「男を産まなかったお前が悪い」娘を傷つけ、妻を支配するモラハラ夫。経済的DVの裏にある“家族を支配する心理”とは | NewsCafe

「男を産まなかったお前が悪い」娘を傷つけ、妻を支配するモラハラ夫。経済的DVの裏にある“家族を支配する心理”とは

女性 OTONA_SALONE/LIFESTYLE
「男を産まなかったお前が悪い」娘を傷つけ、妻を支配するモラハラ夫。経済的DVの裏にある“家族を支配する心理”とは

モラハラ・夫婦問題カウンセラーの麻野祐香です。

夫からの人格否定や、経済的DVに悩まされる方は多くいると思います。今回の主人公であるFさんも、夫からのモラハラ行為に悩まされたひとりでした。我慢の限界を超えて夫に離婚を提案しましたが、「絶対に別れない」と言われてしまい、そのあとは外出や友人との関係まで制限されるようになりました。

「ここにいたら子どもも自分も壊れてしまう」と思ったFさんが、「住民票支援措置」を利用しながら新しい生活を始めるまでの経緯をお話しします。

※個人が特定されないよう設定を変えてあります

※写真はイメージです

結婚のきっかけと夫の変化

Fさんが夫と結婚したのは、結婚前に夫が周囲に見せていた「誠実で落ち着いた人柄」に安心感を覚えたからでした。さらに夫は大手企業に勤め、経済的にも安定していて、将来に不安はないと感じられました。

しかし、結婚後に見せた夫の素顔は全く違いました。最初の頃はFさんのやることに否定をすることが多かったのですが、次第にエスカレート。「お前は何をしてもダメだ」と言い切るようになり、Fさんは自分を否定され続けることで精神的に追い込まれていきました。

夫は、普段は娘を可愛がる素振りを見せながらも、思い通りにならないと態度が一変するのです。

「俺は子供なんて欲しくなかった」と冷たく言い放ち、娘を無視。「子どもはお前が欲しいと言ったから作ったんだ。 自分は望んでいなかったのだから、子育ての責任は全てお前にある」そう言ってFさんを追い詰めていきました。

ある日、公園で父親と息子がキャッチボールをしているのを見かけた夫は

「やっぱり男の子が欲しかった」「男の子を産まなかったお前のせいでうちの姓が絶える」

といきなりFさんを怒鳴りつけてきました。「 子供の性別まで、私のせいなの?」唖然としながらも、夫の言葉に反論することはできませんでした。

そして、小学生になった娘に「お父さんは女の子は欲しくなかったんだ」と言うようになりました。Fさんは娘が傷つくことを心配し「そんなことないよ」とすぐに訂正したのですが「俺の言っていることに口出すな」と怒鳴りつけられてしまったといいます。Fさんは、娘と2人でただ沈黙を通すしかありません。

「娘は、無表情で固まっていました。こんな父親といると娘が不幸になる……そのとき、そう確信しました」

とFさんは当時を思い出して語ります。

「おまえも稼げ」と言われたから働いたのに、文句を言われて

夫は「妻も稼ぐべき」と言うので、Fさんはパートで働き始めました。パートで疲れて夕食の準備が遅れると「家事もできないくせに、外で働いている場合か!」と責め立てます。さらに、体調を崩してパートを休むと「お前は中途半端な女だな。パートもできないのか」と言われることもありました。

パートをしても家事負担はそのまま、体を壊してパートを休めば「稼ぎもないくせに」と罵倒される……。夫の言葉に反論する気もなくなり、いつの間にか「私が悪いのかもしれない」と思い込むようになっていったのです。

ある日、友人に「働いても責められて、辞めても責められる。どうすればいいのか分からない」と打ち明けたとき、友人は「旦那さんがおかしい」と即座に言いました。でもFさんは、すでにその言葉も受け取れないほど、夫に心を支配されていたのです。


生活費を渡すのを嫌がる夫、陰湿な経済DV

家計は結婚当初から夫の管理でした。給与口座もクレジットカードも夫名義、Fさんに渡されるのは「生活費」と書かれた封筒だけです。
その金額は食費と日用品だけで精一杯で、少しでも足りないと「やりくりが下手だ」と叱られました。

レシートはすべてノートに貼り付けて、毎日夫に提出する決まりになっていました。月末の集計のときに夫はそれにすべて目を通し「今月は先月より2千円も支出が多い!」怒りをあらわにした顔で詰め寄ってくるのです。いくら節約しても、食品の値上がりがあり出費が多くなることは考慮してくれませんでした。

一方で、夫は自分の楽しみには出費を惜しみません。付き合いだと言っては飲食店で豪遊、ゴルフの道具など好きに使っていたそうです。夫は「俺の金で何をしようと自由だ」と切り捨て、話はそれ以上進みません。

監視を超えた支配の始まり

やがて管理は「監視」から「締め上げ」に変わりました。

Fさんは、一応「突然の出費」のために夫からキャッシュカードを渡されていました。引き出した後は、「これはどうして、何のために引き出したのか」と細かく説明するのがとても手間でしたが、それでも現金が引き出せることには、安心感がありました。
しかしある日、子供の部活での支払いのため、そのキャッシュカードで現金を下ろそうとしたのですが、残高ゼロと表示されたのです。

「どうして残高がないの」と夫に聞くと「お前が無駄使いするから、この口座は空にしておいた。必要なら前日までに申請しろ」と怒鳴るのです。「ときには急に現金が必要になることもあるのよ」と説明しても「用途の詳細と理由は、前日までに送れ!」の一点張りで、聞き入れてもらえませんでした。

さらに、生活費の渡し方も突然変えられました。現金ではなく「電子マネー」で1ヶ月分として5万円がチャージされます。使途は履歴で丸見えなので、いつも夫に監視されているようです。

「子どものために必要なものは買えないのに、どうして自分の遊びにはこんなに使えるの?」と訴えても、返ってくるのは「足りないなら自分で稼げ」という言葉だけ。

そう言っておきながら、Fさんがパートのシフトを増やせば「家事も子どもも放ったらかしだ」と避難し、辞めれば「無職女!俺の金だけが目当てなんだな!」と罵倒してくるのです。収入は全て夫のもの、妻と娘に使うお金は無駄なもの、夫はそう思っているようです。

Fさんは、生活費を制限され、必要な出費まで「無駄だ」と責められる日々に疲れ果てていました。

離婚を決意するも、夫に拒否されて…

経済的支配と監視の中で心身をすり減らし続けたFさんは、ついに「このままでは子どもも、自分の心も守ることができない」と悟りました。

勇気を振り絞って「別れたい」と伝えましたが、夫は鼻で笑い「お前が俺と別れて暮らせるわけがない」「お前の為に絶対に別れない」と言い張ったのです。

「”お前の為に” 別れない」その言葉は妻を思いやる優しさのようにも聞こえますが、実は妻を「支配から抜け出させたくない」、「自分のものにしておきたい」と言う気持ちの表れなのです。

本編では、Fさんを経済的に支配し、人格を否定し続けた夫との結婚生活、そして「絶対に別れない」と言われるまでをお伝えしました。

▶▶「絶対に別れない」と言い張る夫から逃げると決めた。住民票支援措置でモラハラ支配から脱出した女性の決断

では、Fさんがどのように安全を確保しながら自由な生活を手に入れたのかをお届けします。


《OTONA SALONE》

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