦校として、別の学校にも興味がわいてきたそうです。

C君が小学校受験をしなかった背景には、次男・B君(12)の療育がありました。G学院は夫・和さん(仮名・48)の母校で、難関校ではありませんが、中学受験では倍率がやや高めです。長男の小学校受験を超えて、次男の療育、三男の中学受験に伴走中の美桜さんは「小学校受験と中学受験は、本当に別物でした」と振り返ります。

【どうする?小学校受験と中学校受験】#15

▶東京の中学受験は生真面目?

次男の療育に奔走して三男の小学校受験は見送る

画像:首都圏模試センター提供

幼稚園年長だった次男・B君にASD(自閉スペクトラム症)と軽度知的障害があることが分かり、療育に奔走しているうちに、三男・C君の小学校受験のタイミングを逃してしまったという美桜さん。その結果、C君は公立の小学校に進み、中学受験に挑戦することになります。

また、長男・A君が通うG学院では、小学校受験のための幼児教室通いを推奨しておらず、長男は茶道や書道、水泳など好きな習い事と知育教材を楽しみながら、祖父母の畑で遊び、のびのびと小学校受験を乗り越えたそうです。

「三男も、次男の療育があったので十分に手をかけられなかったとは思いますが、小学校受験をしていたら、案外あっさり合格していた可能性もあると思っています。もともと小学校受験ではペーパーテストのない学校なので、普段の習い事程度でも、受けるだけ受けてみればよかったのかもしれません。でも、受けさせなかったのは、頭の何処かで、次男が公立の支援学級へ通うことになったので、『兄弟で同じ学校に通ってくれるかな』と考えてしまったのかもしれません」

ちなみに、3兄弟はとても仲が良いそうです。

「次男は独特のこだわりは強いのですが、基本的にはいつもニコニコしていて朗らかな性格なので、兄からも弟からも、その友達からも程よい距離感でかわいがられています。むしろ三男は『僕がやってあげる』と世話を焼きすぎるので、『お兄ちゃんが自分でできるように頑張らないといけないから、見守っていてあげようね』と言い聞かせています」

そんな微笑ましい3兄弟ですが、美桜さんが今、壁にぶつかっているのは「東京の中学受験勢の生真面目さ」だといいます。

▶中学受験に向けた塾の宿題が多くて驚愕

自由な校風の私立を希望しているのに「入る塾を間違えたかな」

「さすがというか、大手中学受験塾は小学生のツボを押さえているので、塾自体は楽しいみたいです。しかも3歳から仲良しの3人組で通っているので、『息抜きの買い食い』も含めて毎回わいわい過ごしています。

でも、東京の中学受験塾って宿題の量が多すぎませんか? 5年生の夏休みもびっしり宿題があって、『千葉の実家に帰って自然の中でセミ取りでもさせたい』と思う我が家としては、『もう中学校も公立でいいんじゃないか』と思ってしまうこともあります」

成績でクラスが決まるシステムにも、不安を感じているそうです。

「難関校を目指すお子さんには合理的な仕組みだと思います。でも我が家は、自由な校風の小中高一貫校で、中学からでもマイペースに育ってくれたらいいという思いで私立を目指しています。うちの子のレベルでは入る塾を間違えたかな、と頭を抱えたこともありました。そんな親の思いをよそに、本人は友達と同じ塾がいいと聞きません」

C君は魚と虫と動物が大好きで理科が得意なので、特別偏差値が高いわけではないものの、勉強は嫌いではないそう。友人と自習室を利用し、塾の模試で偏差値が50に届くようになりました。

「実は3人組のうち1人は、民間療育教室で一緒だったお子さんで、ギフテッドタイプのASD特性があります。その子は、別の塾なら学費免除になるくらい上位クラスの実力です。もう1人も真ん中くらいのクラスですが、算数が得意で、5歳から小学2年生まではイギリスで暮らしていた英語ができる子です。

最近では三男も友達の影響で、『にいにの学校もいいけど、あっちの校舎もかっこいいよね』と偏差値の高い伝統校に興味を持ち始めました。そうなると、親の私たちも本気で伴走しなければと気を引き締めています」

小学校受験は親が敷いたレールで方向転換しやすかったけれど中学受験は……

偏差値が教えた「人と自分を比べる苦しさ」と親の葛藤

5年生になり、「他人と自分を比べる」という意識が芽生えたC君の姿に、美桜さん夫妻は胸を痛めたことがあったそうです。

「3人組の中で、うちの子が一番偏差値が低いんです。決して勉強が嫌いなわけでも苦手なわけでもありません。それなのに、1人は天才タイプ、もう1人は算数も英語も得意。偏差値や順位が見えることで、自信をなくしてしまいました」

ある日、学校の課題で「特技・趣味」を書く欄があったそうです。

「三男が『俺の特技って何?』と聞いてきたので、『英会話続けてるから、英語のスピーチは?』と言うと『あいつのほうが上』。『水泳は?』と言っても『それもあいつが上』。私が『世界一じゃなきゃ特技って言えないの?』と聞くと、『分かってるけど恥ずかしいんだよ。どうせ全部、俺が一番下なんだよ』と怒鳴り返されてしまいました」

美桜さんは転塾も勧めましたが、「先生も友達も好きだから」と、C君は首を縦に振らなかったそうです。

「今の第一志望は『気に入った伝統校』、第二志望は『お兄ちゃんの学校』です。母親としては、偏差値で友達に劣等感を抱くくらいなら、塾を辞めて兄の学校を受けて、だめなら公立でもいいと思っています。でも、幼児の頃なら親が塾を選べましたが、今は本人の意思もあるので、それも難しいですね」

美桜さんは、ざっくりとした意味では親が敷いたレールの上を歩きながらも、自力で困難やストレスから立ち直る力「レジリエンス」を育もうとしている息子を、葛藤しながら見守っています。

「もちろん、この心の劣等感も本人にとって『成長の糧』になると信じています。でも今の私が言えるのは、『難関校ではない小学校受験に限って言えば、中学受験より楽で、親がコントロールしやすかった』ということです。今振り返ると、その気になれば、敷いたレールをヒョイと方向転換できるプラレールみたいにすら思えます。でも今は、本人の思いがしっかり乗っかっているのでレールが重く、たとえ親でも強引に動かすことはできません」

本作は取材に基づいたストーリーですが、プライバシーの観点から、個人が特定されないよう随時事実内容に脚色を加えています。

>>この記事の前編:長男は小学校受験、三男は中学受験の理由は次男の療育。男の子3人ママ「小学校受験と中学受験は別物でした」


《OTONA SALONE》

特集

page top